沖縄ビジネスに活かせる人脈を、県外の人でも作れる方法とは?

沖縄ビジネスに限らず、ビジネスでは人脈が欠かせません。

人脈があれば、それをきっかけに よい取引先を開拓したり、ビジネスを効率化する知見を得られたりすることが多いです。

しかし、殊に県外の人が沖縄ビジネスでの起業を考えており、沖縄に知り合いがいないとなると、人脈を広げることを困難に感じるはずです。

そこで本稿では、これから沖縄で起業する県外の人が、沖縄での人脈を作っていくための方法をご紹介します。

二通りの人脈づくり

これから沖縄ビジネスでの起業を考えている人の中には、

  • 沖縄出身の人
  • 沖縄出身ではないものの沖縄と何らかの縁がある人
  • 全く沖縄と縁がない人

など、様々な人がいると思います。

沖縄出身の人や、そうでなくとも沖縄と何らかの縁がある人であれば、人脈を広げていくきっかけも掴みやすいことでしょう。

問題となるのは、沖縄に全く縁がない人です。

そのような人が、沖縄ビジネスに役立つ人脈を広げていくには、起業前に人脈を作る方法と、起業後に人脈を作る方法の二通りがあります。

この二通りの方法を知っておけば、事前に人脈を作ってから起業することもできますし、起業後の人脈づくりにも悩むことが減ります。

この二通りの方法について、学んでいきましょう。

起業前に人脈を作る方法

 

起業前、沖縄観光ビジネスに全く縁がない状態で人脈を作るのは、不可能だと考える人もいると思います。

しかし、 起業の準備段階で人脈を作ることは可能です。

起業の準備段階では、入念な調査を実施する必要があります。

沖縄観光ビジネス、特にシュノーケリングやスキューバダイビング、トレッキングといった体験型ビジネスを企画・運営したいと考えているならば、複数のツアーを実際に体験し、それらのビジネスについて調査していきます。

しかし、実際にツアーを体験するだけでは、ビジネスに役立つ人脈は作りにくいです。

また、沖縄観光ビジネスの内側も見えにくいものです。

そこで、このような調査からさらに踏み込んで、実際に働きながら知識・スキルなどを学び、ビジネスの内側もしっかりと調査したうえで起業に移るのがベストです。

起業のために働くことは、知識やスキル、調査などの面でメリットがあるだけではなく、人脈づくりにも役立ちます。

例えば、働く会社の社長やスタッフとの人脈を作れるのはもちろんのこと、同業者の知り合いができたり、フリーランスのインストラクターの知り合いができたりするのです。

このような人脈を作ることによって、起業後にアドバイスを求めたり、コラボレーションしたり、取引先を容易に見つけたり、人脈を活用することで事業を軌道に乗せやすくなります。

起業準備として働くことについては、以下の記事で詳しく解説しています。

沖縄観光ビジネスで起業するなら、働きながら準備するのもアリ

起業後に人脈を広げる方法

起業前に人脈を作る方法については、上記の参考記事でもすでに解説した通りです。

本稿で学んでほしいのは、起業後に人脈を広げる方法についてです。

起業前に人脈を作っている人は、起業後にその人脈を広げていくこともできます。

しかし、そのような人脈づくりだけでは不十分です。

なぜならば、起業後に作るべき人脈は、起業前に作れる人脈と明らかに異なる要素を帯びているためです。

起業前は、まだビジネスを始めている段階ではないため、

  • ビジネスに役立つ可能性がある人脈
  • 役立ちそうにない人脈
  • もっと言えば信頼できる人脈
  • そうではない人脈

など、広く求めていくことになります。

しかし、起業後は既にビジネスが始まっているため、事業をできるだけ早く軌道に乗せること、長期的なメリットが期待できることなどを目的として、よりよい人脈を求めていくことになります。

簡単にいえば、付き合うことでお互いにメリットが期待できる、信頼できる人脈を広げていく必要があるのです。

起業前に作った人脈は玉石混淆であり、そこから派生する人脈も雑多です。

起業後に信頼できる人脈を広げるためには、それに適した方法で人脈を広げていくことを考えるべきです。

その方法とは、沖縄独自の相互扶助システムである『模合(もあい)』です。

模合とは?

模合、と聞いてもピンと来ない人は多いと思います。

これは共済のようなもので、 会に参加する人同士でお金を出し合い、会員の中でお金を必要とする人が模合から借りられる仕組みです。

模合によって目的や性質は異なり、資金使途や返済方法・返済額も違いますが、沖縄における模合のスタンダードな形は、

  • 借りるお金の使い道は基本的に何でもよく、事業の運転資金だけではなく、子供の学費や自宅の修繕費など色々な用途に使える
  • 模合で集めたお金を借りた人は、その後一年間にわたって、一定額を毎月分割で返済していく。返済額には一割程度の利子をつけ、模合の資金を増やしていく
  • 模合の会員は、一年単位で更新される

というものです。

模合に似た金融の仕組みは古くからあります。

例えば、江戸時代には二宮尊徳が『五常講』という制度を作っています。

五常講は、二宮尊徳が財政の建て直しを進めていた家の奉公人を中心として組織されており、会員から集めたお金を、会員の信用を保証として貸し付けました。

現在の信用組合の原型ともいえる組織であり、模合もこれと似ています。

模合は、沖縄ではかなりポピュラーな制度です。

文房具屋に行けば、模合の資金を管理するための「模合帳」が売られていることからも、そのことが良く分かります。

沖縄の人であれば、誰でも模合に入っているものですし、付き合いが多い人、とりわけ市議会議員や県議会議員などの立場であれば、10以上の模合に加入しているケースも見られます。

模合の仕組み

では、模合の具体的な仕組みを見ていきましょう。

上記の通り、模合は金融相互扶助システムです。

分かりやすく言えば、 営利を目的としておらず、助け合いを目的としていることから、共済に似ています。

強いて共済と異なる点を挙げるならば、 共済は資金使途が限定される傾向があるのに対し、模合にはそれがないことです。

また、JA共済などのように、多くの共済は大規模です。

会員同士の相互扶助を目的としつつも、会員間のつながりは希薄にならざるを得ず、会員同士が密接な関係を作った上で相互扶助が行なわれることがありません。

しかし、模合は小規模です。

信頼できる仲間にだけで模合を組織し、新規に加入する会員も信頼できる人だけにする、といった組織作りが行なわれています。

模合の具体例

模合の具体例を示すと、以下のようになります。

  • 信頼できる者が12人集まって模合を組織する
  • 毎月の積立額は1万円とする
  • 模合から借り入れた者は、借入れの翌月から1年間に渡り、毎月1万円を返済する
  • 返済元金には、毎月の積立額の1割を利息として支払う

この場合の、お金の流れは以下のようになります。

納入額
借りる順番 1ヶ月目 2ヶ月目 3ヶ月目 4ヶ月目 5ヶ月目 6ヶ月目 7ヶ月目 8ヶ月目 9ヶ月目 10ヶ月目 11ヶ月目 12ヶ月目
1番目 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
2番目 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
3番目 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
4番目 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
5番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
6番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
7番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000 11,000
8番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000 11,000
9番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000 11,000
10番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000 11,000
11番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000
12番目 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000
受取総額 120,000 121,000 122,000 123,000 124,000 125,000 126,000 127,000 128,000 129,000 130,000 131,000

1ヶ月目、12人がそれぞれ1万円ずつ払い込んで12万円が集まり、最初に借り入れる人は12万円を借りることができます。

この人は翌月以降、毎月11,000円を納入し、返済していきます。

5番目に借りる人は、その時点ですでに5ヶ月分(5万円)を積み立てています。

5ヶ月目時点で模合に集まっているお金は12万4000円であり、借入額も12万4000円です。

この人も、翌月(6ヶ月目)以降、毎月11,000円を払い込んでいきます。

このように、参加者が毎月一定額を払い込み、借りた人は毎月1割程度の上乗せをしていくことで、模合の積立額は徐々に大きくなっていきます。

利息に注目すれば、最初に借りる人は借入額12万円に対して支払総額は13万1000円となり、年利は約9%です。

銀行などの金融機関と比べると、高いと感じるかもしれません。

しかし、 少額の融資に対する金利としては、それなりに安いと言えます。

これくらいの少額であれば、消費者金融から借りようと思う人も多いでしょうが、消費者金融では50万円以下の少額融資に約18%の年利を課すのが普通です。

クレジットカードのキャッシングもほぼ同じです。したがって、模合の金利のほうが随分安いことが分かります。

模合の雰囲気

もっとも、模合では金利を意識する必要はあまりありません。

というのも、 現在の模合は少額の資金調達の場というよりも、信頼できる人同士が集まる社交場とみなされているためです。

一般的に、「信頼できる人同士が集まる社交場」といえば、その代表例は飲み会であり、飲み会がビジネスに発展することもあります。

しかし、多くの飲み会は不定期的に開かれるものであり、参加者も様々であるため、有益な飲み会にはなりにくいものです。

単に酔っ払って散財して終わりということも多いです。

ここに、模合の意義があります。

上記の通り、模合では毎月一定額を積み立てていくため、信頼関係にある者同士が、少なくとも毎月一回は定例会を開くことになります。

そして、この定例会は飲み会や交流会を兼ねていることがほとんどです。

したがって、模合が金融的な組織であるからといって、あまり堅苦しく考える必要はありません。

信頼できる仲間同士で集まり、毎月顔を合わせてお酒を飲み、交流する会だと考えればよいのです。

信頼できる者同士の集まりといえば、模合への参加はハードルが高いように感じるかもしれません。

しかし、社交場としての側面が大きいことから、実際の入会のハードルは低いです。

信頼関係にある模合の仲間が、信頼できる知り合いを模合に紹介すれば、三段論法で信頼があるものと考えるのです。

「Bは模合の仲間であり信頼できる。BはCを信頼しており、模合に紹介した。したがって、模合としてもCを信頼してよい」という考え方です。

また、模合に誘われても入会は絶対ではありません。

誘われた模合の定例会にとりあえず参加し、見学することもできます。

もちろん、見学しても入会は絶対ではなく、すぐに入会しない場合には、飲み代だけ支払えば問題ありません。

そのほか、模合は退会するのも簡単です。

模合のサイクルは一年単位ですから、入会後に「負担が重い」「何も得るものがなかった」などの理由で退会したければ、一年後の更新を以て退会することができます。

模合のメリット

模合に加入すれば、基本的に定例会への参加を義務づけられます。

入会と退会の決まりは緩いものの、定例会への参加義務は緩くないのです。

これは、全員が定例会に参加することが、模合の維持に欠かせないからです。

もし、定例会を自由参加とすれば、参加しない人から会費を集めることが難しくなります。

模合は、会員全員が一定額を毎月しっかり払ってこそ成り立つのですから、それでは模合が成り立たなくなります。

このため、会員は毎月一回、必ず顔を合わせることになります。

これによって、会員は毎月一回、必ずお酒を飲む機会ができます。

いくらお酒が好きでも、仲が良くても、模合の定例会のような強制力がなければ、毎月一回集まることは難しいものです。

当然、信頼できる者同士が毎月集まってお酒を飲むことで、思わぬビジネスチャンスに広がることもあります。

繰り返す通り、模合は信頼によって成り立っています。

ビジネスの世界は弱肉強食であり、心を許せる仲間は見つけにくいものですが、模合の仲間は別です。

模合では、信頼を裏切らないことを第一に考えるため、模合の延長で発生するビジネスも信頼に基づくものであり、プラスになることがほとんどです。

さらに、 模合は信頼できる新規会員を受け入れるため、新規加入者も信頼できる人ばかりです。

つまり、信頼できる者同士のつながりの中で、信頼できる人脈がどんどん広がっていくのです。

模合に参加すれば、毎月の定例会と、一定額の積み立ての負担がありますが、信頼できる人と交流を深められること、そこから人脈が広がっていくことを考えれば、費用対効果はかなり大きいと言えます。

県外の人こそ模合を

県外の人が沖縄で起業するのであれば、模合には是非参加したいものです。

沖縄の人は、県外の人に対して壁を作る傾向があります。

この傾向は、沖縄特有の歴史によって培われたものと考えられています。

元々は日本ではなく琉球という国であったこと、アメリカに占領された過去があることなどから、県外の人にコンプレックスを抱いていることが多いのです。

このため、県外の人が沖縄で起業し、人脈を広げたいと思っても、なかなか沖縄県民の懐に飛び込んでいけない雰囲気があります。

ましてや、起業後に知り合った人に対して、「飲みに行きましょう」などとは言いにくいでしょう。

しかし、模合に参加すれば、定例会兼飲み会への参加は義務なのですから、沖縄の人とお酒を飲む機会はおのずと得られ、信頼関係を築いていくこともできます。

参加できる模合を探すのも簡単です。

仕事などを通して知り合った人に、「模合に入っていますか?」と聞けばよいのです。

「飲みに行きませんか?」

「遊びに行きませんか?」

などと聞くよりもずっと聞きやすいでしょうし、相手も「沖縄のやり方に溶け込もうとしているな」と好印象を抱いてくれることがほとんどです。

初めのうちは、県外から移住してきた、いわば「異分子」ですから、信頼関係によって成り立つ模合にすぐ加入できないこともあるでしょう。

しかし、上記の通り見学という形で飲み会に参加することはできますし、飲み会で模合の人と仲良くなれば加入も難しくありません。

もし、飲み会に参加したものの仲良くなれず加入できなかった、あるいは模合側に受け入れる雰囲気はあったものの魅力を感じなかった、といった場合には加入しなければ良いのです。

そのような違和感がある模合に入っても、 期待した人脈が得られる可能性は低いですから、自分に合う模合を探した方が良いでしょう。

このような流れで複数の模合に参加すれば、それだけ人脈は広がりやすくなります。

もちろん、あまりに多くの模合に参加すれば負担が大きくなってしまうため、自分の体調や経済力と相談しながら、できるだけ多くの模合に参加することを心掛けるのがポイントです。

まとめ

ビジネスには人脈が欠かせませんが、沖縄と無縁の人が起業する場合、人脈作りに悩むことが多いものです。

しかし、 人脈づくりに消極的になると、地元の同業者から疎まれ、事業の成長の妨げになる可能性もあります。

県外の人でも、沖縄で人脈を作ることは可能です。

特に、本稿で紹介した模合は、沖縄独自の文化であり、積極的に関係を持つことで人脈を広げやすくなります。

ぜひ、多くの模合に顔を出し、可能であれば加入することで、人脈を広げてほしいと思います。

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