上昇を続ける軍用地の倍率。それでも軍用地は買って良し!

近年、 軍用地の相場の倍率が急速に上昇しています。

これは、 軍用地投資の魅力が徐々に認知されるようになり、人気が高まっている一方で、売りに出される物件は少なく、高い倍率でも買いたいと考える人が増えているためです。

倍率が上昇すれば取引価格は高まり、相対的に利回りは目減りしていきます。

このため、上昇すればするほど買いにくいと感じてしまうのですが、よほど上昇しない限りは上昇余地が残っており、十分なリターンも期待できます。

本稿では、軍用地の倍率の仕組み、倍率がリターンに与える影響、倍率が上昇しても買ってよい理由について解説していきます。

軍用地の倍率の仕組み

一般的に、土地の売買価格は坪単価と面積を掛け合わせることで算出されます。

しかし、軍用地の売買価格はこのように算出するものではなく、

年間の借地料×相場の倍率

で算出します。

相場の倍率とは、軍用地の所在地の人気に応じて変化する倍率です。

軍用地投資の大きな魅力は、長期にわたって安定したリターンが期待できることです。

借地料は、そこに米軍や自衛隊の基地がある限り永続的に得られ続けるものですが、基地が返還された場合には借地料が得られなくなります。

このため、 相場の倍率を最も大きく左右する要素は「返還リスク」です。

米軍基地の中では嘉手納飛行場、そして自衛隊基地は現時点で返還リスクがほぼないと言われているため、これらのエリアでは倍率も高く推移します。

2019年1月データでは、嘉手納飛行場と航空自衛隊那覇基地は58~60倍で取引されています。

ただし、 倍率は必ずしも返還リスクだけに左右されるものではありません。

返還された軍用地は単なる更地になりますが、返還後に開発の対象となり、地価が大きく上昇することでリターンが期待できるエリアもあります。

このようなエリアの軍用地は、返還予定でも高い倍率で取引される傾向があります。

現在では、浦添市の牧港補給地区、宜野湾市の普天間飛行場、北谷町のキャンプ瑞慶覧などの軍用地が、 返還予定でありながらも高い倍率で取引されています。

その大きな理由は、これらの軍用地が

国道58号線(国頭郡国頭村から那覇市にかけて沖縄本島を縦断する国道。九州・沖縄で最も交通量が多い)

沿いに位置しており、返還後に区画整理されれば一等地になる可能性が高いからです。

なお、2019年1月データでは、牧港補給地区が60~65倍、普天間飛行場が48~51倍、キャンプ瑞慶覧が48~50倍で取引されています。

倍率は大きく上昇

さて、 長期投資によってローリスクミドルリターンを期待できることが、軍用地投資の大きな魅力です.

そのため、 返還後の開発によって得られる売却益ではなく、長期間にわたって借地料を得るために、基本的には返還リスクの低いエリアに投資することとなります。

ところが、近年、軍用地投資の人気が高まっていることによって、相場の倍率が急速に上昇しています。

返還リスクの低い嘉手納飛行場の倍率を例にすれば、2011年は35倍程度で取引されていたものが、2019年には58~60倍で取引されているのです。

相場の倍率の下限となっている58倍で計算すると、倍率は8年間で約66%、年平均にして6.52%の勢いで上昇していることが分かります。

仮に、今後もこのペースで倍率が上昇し続けるとすれば、1年ごとに62倍、66倍、70倍、75倍、80倍・・・と上昇し続けることになります。

もちろん、 倍率が高まれば必要資金も多くなり、高すぎると感じて見送ったり、融資のハードルが高くなったりするため、倍率が高くなるにつれて人気も落ち着き、上昇は鈍くなります。

このため、 一定ペースで単純に上昇しつづけることはあり得ませんが、近年の傾向をベースに考えるならば、今後も倍率の上昇が続くと考えたほうが自然です。

倍率の上昇がリターンに与える影響

倍率が高いほど軍用地の買値は高くなるため、倍率の上昇はリターンを大きく左右します。

特に近年、倍率の急速な上昇によって、軍用地投資のリターンが顕著に目減りしています。

これは、 倍率の上昇率が借地料の上昇率をはるかに上回っているためです。

これまで、政府は借地料を増額し続けてきました。

しかし、那覇市が公表している最新のデータによれば、2012年から2017年における年間の平均上昇率は1.32%となっており、倍率の上昇をほとんどカバーできていないことが分かります。

さらに、 借地料の推移を見れば、上昇率が年々鈍くなっていることも明らかです。

※借地料の上昇率の鈍化について、詳しくはこちら

軍用地の借地料は上昇率が鈍い。それでも軍用地投資の魅力は増していく

 

つまり、 倍率の上昇率に拍車がかかる一方で、借地料の上昇率は鈍化しているということです。

倍率の上昇によるリターンの低下は、2011年と2019年に嘉手納飛行場を購入した場合の、30年間のリターンの推移を見れば明らかです。

以下の条件で、実際にそれぞれのリターンをシミュレーションしてみましょう。

【比較の条件】

  • 年間の借地料は20万円
  • 投資期間は30年間
  • 借地料の上昇率は1%とする(倍率がリターンに与える影響を単純に比較するため)
  • 購入当時から倍率は変動しないものとする(倍率がリターンに与える影響を単純に比較するため)
  • 2011年に購入した場合の倍率は35倍
  • 2019年に購入した場合の倍率は58倍
  • 借地料利回りは、「購入価格」に対する「年間の借地料」
  • 売却利回りは、「購入価格」に対する「売却価格」
  • 合計利回りは、「購入価格」に対する「売却時点までに得られた借地料の総額と売却価格の合計」

【2011年に購入した場合のシミュレーション】

期間 借地料収入 借地料上昇率 物件価値 累積借地料 借地料利回り 売却利回り 合計利回り
1年目 200,000 1.00% 7,000,000 200,000 2.86% 0.00% 2.86%
2年目 202,000 1.00% 7,070,000 402,000 2.89% 1.00% 6.74%
3年目 204,020 1.00% 7,140,700 606,020 2.91% 2.01% 10.67%
4年目 206,060 1.00% 7,212,107 812,080 2.94% 3.03% 14.63%
5年目 208,121 1.00% 7,284,228 1,020,201 2.97% 4.06% 18.63%
6年目 210,202 1.00% 7,357,070 1,230,403 3.00% 5.10% 22.68%
7年目 212,304 1.00% 7,430,641 1,442,707 3.03% 6.15% 26.76%
8年目 214,427 1.00% 7,504,947 1,657,134 3.06% 7.21% 30.89%
9年目 216,571 1.00% 7,579,997 1,873,705 3.09% 8.29% 35.05%
10年目 218,737 1.00% 7,655,797 2,092,443 3.12% 9.37% 39.26%
11年目 220,924 1.00% 7,732,355 2,313,367 3.16% 10.46% 43.51%
12年目 223,134 1.00% 7,809,678 2,536,501 3.19% 11.57% 47.80%
13年目 225,365 1.00% 7,887,775 2,761,866 3.22% 12.68% 52.14%
14年目 227,619 1.00% 7,966,653 2,989,484 3.25% 13.81% 56.52%
15年目 229,895 1.00% 8,046,319 3,219,379 3.28% 14.95% 60.94%
16年目 232,194 1.00% 8,126,783 3,451,573 3.32% 16.10% 65.41%
17年目 234,516 1.00% 8,208,051 3,686,089 3.35% 17.26% 69.92%
18年目 236,861 1.00% 8,290,131 3,922,950 3.38% 18.43% 74.47%
19年目 239,229 1.00% 8,373,032 4,162,179 3.42% 19.61% 79.07%
20年目 241,622 1.00% 8,456,763 4,403,801 3.45% 20.81% 83.72%
21年目 244,038 1.00% 8,541,330 4,647,839 3.49% 22.02% 88.42%
22年目 246,478 1.00% 8,626,744 4,894,317 3.52% 23.24% 93.16%
23年目 248,943 1.00% 8,713,011 5,143,260 3.56% 24.47% 97.95%
24年目 251,433 1.00% 8,800,141 5,394,693 3.59% 25.72% 102.78%
25年目 253,947 1.00% 8,888,143 5,648,640 3.63% 26.97% 107.67%
26年目 256,486 1.00% 8,977,024 5,905,126 3.66% 28.24% 112.60%
27年目 259,051 1.00% 9,066,794 6,164,178 3.70% 29.53% 117.59%
28年目 261,642 1.00% 9,157,462 6,425,819 3.74% 30.82% 122.62%
29年目 264,258 1.00% 9,249,037 6,690,078 3.78% 32.13% 127.70%
30年目 266,901 1.00% 9,341,527 6,956,978 3.81% 33.45% 132.84%

【2019年に購入した場合のシミュレーション】

期間 借地料収入 借地料上昇率 物件価値 累積借地料 借地料利回り 売却利回り 合計利回り
1年目 200,000 1.00% 11,600,000 200,000 1.72% 0.00% 1.72%
2年目 202,000 1.00% 11,716,000 402,000 1.74% 1.00% 4.47%
3年目 204,020 1.00% 11,833,160 606,020 1.76% 2.01% 7.23%
4年目 206,060 1.00% 11,951,492 812,080 1.78% 3.03% 10.03%
5年目 208,121 1.00% 12,071,007 1,020,201 1.79% 4.06% 12.86%
6年目 210,202 1.00% 12,191,717 1,230,403 1.81% 5.10% 15.71%
7年目 212,304 1.00% 12,313,634 1,442,707 1.83% 6.15% 18.59%
8年目 214,427 1.00% 12,436,770 1,657,134 1.85% 7.21% 21.50%
9年目 216,571 1.00% 12,561,138 1,873,705 1.87% 8.29% 24.44%
10年目 218,737 1.00% 12,686,749 2,092,443 1.89% 9.37% 27.41%
11年目 220,924 1.00% 12,813,617 2,313,367 1.90% 10.46% 30.41%
12年目 223,134 1.00% 12,941,753 2,536,501 1.92% 11.57% 33.43%
13年目 225,365 1.00% 13,071,170 2,761,866 1.94% 12.68% 36.49%
14年目 227,619 1.00% 13,201,882 2,989,484 1.96% 13.81% 39.58%
15年目 229,895 1.00% 13,333,901 3,219,379 1.98% 14.95% 42.70%
16年目 232,194 1.00% 13,467,240 3,451,573 2.00% 16.10% 45.85%
17年目 234,516 1.00% 13,601,912 3,686,089 2.02% 17.26% 49.03%
18年目 236,861 1.00% 13,737,931 3,922,950 2.04% 18.43% 52.25%
19年目 239,229 1.00% 13,875,311 4,162,179 2.06% 19.61% 55.50%
20年目 241,622 1.00% 14,014,064 4,403,801 2.08% 20.81% 58.77%
21年目 244,038 1.00% 14,154,204 4,647,839 2.10% 22.02% 62.09%
22年目 246,478 1.00% 14,295,747 4,894,317 2.12% 23.24% 65.43%
23年目 248,943 1.00% 14,438,704 5,143,260 2.15% 24.47% 68.81%
24年目 251,433 1.00% 14,583,091 5,394,693 2.17% 25.72% 72.22%
25年目 253,947 1.00% 14,728,922 5,648,640 2.19% 26.97% 75.67%
26年目 256,486 1.00% 14,876,211 5,905,126 2.21% 28.24% 79.15%
27年目 259,051 1.00% 15,024,973 6,164,178 2.23% 29.53% 82.67%
28年目 261,642 1.00% 15,175,223 6,425,819 2.26% 30.82% 86.22%
29年目 264,258 1.00% 15,326,975 6,690,078 2.28% 32.13% 89.80%
30年目 266,901 1.00% 15,480,245 6,956,978 2.30% 33.45% 93.42%

検証結果

以上のシミュレーションを比較すると、 相場の倍率が上昇することによって、リターンが低下している様子が分かるでしょう。

30年間の投資によって期待できる合計利回りは、2011年に倍率35倍で購入した場合には132.84%であるのに対し、2019年に倍率58倍で購入した場合には93.42%に低下しています。

2019年に購入した軍用地が、2011年に購入した軍用地の30年目の合計利回りに達するのは40年目(合計利回り135.74%)です。

倍率が上昇したことで、同じ結果を得るために10年もの期間を要するのです。

このことから、倍率の影響の大きさが良く分かります。

倍率が上昇しても買うべし!!

今後も、倍率は上昇すると考えられます。

これにより、 リターンは徐々に低下していくでしょう。

さらに、 軍用地投資の人気が非常に高いこと、それに対して売りに出される軍用地が非常に少ないことから、軍用地を購入できる機会はそれほど多くありません。

買えない期間が続いている間に倍率がどんどん上がっていき、「こんな倍率では買えない」と考える人も増えてくるはずです。

しかし、もし軍用地を買える機会に恵まれたならば、倍率が今より上昇していても、その倍率での購入を積極的に検討してみるべきです。

今後も、軍用地の人気は高まっていくと考えられます。

今の倍率が高いと感じても、倍率が下がる可能性は低く、むしろさらに上昇する可能性の方が高いです。

購入後に倍率が上昇する可能性が高いということは、高値で売却できる可能性が高いということに他なりません

もし、倍率が変わらなかったとしても、借地料は上昇を続けていくのですから、軍用地の価値は高まっていきます。

その結果、 購入時の倍率が高く感じたとしても、長期にわたって保有し続けることで、十分に満足できるリターンが期待できるのです。

以上のことから、よほど倍率が上昇しない限りは、 軍用地は「買い」の姿勢が正しいと考えるべきです。

もし、現在の倍率が適正かどうか迷った場合には、適正水準であるかどうかを検証してみましょう。

検証方法については、以下の記事で解説しています。

数年で軍用地の倍率は急上昇。倍率の上限を検証してみる

まとめ

倍率は時々刻々と変化しているため、本稿で用いた倍率ではなく、常に最新情報を参考にする必要があります。

最新の倍率が現在よりも上昇しており、高く感じたとしても、ひとまず長期的にどれくらいのリターンが期待できるかを計算してみましょう。

すると、その倍率でも「 買い」だと判断できることが多いはずです。

軍用地価格と倍率の関係、倍率がリターンに与える影響を正しく理解すれば、軍用地投資がますますスムーズになることと思います。

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