沖縄不動産投資の現地調査のポイントは?沖縄の特性を考えることが重要です
沖縄で物件の現地調査をするとき、皆さんはどのようなことに注意するでしょうか。
一般的な不動産投資の参考書で学んでいる人は、その知識によって現地調査をすると思います。
そのこと自体は悪くないのですが、 沖縄不動産投資では不十分な調査になる可能性が高いです。
なぜならば、沖縄は他の都道府県と異なる様々な性質を持っているからです。
現地調査で念入りに調べるべき箇所が、一般的な不動産投資とは異なります。
本稿では、沖縄の特性を踏まえつつ、質の高い現地調査を行うためのポイントについて解説していきます。
目次
沖縄の特性をおさえてこう
沖縄不動産投資における現地調査は、沖縄の特殊性を踏まえたうえで行うべきものです。
一般的な不動産投資におけるポイントも参考にはなりますが、それだけで考えてしまうと、沖縄の特性を考慮することができず、失敗してしまう可能性が高まります。
現地調査のポイントとなる沖縄の特性には、以下にようなものが挙げられます。
- 沖縄は台風銀座とも呼ばれるほど台風が多く、建物には強度が求められる。
- 沖縄は高温多湿であり、シロアリ被害が発生しやすい。
→沖縄のほとんどの物件は、強度が高く、シロアリ被害の心配もない鉄筋コンクリート造の物件である。 - 沖縄は全国平均と比較してかなり降水量が多い。
- 沖縄全土で潮風の影響を受ける。
- 沖縄の物件では、雨水による被害が発生しやすい。
→鉄筋コンクリート造の物件ではクラックが発生する。
クラックの程度がひどい場合には、大雨による雨漏りや鉄筋の錆び、潮風による鉄筋の錆びなどが発生しやすい。 - 沖縄は他県より水不足になる可能性が高い。
→沖縄には、屋上に給水タンクを設置している物件も多い(古い物件ほど多い)。
以上の特性を押さえておくと、沖縄不動産投資の現地調査で必要な視点が分かってきます。
外壁の状況クラックを観察する
まず、外壁の状況です。上記でも触れた通り、沖縄のほとんどの物件は鉄筋コンクリート造です。
れは、台風被害が多いこと、高温多湿によってシロアリ被害が多いことなどが原因です。
クラックとは「ひび割れ」のこと
鉄筋コンクリート造の物件では、外壁のクラックをしっかり観察しなければなりません。
クラックとは、外壁に生じるひび割れのことです。
コンクリート素材が収縮したり、揺れ(台風、地震、大型車の頻繁な往来など)によって建物がわずかに動いたりした際に発生するものであり、クラックは経年とともに必ず発生するものです。
しかし、クラックにも「良いクラック」と「悪いクラック」があります。
良いクラック
良いクラックとは、ヘアクラックと言われるもので、髪の毛くらいの細く浅いクラックのことです。
これは自然的に、発生すべくして発生したものですから、問題ないクラックです。
悪いクラック
一方、悪いクラックとは幅が広く、深いクラックのことです。
クラックスケールを使って調べたとき、0.3㎜以上のクラックは問題ありとみなします。
特に、カードを差し込めるくらいの幅であれば、その物件を購入するとしても、補修することを見据えて購入する必要があるでしょう。
クラックの補修費用を根拠に、値引き交渉ができる可能性もあります。
程度の酷いクラックに注意
クラックの程度がひどければひどいほど、購入には慎重になる必要があります。
なぜならば、クラックから雨水が侵入することによって、雨漏りや内部の鉄筋が錆びることにつながるからです。
特に沖縄は、降水量が多い気候です。
全国の年間降水量の平均が1757㎜であるのに対し、沖縄の年間降水量は2585㎜となっています。
また、梅雨と台風の季節には大雨が降るため、大きなクラックがある物件では雨水の被害を受ける可能性が高まります。
さらに、沖縄は潮風による被害もあります。
沖縄では、車の納車時にさび止め塗装をする習慣があるほどです。
クラックが大きい場合には、雨水だけではなく潮風によっても内部の鉄筋が錆びやすくなります。
鉄筋部分が錆びれば、強度が落ちてしまいます。
それによって、外壁が剥がれ落ちて落下することもあり、これが通行人に危害を加える可能性もあります。
そのような事故にならなかったとしても、外壁が崩れ落ちている物件は外観が損なわれ、空室リスクにつながります。
以上のように、沖縄には鉄筋コンクリート造の物件ばかりであり、クラックが具体的な被害に発展しやすい環境です。
そのため、クラックは念入りにチェックすることが大切です。
屋上は実際に上がってチェックをする
次に、物件の屋上の状態を見ていきます。できるだけ、屋上に上がってチェックすることが大切です。
給水タンクの状況を確認する
沖縄の物件には、給水タンクを設置している物件が多いです。
これは、沖縄は他の都道府県に比べて、水不足になるリスクが高いからです。
沖縄は降水量が多く、水不足になるイメージがないかもしれません。
しかし、沖縄の年間降水量の多さは、梅雨と台風によって一時的に降水量が増えることが影響しているほか、年による降水量の変動も大きいです。
さらに、降水量が多い年でも、沖縄には大きな河川がないことから、雨水がすぐに海に流出してしまいます。
このほか、1946年の人口は51万人であったものが、2005年には136万人に増加しており、このような人口増加も水不足の原因となっていました。
以上のような理由から、沖縄は水不足に陥りやすく、屋上に給水タンクを設置している物件が多いのです。
1981~82年における渇水では、一年のうち326日間も給水制限が行われたほどで、その深刻さが分かります。
もっとも、水不足が頻発していたのは90年代前半までであり、それ以降は急速に改善されています。
1997年に完成した海水淡水化施設の活躍もあって、最近では断水がほとんど起こらなくなってきています。
したがって、最近では新築の戸建て住宅に給水タンクを設置するケースは減ってきているようです。
- 集合住宅では給水タンクを設置しているケースが今も多い
- 沖縄不動産投資で購入する築20年前後の物件においては、まだまだ断水への意識が強かったことから給水タンクが設定されている
などの理由から、現地調査では給水タンクも確認することになるはずです。
給水タンクをチェックする際には、ポンプやタンクを調べてみて、稼働状況や清掃状況などを確認しておくべきです。
屋上防水
不動産投資全般に言えることですが、屋上防水は必ずチェックすべきです。
特に沖縄は、梅雨や台風による大雨の被害も多いため、屋上防水に問題があれば、物件が深刻なダメージを受ける可能性があります。
屋上防水については、以下の点についてチェックしています。
接合部の破れ・はがれ
防水シートの接合部が、劣化によって破れていたり、はがれていたりすることがあります。これによって雨水の侵入を招く可能性があります。
それ以上に怖いのは、沖縄は台風被害が多いため、強 風によってはがれかかっている防水シートが飛ばされてしまうことです。
そうなった場合には、屋上の防水機能が大きく損なわれるほか、防水工事の施工面積も増え、コストがかさむことになります。
防水層のふくれ、めくれ、やぶれ
塗膜防水層が経年劣化によって、ふくれたり、めくれたり、やぶれたりしていることがあります。これも、雨水の侵入を招きます。
防水保護層の経年劣化
防水保護層が経年劣化した場合、目地部分が浮いてきたり、コンクリートがひび割れたりすることがあります。
草が生えている
屋上に草が生えている場合には要注意です。
なぜ草が育っているのかと言えば、育つだけの水がたまっているからです。
特に、根が防水層を貫通している場合には、防水層の下まで水が回っていることになるため、早急な対策が求められます。
天候が良く高温多湿な沖縄では、生育する余地さえあれば、屋上で草が繁殖する可能性が高いです。
勾配不良
勾配不良とは、屋上面に傾きがあることであり、一部に雨水が溜まってしまう状態のことです。
この場合、雨水が溜まる部分の防水層だけが早めに劣化してしまうため、15年程度で全面に防水工事というルーティーンが壊れてしまい、修繕費もかさんでしまいます。
共有スペースもチェックしよう
外観のチェックと合わせて、共有スペースもチェックしておきましょう。
共有スペースの中でも、次の箇所は必ずチェックしておきましょう。
- 廊下
- 駐輪場
- ゴミ捨て場
- エントランスの郵便受け
このようなスペースから、入居者のマナーの程度が見て取れます。
例えば、廊下を見たとき、入居者が勝手に物を置いていたり、たばこの吸殻やガムの吐き捨てなどがみられる場合には、マナーの悪さが分かります。
駐輪場では、自転車や原付バイクなどが整然と並んでいるか、乱雑になっているかによってマナーの程度が分かりますし、ゴミ捨て場の散らかり具合によっても分かります。
エントランスの郵便受けは、不要なチラシなどを捨てるためのごみ箱が設置されていることが多いですが、このゴミ箱周辺の散らかり具合が参考になります。
一般的な傾向から、共有スペースの状態が悪い物件では、入居者のマナーが悪いと考えて構いません。
マナー=入居者の生活レベル
「マナーが悪い=入居者の生活レベル」といってよく、生活に余裕がない入居者が多ければ、周りへの配慮ができなってマナーが悪くなり、それが共有スペースに表れます。
家賃が安い物件には、そのような入居者が集まりやすく、マナーも悪くなりやすいです。
生活の不安定さから滞納リスクが高めになるほか、外観からマナーの悪さが見て取れるため、入居率に響くこともあります。
沖縄は、全国で最も所得が低い県であり、家賃の設定も低めになります。
家賃設定が低めであれば、マナーに問題がある入居者の割合も高くなります。
だからこそ、共有スペースはしっかりとチェックして、入居者のマナーの程度を把握しておくことは大切です。
空室の部屋を内覧してくまなくチェック
現地調査している物件が満室でなければ、外壁や屋上だけではなく、室内も必ずチェックしましょう。
不動産業者に室内を見たいと伝えておけば、部屋のカギを持ってきてくれます。
天井をチェック
沖縄不動産投資の内覧特に気を付けるべきことは、やはり雨漏りと日当たりです。
ここまで読んでお分かりと思いますが、台風や大雨が多いことから、室内に雨漏りがみられる場合があります。
内覧の際には天井を観察して、汚れがある場合には雨漏りの可能性を疑います。
もちろん、天井が汚れているからと言って、必ず雨漏りというわけではなく、給水管の漏れによって汚れている場合もあります。
いずれにしても、天井の汚れはチェックしておきましょう。
日当たりをチェック
さらに、高温多湿の沖縄では、日当たりが悪くジメジメした部屋は嫌われます。
したがって、日当たりのよしあしも必ずチェックしておきたいものです。
水回りをチェック
水回りもしっかりチェックしておきます。
築20年前後の物件であれば平成以降の建築ですから、水回りのトラブルはそれほど多くありません。
これは、水道管が硬質塩ビ管であることから、錆びによるトラブルがないからです。
しかし、平成以前の物件であり、大規模な修繕が行われていない場合には、鉄管が使われており、錆による赤水が出てくることもあります。
内覧の際には、すべての蛇口をひねって水を出してみて、 赤水が出ないこと、水圧が極端に弱くないことなどを確認しておきましょう。
その他のチェック
その他のチェックポイントも簡単に確認しておきましょう。
まず、壁や柱を一定間隔で叩いてみて、音が違う場所があれば陥没の可能性を疑います。
歩いたときの床の感触も重要です。
歩いたときにギシギシと鳴ることを「床鳴り」と言いますが、これは床材が湿気を含んで膨張し、床材とコンクリート下地の間にわずかなスペースができたことによるものです。
床鳴りがひどい場合には、クレームの対象になる可能性があります。
沖縄のあるリフォーム業者の話によれば、湿度の高い沖縄では、築20年を超える物件では床鳴りが出てくることが多いようです。
沖縄不動産投資では、築20年前後の中古物件を購入することも多いため、床鳴りは意識してチェックしておきたいものです。
このほか、室内を内覧するのですから、間取り、デザイン、設備などもしっかりチェックしましょう。
まとめ
沖縄不動産投資では、沖縄ならではの特性を踏まえたうえで、現地調査を行うことが大切です。
一般的な不動産投資でも、現地調査では外壁・屋上・共有スペース・室内などをチェックしていきます。
沖縄だからこそ、特に念入りに調査すべき箇所があるのです。
本稿で紹介した通り
- 鉄筋コンクリート造であること
- 大雨や台風や潮風などの影響があること
- 給水タンクが設置されている物件が多いこと
などを知っておけば、より質の高い現地調査が可能になると思います。