軍用地投資のデメリット返還リスクとは?ダメージと返還の可能性を探る
軍用地投資は、非常にリスクが低い投資であり、着実な資産形成に向いています。
しかし、ローリスクではあってもノーリスクではありません。
特に、 投資した軍用地が返還されるリスクは知っておくべきです。
軍用地が返還されれば、 借地料が得られなくなるほか、 土地の価格が大きく下がってしまう可能性もあります。
本稿で、軍用地の返還リスクについて詳しく学んでいきましょう。
目次
軍用地は日本国債と匹敵してローリスク
軍用地投資は、きわめてリスクが低い投資です。
どれくらいローリスクであるかを分かりやすく言うならば、 日本国債と同じくらいローリスクだと言えるでしょう。
ほぼリスクがない投資対象である日本国債と、軍用地には共通点があります。
それは、日本国債も軍用地も、 借り手が日本政府だということです。
日本国債の格付けは非常に高く、安全資産として世界的な人気があります。
日本政府が 経済的に破綻し、デフォルトに陥る可能性が低いと考えられているためです。
日本国債の難点といえば、リターンの低さくらいのものです。
極めて安全であることから、高いリターンを提供せずとも 買い手はいくらでも見つかるため、リターンは非常に低く設定されています。
将来のことはわかりませんから、日本政府と言えども、デフォルトのリスクがゼロとは言い切れません。
しかし、日本国債がデフォルトになるような状況であれば、現金(日本円)や日本企業の株式、日本国内の不動産を持っていたとしても、 それらの資産価値は大きく減少してしまうでしょう。
また、経済大国日本がデフォルトに陥る状況では、世界的に何らかの危機的状況が予想されるため、国外に資産を逃がしたところで、資産を守れるとは限りません。
このように、日本国債のリスクを警戒すること自体 ナンセンスな話と言えるでしょう。
日本国債と同じく、日本政府が借り手となっている軍用地も、極めてローリスクな投資と言えます。
日米安保条約によって、沖縄における米軍の駐屯は認められているのです。
軍用地は政府が地主から借り上げ、借地料を支払うことで米軍に提供されています。
もし、政府が借地料を大幅に引き下げたり、借地料の支払いを停止したりすれば、地主の反発を受けることでしょう。
そうなれば、 米軍への軍用地提供がうまくいかなくなる可能性が高いです。
これが、外交問題や国防問題にも発展することは容易に想像できます。
これに加えて、米軍が沖縄から撤退することは考えにくいです。
そのため、今後も日本政府による軍用地の借り上げは続き、 借地料は支払われ続けるでしょう。
借り手が日本政府であるということにより、軍用地投資のリスクは大幅に引き下げられるのです。
軍用地投資の唯一のリスクとは
では、軍用地投資は全くのノーリスクなのかといえば、そうとは言い切れません。
軍用地投資の唯一のリスクとして、軍用地の返還リスクがあるからです。
これは、言うまでもなく「米軍が沖縄から完全に撤退してしまったり、部分的に返還されたり、基地が移転したりする」ことによって、自分の所有していた軍用地から 借地料が得られなくなってしまうことです。
日本国債のデフォルトリスクは、借り手である日本政府が債券を償還できなくなることであり、ほとんど起こりえないリスクです。
軍用地では、借り手である日本政府が借地料を支払わずに収益が得られなくなるリスクは、ほとんど考えられません。
しかし、アメリカの都合で軍用地が返還されるとなれば、日本政府が借地料を支払うつもりでも、借り上げと借地料支払いの必要がなくなります。
したがって、借り手が日本政府あっても、 カバーすることができないリスクだと言えます。
軍用地返還時のダメージ
軍用地が返還され、借地料が 得られなくなれば、利回りはゼロになってしまいます。
しかし、それだけではありません。以下のように、かなりのダメージが想定されます。
ただの土地=価値が下がる
そもそも、なぜ軍用地の需要が高く、投資としても人気があるのかといえば「 政府が借地料を支払ってくれる安定した投資先」だからです。
もし返還されてしまえば、それは軍用地ではなく、単なる土地にすぎません。
借地料が発生することで、高値で取引されていた軍用地も、 ただの土地になってしまえば価値は大きく下がるでしょう。
土地によっては、ほとんど利用価値のない田舎や山奥、崖のすぐそばといった土地かもしれません。
借地料が得られるならばまだしも、ただの土地で、さらに使い勝手も悪いとなれば、 二束三文でしか売れない可能性が高いです。
土地の値上がりも期待しにくい
これまでも、軍用地はわずかずつ、繰り返し返還されてきました。返還された軍用地は、再開発の対象となりました。
したがって、軍用地が返還されたとしても、再開発されれば価値は上がるのだから、それはそれで良いと考える人もいるでしょう。
しかし、軍用地の再開発は簡単に進むとは考えにくいです。
なぜならば、再開発が困難であたりまえと言える問題をいくつも抱えているからです。
期待できない理由1:ゼロからの開発
まず、軍用地の歴史をみれば、日本の復興もまだまだ不十分な敗戦後の沖縄で、米軍が半ば強制的に基地を作った歴史があります。
返還されて米軍基地ではなくなったところで、それは戦後間もないころの土地でしかなく、まったく手付かずのゼロの状態から開発していかなければなりません。
以前開発したエリアを、再度開発して活性化や最適化を目指すことと比べると、困難な開発になることが予想されます。
期待できない理由2:開発計画を立てにくい
米軍の基地返還はかなり細切れに行われるため、再開発するといっても、まとまった土地での再開発を計画しにくいという問題もあります。
返還された土地にリゾート施設を作れば、土地の価格は跳ね上がるでしょう。
しかし、今後その周辺がどうなるかもわからない土地では、なかなかこのような開発は進めにくいです。
開発を手掛ける側としては、「も う少し返還が進んで、まとまった土地を確保してから」と考えるのが普通で、返還後の軍用地が一切手付かずのまま放置される可能性もあります。
期待できない理由3:土壌汚染の問題
米軍基地が長年にわたって利用していたことにより、軍事施設特有の土壌汚染が問題になることもあります。
汚染された土地は利用が難しく、開発もされなければ買い手もつかないでしょう。
期待できない理由4:利害関係が複雑
返還された軍用地は、利害関係も複雑です。公有地と私有地が入り乱れていたり、私有地ならば考え方の異なる個人の土地が入り乱れていたりします。
開発を手掛けるには、まとまった土地を開発側が買い上げたり、合意を取る必要があります。
これが、開発を困難にしていることは間違いありません。
返還リスクが低い理由
これまでにわずかながら返還が行われたことは事実であり、再開発が難航した事実もあります。
したがって、軍用地投資にあたって、返還リスクを全く無視することはできません。
とはいえ、米軍の完全な撤退や、急速・大規模な返還が行われる可能性は、非常に低いと言えます。
基地を返還するとしても、かなり細切れでしか返還していないことから、米軍が沖縄を利用し続けようとしている姿勢がうかがえます。
なぜ、沖縄がそれほど重要であるかと言えば、沖縄はアメリカの極東戦略において、極めて重要な拠点となっているからです。
これは、那覇市と東アジアの主要都市との距離を見てみるとよくわかります。
那覇市からの距離
- 台北:630㎞
- 上海:820㎞
- ソウル:1260㎞
- マニラ:1480㎞
- 北京:1840㎞
- グアム:2280㎞
このように、沖縄に基地を構えていることによって、 東アジア戦略で重要となる多くのエリアをカバーすることができます。
昨今の東アジア情勢は、非常に複雑です。
北朝鮮が不気味であるのはいつものことですが、北朝鮮と韓国の関係、軍事大国になりつつある中国の動静、尖閣諸島や竹島の問題など、少し間違えば戦争のきっかけになりそうな問題がたくさんあります。
もし、沖縄から撤退するとなれば、米軍は第二の沖縄を見つけて基地を構える必要があります。
しかし、それは不可能でしょう。
沖縄基地にしても、第二次世界大戦の流れのなかで、幸運にして基地を作れたというだけです。
トランプ大統領も、東アジアの問題を強く認識しているようで、日米の同盟関係は強化されています。
尖閣諸島問題への対処でも、日米安保条約に基づいて、米軍に防衛義務があることも確認されています。
このことから、トランプ政権でも沖縄の戦略的意義は十分に認識しており、沖縄に基地を構える根拠である 日米安保条約をいまだに有効なものとみなしていることが分かります。
アメリカが沖縄を重視し、今後も撤退しないことはほぼ間違いないでしょう。
日本としても、それは望むところです。
日米の同盟関係を損なうことは、日本にとっては致命的なことですから、米軍への協力は必要不可欠です。
このように、 極東戦略の観点から沖縄を撤退したくないアメリカと、 安全保障の観点から沖縄から撤退してほしくない日本の双方の利害が一致して、米軍基地は成り立っています。
基地問題で気焔をあげる勢力が話題になることも多いですが、それによって米軍を撤退に追い込み、日米関係が破綻するような事態にはならないと考えるのが妥当です。
また部分的な返還にしても、なかなか予定通りに進まなかったり、返還されても全体のうちごくわずかですから、この意味でも返還リスクは低いと言えます。
まとめ
ローリスクな軍用地投資にも、基地が返還されるリスクがあります。
米軍が完全に撤退することはほぼあり得ませんが、部分的に返還されることはこれまでにもあったため、投資した軍用地がその対象になる可能性はあります。
軍用地投資の唯一のリスクですから、完全に無視することはできませんし、楽観視しすぎるのも間違いです。
本稿によって、返還リスクについて詳細に理解し、投資判断に役立ててほしいと思います。