軍用地の借地料はどれくらい上昇している?全期間の統計を見ればよくわかる

軍用地投資とは、沖縄で主に米軍が基地を運営している土地を購入し、政府から借地料を受け取ることによって利益を得るものです。

借り手が日本政府であるため、滞納が起こる心配がほとんどなく、また年々増額されていることから、長期的に安定したリターンが期待できます。

このため、軍用地投資では、借地料がどれだけ得られるか、どれくらい増額されるかが重要となります。

本稿では、借地料の安定性、将来性などをより詳しく知るために、全期間の統計とともに解説していきます。

軍用地投資の2つの大きな魅力

 

 軍用地投資の大きな魅力は、 非常に低いリスクで、 安定したリターンが期待できることにあります。

これは、軍用地の借り手が日本政府であり、借地料の滞納が起きる可能性がほとんどなく、さらに借地料が毎年増額を続けているためです。

このため、軍用地投資ではリターンが得られなくなるリスクがなく、 リターンは年々高まっていきます。

さらに、 軍用地の価格は「借地料×エリアごとの倍率」によって算出されるため、借地料の増加に伴い、軍用地の価値も高まります。

近年では、軍用地投資の人気が急速に高まっていることから、エリアごとの倍率も上昇を続けているため、借地料と倍率の両面から価値が上がっています。

したがって、軍用地投資は、インカムゲイン(毎年得られる借地料)とキャピタルゲイン(売却による差益)の両方が期待でき、安定的に資産を形成していくのに、非常に好都合な投資と言えるのです。

借地料はどれくらい上昇している?

以上のことから、軍用地投資において、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を左右するのは、借地料とその上昇率と言えます。

では、 借地料はどれくらい上昇しているのでしょうか

沖縄県の公表する統計資料から、 軍用地の歴史を詳しく見てみると、その様子が良く分かります。

日本政府が、 軍用地主から軍用地を借り上げ、借地料の支払いを始めたのは、1972年(昭和47年)のことです。

それ以前、沖縄は1952年に主権を回復しているものの、アメリカの統治が続いていたことから、借地料は支払われていませんでした。

この期間中、沖縄の軍用地主は、土地をアメリカ軍によって接収されていたものの、なんら見返りは受けていませんでした。

アメリカによる統治が27年間続いた後、1972年に沖縄は日本に復帰を果たし、アメリカの統治は終わりをつげました。

しかし、 日米安保条約に基づき、アメリカ軍の基地は引き続き運営されることとなったため、日本政府が軍用地主に借地料を支払って借り上げアメリカ軍に提供する、現在の形となったのです。

したがって、 軍用地の借地料の推移を知るためには、1972年に借地料の支払いが始まってから、現在に至るまでの推移を見ていく必要があります。

米軍基地用地の借地料推移

沖縄県の統計資料をまとめると、米軍基地用地の借地料は以下のように推移しています。

米軍基地推移
借地料(百万円) 面積(ha) 1haあたりの借地料(百万円) 借地料上昇率
1972 12,315 28,661 0.43 0.00%
1973 17,715 28,387 0.62 45.24%
1974 25,538 27,671 0.92 47.89%
1975 25,951 27,048 0.96 3.96%
1976 25,912 26,653 0.97 1.33%
1977 25,245 26,302 0.96 -1.28%
1978 27,617 25,926 1.07 10.98%
1979 29,368 25,862 1.14 6.60%
1980 31,116 25,587 1.22 7.09%
1981 33,773 25,401 1.33 9.34%
1982 34,507 25,191 1.37 3.02%
1983 35,468 25,376 1.40 2.04%
1984 36,772 25,360 1.45 3.74%
1985 38,314 25,373 1.51 4.14%
1986 39,932 25,361 1.57 4.27%
1987 39,402 25,307 1.56 -1.12%
1988 40,671 25,027 1.63 4.38%
1989 42,650 25,026 1.70 4.87%
1990 44,726 25,024 1.79 4.87%
1991 47,031 25,013 1.88 5.20%
1992 51,690 25,012 2.07 9.91%
1993 55,140 24,530 2.25 8.77%
1994 57,707 24,526 2.35 4.67%
1995 60,317 24,447 2.47 4.86%
1996 63,043 24,306 2.59 5.13%
1997 66,210 24,286 2.73 5.11%
1998 68,245 24,283 2.81 3.08%
1999 70,484 23,759 2.97 5.56%
2000 72,811 23,754 3.07 3.33%
2001 75,064 23,753 3.16 3.10%
2002 76,451 23,729 3.22 1.95%
2003 76,568 23,687 3.23 0.33%
2004 76,991 23,681 3.25 0.58%
2005 77,542 23,671 3.28 0.76%
2006 77,670 23,668 3.28 0.18%
2007 77,682 23,302 3.33 1.59%
2008 78,375 23,293 3.36 0.93%
2009 79,090 23,293 3.40 0.91%
2010 79,295 23,294 3.40 0.26%
2011 79,849 23,247 3.43 0.90%
2012 81,125 23,176 3.50 1.91%
2013 83,240 23,176 3.59 2.61%
2014 84,514 23,098 3.66 1.87%
2015 84,798 22,992 3.69 0.80%
2016 85,843 22,988 3.73 1.25%
2017 86,662 18,822 4.60 23.30%
全期間合計 74347 -9838.6 4.17 871.55%

留意点

この推移を見るとき、留意しておきたいことがあります。

それは、 一口に「軍用地」といっても、軍用地の所有者が複数いるということです。

最新の統計資料では、軍用地のうち 23.5%が国有地、1.3%が県有地、35.6%が市町村有地、39.6%が民有地となっています。

軍用地投資では、民間の軍用地主が所有する軍用地を購入するため、軍用地の中でも民有地が投資の対象となります。

借地料総額は、国有地を除く軍用地に対して支給されるものです。

国有地の割合が小さければ、全体への影響も取るに足りませんが、全体の約1/4を国有地が占めているため、この点については留意しておく必要があるでしょう。

上記の表では国有地を含む軍用地全体に対する借地料を単純計算しています。

しかし 借地料推移の推移をより詳しく知るためには、国有地を除く軍用地の推移を見る必要があります。

さらには地域ごとの軍用地別に推移を見ることも重要です。

(ここでは全体像を俯瞰するために、所有者別・エリア別の借地料推移には触れていません)

2017年は1haあたりの借地料が大きく伸びており、上昇率が23.30%となっていますが、これも返還された土地の大部分が国有地であったためです。

2016年12月に返還されたのは、衆院沖縄3区内の山林にある米軍北部訓練場7800haのうち、約半分にあたる4000haです。

この大部分は国有地であったことから、基地面積は大幅に縮小したものの、借地料総額にはほぼ影響がなく、結果的に1ha当たりの借地料が大幅に高まることとなりました。

この点にも留意しておくと、借地料推移の全体像をより正確に把握することができます。

借地料は安定して増加している

上記の表から借地料の上昇率を見ると、1973年、1974年はともに40%以上の上昇率となっています。

軍用地の面積はさほど変わらずに借地料総額が大きく上昇しています。

これについて、具体的な資料は見つかりませんでした。

おそらく借地料が支払われ始めて間もない時期であり、適正な借地料の判断が難しく、政府と軍用地主の交渉の結果、大幅な上昇につながったものと思います。

その後、 10%前後の高い上昇率を見せる年もありますが、借地料の総額が大きくなるにつれて、年間の上昇率は徐々に落ち着いています。

政府が、借地料の支払いを拒むことはないものの、借地料総額が大きくなるにつれて予算への影響も大きくなるため、大幅な増額が難しくなっているのでしょう。

とはいえ、 米軍基地の面積は長期的に見て徐々に縮小しているのに対し、借地料は緩やかに上昇を続けていることから、借地料は常に上昇し続けていることが分かります。

1977年、1987年の両年には、1haあたりの借地料が減少しています。

しかし、きわめて軽微な減少にすぎず、減額された後の数年において大幅な上昇となっているため、ほとんど取るに足りないと言って良いでしょう。

当サイトでは、「軍用地の減少はされず、これまで毎年増額されてきた」と解説してきましたが、詳しく見ていくとこのように 例外的な時期も見られます。

しかし、 このような例外的な年を見るよりも、全期間を見るべきです。

全期間を通じて見てみると、1972年から2017年までの全期間において、借地料の上昇率は871.55%となっており、年平均では5.66%もの上昇率です。

毎年、 受け取れる借地料がこれだけ伸びていくのですから、長期投資としてのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

さらに、 バブル崩壊以降、日本経済が低迷を続けている中でも借地料は上昇を続けています。

それだけではなく、ITバブル崩壊やリーマンショックなどによって、世界的な金融危機が騒がれている中でも、借地料は上昇を続けてきたのです。

もっとも、上記の通り、借地料の上昇率は年々下がっています。

今後も、借地料が短期間で大幅に増額されるとは考えにくいです。

とはいえ、最近における借地料の推移をみても、2010年から2016年(国有地の返還によって軍用地面積が大幅に縮小した2017年は除外)までに借地料は9.70%も上昇しています。

借地料の上昇が鈍くなっているとはいえ、まだまだ魅力的な投資と言えるでしょう。

まとめ

本稿で解説した通り、軍用地の借地料は安定して上昇を続けてきました。

部分的に見れば、1haあたりの借地料が微減している年もありますが、全体をみれば取るに足りないものです。

今後も、軍用地投資は安定したリターンをもたらしてくれることでしょう。

2019年8月現在、景気後退が懸念されていますが、過去の推移から考えて、軍用地投資には大きな影響があるとは考えにくいです。

このように安定性が高いこと、そしてリターンの増加が長期的に持続することが、軍用地の最大の魅力なのです。

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