軍用地は融資で買える!最近の地銀の動向から
一般の不動産投資であれ、軍用地投資であれ、投資のためにはまとまった資金が必要です。
小規模な軍用地であれば数百万円で取引されることもあり、自己資金のみで購入する人も多いですが、まとまった借地料を得るためには数千万円規模の軍用地を購入することとなり、自己資金のみでの購入は困難となります。
そこで、融資が必要です。
近年、不動産投資に対する融資環境は厳しくなっていますが、軍用地投資への融資はどうなのでしょうか。
本稿では、日本経済新聞の調査結果から、軍用地投資と融資の関係を解説していきます。
目次
不動産投資の融資環境
2010年代はじめ頃から、個人による不動産投資が人気化しました。
多くの金融機関がアパートローンのハードルを引き下げ、フルローンやオーバーローンを組むことも容易となり、サラリーマンなどが不動産融資を始めるケースが激増したのです。
当時の不動産投資関連書籍を見ても、フルローンやオーバーローンを活用して、資産を拡大していく手法を解説した書籍が非常に多いです。
しかし、 この流れは徐々に変わっていきました。
不動産市場が活況を呈し、土地や建物の価格が上がり、融資額も大きくなっていくにつれて、担保価値や収益性などが厳しく審査されることが徐々に増えていったのです。
特に、不動産投資家が口をそろえて「厳しくなった」と言うのが、2017年頃からです。
このころから、フルローンやオーバーローンで融資を受けることが難しくなり、一定の頭金を求められたり、属性によって融資が受けられないことが増えてきました。
とりわけ、不動産投資に対する融資が厳しくなったのは、2018年のスルガ問題以降です。
多くの人がご存知でしょうが、 シェアハウスを巡る投資トラブルにより、スルガ銀行で不正融資が発覚したことで、金融庁による不動産融資への監督が厳しくなりました。
その結果、多くの地銀では、審査体制を見直すなどして、融資の厳格化を進めることとなりました。
ただし、融資を受けにくくなったとはいえ、それはあくまでも全盛期を比べてのことです。
フルローンやオーバーローンが受けられていた全盛期に比べて、融資へのハードルが高くなったということであって、今でも融資が受けられないわけではありません。
日経新聞の調査から
近年、多くの地銀が経営難に陥っています。
地銀は、地域金融を支える役割を担っています。
しかし、日本ではすでに人口の減少が始まっており、特に地方での人口減少が深刻です。
人口が減少すれば消費・生産ともに減少し、経済は縮小していきます。
当然、その地域の金融を支える金融機関の役割も限定され、貸付金も減少し、利息収入は減少していきます。
これに加え、マイナス金利政策により、預金金利と貸付金利の差によって得られる利ザヤが縮小しています。
利ザヤによる利息収入は、銀行業務における収益の柱です。
人口減少によって収益機会が減り、なおかつ収益率も低下するのですから、地銀にとっては二重苦といえる状況です。
メガバンクであれば、海外展開などによって収益の多角化を図ることもできます。
しかし、特定の地域のみで展開する地銀は、その地域から得られる利息収入への依存度が高いです。
その利息収入が圧迫されている今、地銀が収益を確保するためにはより多くの層を対象として、貸付を拡大することが重要です。
収益源が先細るなかで、不動産融資は数少ない成長分野です。
アパートやマンション、軍用地などの購入費用は1億円規模になることも多く、節税対策や副業としてのニーズも高いです。
このため、スルガ問題が起きてもなお、地銀にとって個人への不動産融資の重要性は変わりません。
全国銀行協会のデータでも
全国銀行協会のデータを見ても、この傾向は明らかです。
データによると、今年7月末時点における国内の銀行の不動産融資残高は、22兆7797億円です。
これは、前年比0.6%の減少です。
全国的には不動産融資残高が減少していますが、詳細を見ると大手銀行が3%の減少、地銀が1%の増加となっています。
収益構造などの違いから、不動産融資への姿勢は、大手銀行と地銀で対照的な結果となっています。
今後、軍用地投資をはじめとする不動産投資では、地銀の役割が大きくなってくることでしょう。
6割弱の地銀で融資が増加
以上のように、今でも不動産投資のための融資が不可能ではない、むしろ多くの地銀がそれなりに前向きです。
このことは、日経新聞の調査によっても明らかになっています。
日経新聞が、地銀103行に実施した直近の調査では、個人の不動産投資に対する融資残高は、1年前よりも増加傾向にあります。
調査結果によれば、1年前と比較した不動産融資残高は、
- 増えた:59行(57%)
- 減った:17行(17%)
- 変わらない:14行(14%)
となっており、6割弱の地銀で融資残高が増えていることが分かります。
全103行のうち13行は回答がなかったようですが、 たとえその13行の融資残高が減っていたとしても、全体で見れば融資残高が増えている地銀のほうが多数派です。
昨年の同様の調査では、不動産融資が1年前に比べて増えたと回答した地銀は全体の81%に上っています。
これに比べると減少傾向にありますが、まだまだ多くの地銀が不動産融資に前向きであると言えます。
融資の可否は「案件次第」
また、日経新聞の調査では、今後の不動産融資の方針についてもアンケートを実施しています。
それによると、地銀の82%が「案件次第」と回答しています。
昨年の調査では、「案件次第」と回答した地銀は66%に留まっています。
地銀の経営が逼迫していることで、不動産融資への依存度が高まり、案件次第では融資したいと考える地銀が増えていると考えられます。
このほかの回答を見ると、「慎重に進める」と回答した地銀は17%となっています。
「案件次第」との回答が82%、「慎重に進める」との回答が17%であることから、地銀のほぼ100%が
「慎重に進め、案件次第では融資可能」
と考えていることが分かります。
なお、この調査で「積極的に伸ばす」と回答した地銀はゼロです。
スルガ問題を受けて厳格化が進められていることにより、積極姿勢は見せにくいのだと思われますが、実際には「良い案件には積極的に融資する」という真意が見え隠れする結果となっています。
スルガ問題以降、多くの投資家が「融資が厳しくなった」と感じています。
確かに、頭金が必要になった、求められる属性が厳しくなったなど、投資へのハードルは高くなっていますが、 それでも銀行が融資に後ろ向きになっているわけではないのです。
担保価値さえあれば融資は受けられる
日経新聞の調査の中で、中部地方のある地銀は以下のような意見を寄せています。
「(不動産融資は)担保も手堅く、手っ取り早く融資を伸ばせる」
不動産融資では、融資対象となる物件の担保価値を査定し、対象物件を担保としたうえで融資します。
借り手の信用によって、担保評価額以上を信用貸しすることもありますが、多くは担保評価額を限度として融資します。
そうすることで、 借り手が返済困難に陥った場合にも、担保物件を処分することで貸付金を回収でき、安全性が高いのです。
もちろん、銀行に持ち込まれる融資案件は様々で、投資計画がずさんである、担保価値が低い物件であるなどの問題もあります。
したがって、融資審査の見直しをはじめとする管理体制は厳格化しています。
しかし、個人への不動産融資に対して「案件次第」「慎重に進める」と回答している地銀では、
「慎重に審査し、担保が手堅い案件であれば、手っ取り早く融資を伸ばすためにも積極的に対応する」
と考えています。
このほか、融資の審査では物件の収益性も重視されます。
収益性が高い物件であれば、返済困難に陥る可能性も低いため、銀行は積極的に融資したいと考えます。
つまり、担保価値と収益性が確保できる物件は、今でも積極融資の対象なのです。
軍用地はどうか?
日経新聞の調査では、個別の地銀の調査結果が公表されていません。
このため、軍用地投資の際に融資を受ける沖縄銀行や琉球銀行などの地銀の姿勢は分かりません。
しかし、ほぼ100%の銀行が「慎重に審査し、案件次第では融資可能」と回答していることから、沖縄銀行や琉球銀行も同じ姿勢と考えて差し支えないでしょう。
上記の通り、融資を受けるカギとなるのは担保価値と収益性です。この二点から考えると、軍用地投資の融資の受けやすさが分かります。
軍用地の担保価値
まず、軍用地の担保価値はかなり安定しています。
なぜならば、軍用地の担保評価は特殊であり、物件価格に対して一定の割合で担保価値を確保できるためです。
軍用地の売却価格は、年間の借地料と、軍用地のエリアごとに定められた相場の倍率によって算出されます。
相場の倍率とは、そのエリアの競争率のようなもので、人気のエリアほど倍率が高くなります。
例えば、返還の予定がほぼないとされている嘉手納飛行場の倍率は、2019年現在、58~60倍となっています。
もし、年間の借地料が100万円、相場の倍率が60倍であれば、その軍用地は、
100万円×60倍=6000万円
で取引されます。
一方、軍用地の担保評価は、年間の借地料と、金融機関が定める融資倍率によって算出します。
例えば、同じ嘉手納飛行場の軍用地の融資倍率が50倍であれば、担保評価額は、
100万円×50倍=5000万円
となり、5000万円まで融資を受けられる可能性が高いです。購入するためにはあと1000万円が必要ですが、信用のある人はこれを信用で借りたり、そうでなければ自己資金で準備することになります。
現在、沖縄全域の軍用地では、相場の倍率の平均は56~58倍、融資倍率の平均は45~50倍と言われています。
相場の倍率と融資倍率の乖離は10倍程度で一定しており、相場の倍率が上昇すれば融資倍率も上昇します。
このため、軍用地投資の際には、購入を検討している軍用地の相場の倍率から10倍程度低く見積もった倍率が融資倍率となり、それを上限とする融資を受けられる可能性が高いのです。
ただし、相場の倍率と融資倍率の関係が崩れているエリアもあります。
例えば、
- 返還を予定されているエリアでありながら、返還後の開発が見込まれて人気化し、相場の倍率が高くなっているエリア
- 返還を予定されていないものの、土地の価格が安いため融資倍率も低く設定されているエリア
などは、相場の倍率と融資倍率との乖離が大きくなるため、注意が必要です。
軍用地の収益性
次に収益性ですが、軍用地は極めて高い収益性を誇ります。
これは、軍用地の借り手が日本政府であるためです。
国防や日米安保の観点からも、沖縄の軍用地は重要です。
軍用地主とトラブルになれば基地の運営に支障をきたすことから、政府は借地料を確実に支払い、さらに年々借地料を増額しています。
一般の不動産に対する融資であれば、空室や滞納のリスクがあるため、銀行も収益性の審査を厳しく行ないます。
しかし、 融資対象の物件が軍用地であれば、空室や滞納のリスクがほぼゼロであるため、銀行は収益性を容易に評価することができます。
軍用地投資では融資を受けやすい
軍用地は、担保評価・収益性のいずれにおいても優れています。
地銀は「慎重に審査したうえで、案件次第で前向きに融資したい」と考えているのですから、軍用地投資への融資は優良案件と言えるのです。
このように、軍用地投資で融資を受けやすいことは、以前から言われていることであり、それが軍用地投資の魅力の一つになっていました。
そのことが、今回の日経新聞の調査によって、より一層明確になったと言えます。
まとめ
日経新聞の調査によって、地銀では不動産融資への依存度が高く、ほとんどの地銀が不動産融資に前向きであることが分かりました。
地銀は、軍用地のような優良物件に対しては、積極的に融資したいと考えているのです。
軍用地には、一千万円以下で買える小規模物件もありますが、まとまった借地料を得るために、数千万円規模の軍用地を購入したいと考えている人も多いと思います。
そのような人は、地銀の動向や軍用地の特殊性を踏まえて、融資を積極的に活用していきましょう。