新築マンションの建設が続く沖縄県。駐車場不足に要注意

沖縄県では不動産バブルが続いており、新築マンションの建設がハイペースで進んでいます。

沖縄県の地価の高騰も、このような新築ラッシュが原因の一つとなっています。

マンション業者は、新築マンションを建設するための土地を取得するにあたり、元々駐車場だった土地にマンションを建てるケースも多くなっています。

これにより、地域の駐車場供給に影響を及ぼし、賃貸需要にも変化が起こる場合があります。

本稿では、新築マンションの増加に伴う駐車場の減少と、それによる賃貸需要の変化、投資の際に気を付けるべきことなどを解説していきます。

新築マンション増加にある懸念

近年の沖縄不動産市場はバブルの真っ最中であり、新築マンションの建設ラッシュが続いています。

2017年の貸家新築着工件数を見ても、1年間で11085戸もの貸家が新築されています。

また、沖縄県の売り物件情報を見ていても、新築分譲マンションの売り出し情報を目にすることが多いです。

新築マンションを建てるためには、当然ながら土地が必要となります。

しかし、沖縄本島の土地はそれほど広くありませんし、米軍基地やその関連施設が占める面積も小さくなく、活用できる土地が限られています。

マンション業者は、マンションを建てて売ることで収益をあげているため、土地は限られていても新築を続ける必要があります。

各業者が競って土地を買うことにより、沖縄の地価は高騰を続けています。

平成30年の公示地価における、地価上昇率のランキングを見ても、以下のように沖縄県はかなりの上昇率となっています。

公示地価 上昇率 都道府県ランキング 2018年[平成30年]
順位 都道府県 基準地価平均 坪単価平均 前年比
1位 宮城県 11万3278円/m2 37万4474円/坪 7.58%
2位 福岡県 13万9735円/m2 46万1934円/坪 7.50%
3位 京都府 21万8541円/m2 72万2450円/坪 7.01%
4位 沖縄県 10万5275円/m2 34万8017円/坪 6.74%
5位 北海道 5万6351円/m2 18万6287円/坪 6.46%
6位 東京都 102万9358円/m2 340万2839円/坪 6.21%
7位 大阪府 27万2556円/m2 90万1014円/坪 6.11%

地価の上昇は、新築マンションの建設コストにそのまま反映され、ひいては販売価格に反映されることとなります。

このため、販売価格と条件が釣り合わず、 完成後に売れ残りが出る新築マンションも徐々に出てきています。

それでも、マンション業者は建設を続けています。

新築分譲マンションを購入する人には、居住用として購入する人もいれば、投資用として購入する人もいます。

実需・仮需双方から需要があり、新築マンションの一部が賃貸市場に出回ってくることから、 新築マンションの建設ラッシュが賃貸物件の供給過剰を引き起こす懸念もあります。

したがって、沖縄不動産投資に取り組む人は、新築着工件数のデータをしっかりチェックするなどして、 賃貸物件の需給バランスに注意を払っておく必要があります。

駐車場→マンションへ

マンション業者が新築のための土地を探す際には、できるだけ需要のあるエリアで土地を探します。

つまり、限られたエリアで業者が土地の奪い合いをすることになります。

当然、新築マンションを建てたいと思っても、そのエリアでの新築が増えるにつれて、土地が簡単に手に入らないことも多くなっていきます。

そのような場合、マンション業者が建設用地として目をつけるのは、 駐車場として利用されている土地です。

駐車場は、周辺に人が住んでいる地域や、人の流れがある地域に作られています。

周辺に駐車場が足りないマンションがあれば、そのマンションの住人が月極契約で駐車場を利用しますし、周辺に駐車場の足りない観光施設などがあれば、その施設への訪問者が駐車場を利用します。

駐車場がある周辺に人がいるのですから、その駐車場の土地を取得して新築マンションを建てれば、そのエリアの人がマンションの買い手になると考えることもできます。

したがって、駐車場の土地を取得して新築マンションを建てるマンション業者が増えています。

沖縄不動産投資のデータを調べていると、賃貸物件の新築件数が多く、「狭い沖縄でよくもこんなに土地があるな」と不思議になることがあります。

その理由の一つは、上記のように駐車場をつぶして新築している賃貸物件があるからでもあります。

沖縄の駐車場需要

ここで一つ、懸念すべき点があります。

それは、駐車場をつぶして新築マンションを建てることにより、 そのエリアにおける駐車スペースが減ってしまうということです。

土地の取得に行き詰ったマンション業者が、駐車場のオーナーを説き伏せて新築マンションをどんどん建てていくと、そのエリアで本来必要とされていた駐車場がどんどん減っていき、その駐車場に車を停めていた人は困ってしまいます。

沖縄県は、鉄道路線がほとんどないため、 他の都道府県に比べて自動車の重要性がかなり高いです。

自動車を所有している人は非常に多く、単身世帯向け物件でも1戸につき1台分、家族世帯向け物件ならば1戸につき2台分以上の駐車スペースが必要とされています。

実際に、沖縄県の駐車場設置率は、以下のように全国トップとなっています。

順位 都道府県 駐車場設置率(%) 駐車場使用料(円/月) 自動車普及台数(台/世帯)
1位 沖縄県 136.6 6,187 1.275
2位 山口県 123.5 4,959 1.227
3位 鳥取県 120.0 4,583 1.444
4位 島根県 118.0 4,028 1.397
5位 大分県 115.4 7,035 1.277
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
43位 大阪府 56.6 15,536 0.660
44位 埼玉県 54.7 10,361 1.009
45位 神奈川県 52.0 15,253 0.736
46位 京都府 33.0 16,224 0.838
47位 東京都 24.5 25,506 0.461

この表から、2位の山口県を大きく引き離しての1位となっていることが分かります。

さらに、2位の山口県は土地も安ければ人口密度も低く(県庁所在地の山口市でも191人/㎢、那覇市は7967人/㎢)、駐車場の土地の確保が容易です。

1位の沖縄県と2位の山口県では、駐車場の重要性と生活に与える影響の深刻さにおいて、雲泥の差があると考えるべきです。

このように、沖縄不動産投資では、駐車場が極め重要な設備となります。

他の都道府県であれば、駐車場がなくても賃貸経営が成り立つケースが多いのに対し、 沖縄では駐車場が不足しているというだけで、物件の競争力が極端に落ちてしまうのです。

もちろん、駐車場が不足している物件でも、近所に月極駐車場があれば、あまり問題にならないこともあります。

しかし上記のように、新築マンションを建てるために駐車場がつぶされてしまうと、駐車場が不足している物件が大きな被害を受けることになります。

入居者が駐車場に困らないエリアに引っ越してしまうこともあるでしょうし、 その後の空室を埋めるのに苦労する可能性も高いです。

那覇市南部の例

駐車場不足が賃貸経営に悪影響を与える顕著な例は、那覇市南部エリアです。

那覇市南部は、那覇空港や自衛隊基地などが約半分を占めており、残る半分が住宅地その他となっています。

このエリアでは、駐車場の確保が困難となっており、駐車場不足を嫌った家族世帯が豊見城市へと移動する例が増えています。

おきぎん経済研究所の資料では、単に「駐車場不足により」と書かれており、 元々駐車場であった土地に新築マンションが建てられたため、とは明記されていません

しかし、最初から駐車場不足であったならば、このエリアに家族世帯は少なかったはずです。

そこに暮らしていた家族世帯が、最近の数年で「駐車場不足により」豊見城市へと移住しているのですから、住み始めた当初は駐車場の需要と供給のバランスが取れていたものの、徐々に駐車場が供給不足になったと考えるのが自然でしょう。

その理由はもちろん、世帯数の増加あるいは駐車場の減少であり、駐車場をつぶしての新築マンションの建築による影響もあったと考えられます。

このように、新築マンションの建築ラッシュにより、一部エリアではすでに 駐車場の需要と供給のアンバランスが起こっていることを知っておくべきです。

建設ラッシュのエリアではファミリー向け物件に注意

以上のように、新築マンションがたくさん建てられていること、それによって駐車場の減少を招いていることから、沖縄不動産投資では、この点に留意して投資する必要があります。

他のエリアに比べて、新築マンションが明らかに増加を続けているエリアでは、普段から現地調査をしたり、周辺を通りかかったりした際に、そのことを肌で感じると思います。

新築マンションの増加が続いているエリアでは、そうでないエリアよりも慎重に取り組む必要があります。

そのようなエリアでは、今後駐車場の確保が難しくなってくることが考えられます。

駐車場を2台以上確保する必要がある家族世帯向けの物件に投資するならば、 空室リスクが高まる可能性もあります。

したがって、家族世帯向け物件に投資するよりも、1戸当たり1台の駐車場でニーズを満たせる単身世帯向け物件のほうが、そのエリアでは入居付けがしやすくなります。

ケースバイケースで考える

もちろん、駐車場が不足しているエリアでありながらも、家族世帯向け物件の需要が落ちないエリアもあります。

例えば、子供のいる家族世帯にとっては、物件から学校の距離が重要となります。

人気の校区であれば、少々駐車場が不足していたとしても、そのエリアの物件にあえて居住する家族世帯も多いため、駐車場不足というデメリットを跳ね返せる可能性も十分にあります。

また、家族世帯向け物件が明らかに不足している地域も狙い目です。

那覇新都心が良い例ですが、那覇新都心エリアでは家族世帯向け物件が明らかに不足しているため、そこに住みたいと考える家族世帯は、駐車場が不足していても問題にしないこともあります。

したがって、

  • 魅力的な家族世帯向け物件の売り情報を掴んでいる
  • なおかつそのエリアで新築マンションの建設が盛んである
  • 駐車場が不足する懸念がある、あるいはすでに不足している

という場合には、 駐車場不足を補える要素があるかどうかについて、入念に調査する必要があります。

その結果、駐車場不足でも十分に勝算があると思えば、投資することもあり得るでしょう。

もちろん、新築マンションの影響で駐車場が不足している傾向が明らかであれば、そのエリアの家族世帯向け物件に積極的に投資することを避けましょう。

1戸1台で入居付けができる単身世帯向け物件だけを狙い、危なげなく投資していく戦略も良いでしょう。

投資する人の経験によるところも多いでしょうが、 そのエリアでの変化と今後の影響を考え、投資判断に役立てていくことが大切です。

まとめ

不動産バブルにある沖縄県では、新築マンションの建築が相次いでおり、地価の高騰や土地不足を招いています。

これにより、駐車場であった土地にマンションが建てられるケースも増えており、そのエリアでの投資環境を大きく変える原因となっています。

不動産投資では、単身者向け物件だけ、家族世帯向け物件だけ、事務所店舗だけなど、投資対象を固定化してしまうと、投資のチャンスに巡り合う機会が減ってしまいます。

そのため、そのエリアで起こっている変化、今後起こるであろう変化を敏感にキャッチしながら、エリアごとに適した物件を柔軟に適切に選べるように、普段から準備しておくことが大切です。

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