安全資産に長期投資するなら軍用地?長期国債?インフレ率を考えると見えてくる両者の差

景気後退の懸念が強くなっている今、

  • 金(ゴールド)
  • 日本国債
  • ドイツ国債
  • 米国債
  • 日本円

といった安全資産に資金が流れています。

そのため、 安全資産への投資に興味を持っている人も多いのではないでしょうか。

安全資産に投資し、なおかつリターンまで期待するとき、果たしてどの安全資産に投資するのが良いのでしょうか。

本稿では、軍用地と米国債に長期投資した場合、どちらがより大きなリターンを得られるか検証していきたいと思います。

軍用地は安全資産か?

景気後退の懸念が強まっている昨今、安全資産への関心が高まっています。

安全資産とは、将来的に得られる利益があらかじめ確定している資産や、その資産そのものが価値を失うことがない資産のことです。

やや意味を広げると、収益率に大きな変動がなく、安定性に優れている資産も安全資産に含まれます。

安全資産の代表的なものには、金、銀行預金、国債などが挙げられます。

もちろん、安全資産も全くのノーリスクではありません。

金価格はそれなりに変動しますし、国際価格も変動することがあります。

また、銀行預金には銀行破綻のリスクが、国債にはデフォルトのリスクがあります。

しかし、 金の価値が全くゼロになることはありませんし、経済的に安定している先進国の国債や、そのような国で経営が安定している銀行への預金であれば、デフォルトや破綻の可能性は極めて低いです。

特に、安全資産の対極にあるリスク資産に比べると、リスクはかなり低いと言えます。

リスク資産の代表である株は値動きが激しく、投資した会社が倒産すれば価値はゼロになってしまいます。

このように、安全資産はローリスクであることが最大の特徴です。

同じ意味において、 政府がほぼ間違いなく借地料を支払ってくれる軍用地も、安全資産であると言えます。

もっとも、軍用地投資は土地への投資であり、不動産投資の一種であるため、安全資産に分類することに違和感があります。

また、 軍用地には返還リスクがあるため、必ずしもローリスクとは言い切れません。

しかし、 返還リスクがほとんどないエリアの軍用地に投資するならば、リターンも価値も安定しているため、そのようなエリアの軍用地は間違いなく安全資産と言って良いでしょう。

このように、同じ軍用地でも安全資産と言えるものと、必ずしも安全資産とは言えないものがあります。

これは、国債でも同じことです。

国債は国債でも、デフォルトリスクのあるエマージング債は安全資産とは言えないのに対し、デフォルトリスクのほぼない米国債や日本国債は安全資産と言えます。

安全資産の投資効率は?

安全資産の意味を整理したところで、安全資産の投資効率について考えてみましょう。

景気後退懸念によって、安全資産への関心が高まっているものの、上記の通り安全資産にも色々です。

安全資産といえども、投資する以上はできるだけ効率の良いものに投資すべきです。

安全資産ごとの投資効率は、以下のように考えることができます。

銀行預金

まず、 安全資産のなかでもおすすめできない資産は、銀行預金です。

現在、銀行預金の金利は非常に低く、預けていてもほとんど増えることがありません。

安全資産と言っても、泥棒や火事などの災害から守られるという意味が強く、むしろ長期的にインフレが進むことで、相対的に現金の価値は目減りしていくのですから、銀行預金は安全とは言い難いです。

金(ゴールド)

インフレヘッジになる安全資産の代表は、金です。

金は価値がゼロになるリスクがなく、さらにインフレとともに金の価値も上昇していくため、インフレリスクにも強いのです。

しかし、 金は価値の保存手段としては優れているものの、資産を増やすためには役立ちにくいです。

世界の情勢や経済の不安が高まったタイミングでは、金が買われて価格が上昇します。

この時に売れば、キャピタルゲインが得られます。

とはいえ、キャピタルゲインが得られることは、金投資の特徴でもなければ目的でもありません。

また、 再び景気が盛り上がれば金は売られて価格が下がるのですから、値上がりの期待と値下がりの危険が同時に存在しており、変動リスクがあります。

このため、金投資は効率が良いとは言い難いでしょう。

国債

経済的に安定している、先進国の債券は安全資産であり、それなりにリターンも期待できます。

景気後退局面では金が盛んに買われるイメージがあるかもしれませんが、債券も非常によく買われます。

価値の保存が確実な金が買われる一方で、変動リスクを避けつつ安全性を確保し、なおかつ少しでもリターンを得るために、債券が買われるのです。

デフォルトリスクがほぼない、安全資産としての国債として有名なものは、

  • 日本国債
  • ドイツ国債
  • 米国債

などです。

しかし、 2019年8月30日現在、日本国債とドイツ国債はどちらも利回りがマイナス圏にあります。

つまり、 購入すればマイナス金利分だけ損をするということです。

投資機関や金融機関であれば、売買に時間がかからない(現金の価値が下がらないうちに素早く買える)、金よりも変動リスクが低い、担保価値が高いなどの理由から、マイナス金利の国債を買うこともあります。

しかし、 安全資産への長期投資によって、それなりのリターンを期待する個人にとっては、マイナス金利の国債は投資対象にはなりません。

利回りがプラス圏にある米国債が、投資効率もそれなりに期待できる安全資産だと言えるでしょう。

軍用地

上記の通り、 基地の返還リスクが低い軍用地も、安全資産と言えます。

借地料によってリターンをもたらすのは、信用の高い日本政府であり、滞納リスクなどはほとんど考えられません。

また、 土地である限り価値がゼロになることはなく、さらにその土地が基地用地であるかぎり借地料が得られ続けます。

インフレに伴って価値が上昇するため、インフレにも強いです(詳しくは後述)。

このことから、 軍用地は投資効率も期待しながら、価値の保存も期待できる安全資産であると言えます。

検証:軍用地vs米国債

安全資産のそれぞれの特徴と投資効率を見ていくと、ローリスクな安全資産に長期投資し、それなりのリターンも期待するならば、プラス利回りの国債への投資、もしくは軍用地投資がベストな選択になると考えられます。

そこで、投資効率が期待できる債券の代表である米国債と、軍用地への長期投資の効率を比較してみましょう。

本稿の比較では、以下のように条件を設定します。

  • 投資期間は30年(軍用地に投資し30年間保有する場合と、米国債30年に投資した場合を比較。米国債は利付債(定期的に利払いを受ける債券)とする)
  • インフレ率は年平均2%(日本政府が掲げるインフレターゲット)
  • 軍用地の借地料の上昇率は年平均2.5%
  • 投資開始時利回りは、軍用地が1.67%(借地料20万円・取得価格1200万円)、米国債が2%(2019年8月30日の利回り)
  • 軍用地の相場の倍率は変わらない
  • 30年後、軍用地は売却額と累積借地料の合計による利回りを算出し、米国債は償還された元本と累積利払い収入の合計による利回りを算出し、比較する(いずれもインフレを考慮し、修正後の価値に基づいて利回りを算出する)

この条件で、軍用地と米国債に長期投資すると、以下のような結果となります。

【軍用地投資の場合】

期間 借地料収入 借地料上昇率 インフレ率 修正後借地料 軍用地価格 相場の倍率 累積借地料 借地料利回り 売却利回り 合計利回り
1年目 200,000 12,000,000 60 200,000 1.67% 0.00% 1.67%
2年目 200,000 2.50% 2.00% 201,000 12,060,000 60 401,000 1.69% 0.50% 3.84%
3年目 201,000 2.50% 2.00% 202,005 12,120,300 60 603,005 1.70% 1.00% 6.03%
4年目 202,005 2.50% 2.00% 203,015 12,180,902 60 806,020 1.71% 1.51% 8.22%
5年目 203,015 2.50% 2.00% 204,030 12,241,806 60 1,010,050 1.72% 2.02% 10.43%
6年目 204,030 2.50% 2.00% 205,050 12,303,015 60 1,215,100 1.73% 2.53% 12.65%
7年目 205,050 2.50% 2.00% 206,076 12,364,530 60 1,421,176 1.74% 3.04% 14.88%
8年目 206,076 2.50% 2.00% 207,106 12,426,353 60 1,628,282 1.75% 3.55% 17.12%
9年目 207,106 2.50% 2.00% 208,141 12,488,485 60 1,836,423 1.76% 4.07% 19.37%
10年目 208,141 2.50% 2.00% 209,182 12,550,927 60 2,045,605 1.76% 4.59% 21.64%
11年目 209,182 2.50% 2.00% 210,228 12,613,682 60 2,255,833 1.77% 5.11% 23.91%
12年目 210,228 2.50% 2.00% 211,279 12,676,750 60 2,467,112 1.78% 5.64% 26.20%
13年目 211,279 2.50% 2.00% 212,336 12,740,134 60 2,679,448 1.79% 6.17% 28.50%
14年目 212,336 2.50% 2.00% 213,397 12,803,834 60 2,892,845 1.80% 6.70% 30.81%
15年目 213,397 2.50% 2.00% 214,464 12,867,854 60 3,107,310 1.81% 7.23% 33.13%
16年目 214,464 2.50% 2.00% 215,537 12,932,193 60 3,322,846 1.82% 7.77% 35.46%
17年目 215,537 2.50% 2.00% 216,614 12,996,854 60 3,539,460 1.83% 8.31% 37.80%
18年目 216,614 2.50% 2.00% 217,697 13,061,838 60 3,757,158 1.84% 8.85% 40.16%
19年目 217,697 2.50% 2.00% 218,786 13,127,147 60 3,975,943 1.84% 9.39% 42.53%
20年目 218,786 2.50% 2.00% 219,880 13,192,783 60 4,195,823 1.85% 9.94% 44.91%
21年目 219,880 2.50% 2.00% 220,979 13,258,747 60 4,416,802 1.86% 10.49% 47.30%
22年目 220,979 2.50% 2.00% 222,084 13,325,041 60 4,638,886 1.87% 11.04% 49.70%
23年目 222,084 2.50% 2.00% 223,194 13,391,666 60 4,862,081 1.88% 11.60% 52.11%
24年目 223,194 2.50% 2.00% 224,310 13,458,624 60 5,086,391 1.89% 12.16% 54.54%
25年目 224,310 2.50% 2.00% 225,432 13,525,917 60 5,311,823 1.90% 12.72% 56.98%
26年目 225,432 2.50% 2.00% 226,559 13,593,547 60 5,538,382 1.91% 13.28% 59.43%
27年目 226,559 2.50% 2.00% 227,692 13,661,515 60 5,766,074 1.92% 13.85% 61.90%
28年目 227,692 2.50% 2.00% 228,830 13,729,822 60 5,994,904 1.93% 14.42% 64.37%
29年目 228,830 2.50% 2.00% 229,975 13,798,471 60 6,224,879 1.94% 14.99% 66.86%
30年目 229,975 2.50% 2.00% 231,124 13,867,464 60 6,456,003 1.95% 15.56% 69.36%
全期間の年平均合計利回り 2.31%

【米国債30年の場合】

期間 利払い収入 インフレ率 修正後利払い収入 償還予定額 償還時価値 累積利払い収入 実質利回り 償還時最終利回り
1年目 240,000 12,000,000 12,000,000 240,000 2.00%
2年目 240,000 2.00% 235,200 12,000,000 11,760,000 475,200 1.96%
3年目 240,000 2.00% 230,496 12,000,000 11,524,800 705,696 1.92%
4年目 240,000 2.00% 225,886 12,000,000 11,294,304 931,582 1.88%
5年目 240,000 2.00% 221,368 12,000,000 11,068,418 1,152,950 1.84%
6年目 240,000 2.00% 216,941 12,000,000 10,847,050 1,369,891 1.81%
7年目 240,000 2.00% 212,602 12,000,000 10,630,109 1,582,494 1.77%
8年目 240,000 2.00% 208,350 12,000,000 10,417,506 1,790,844 1.74%
9年目 240,000 2.00% 204,183 12,000,000 10,209,156 1,995,027 1.70%
10年目 240,000 2.00% 200,099 12,000,000 10,004,973 2,195,126 1.67%
11年目 240,000 2.00% 196,097 12,000,000 9,804,874 2,391,224 1.63%
12年目 240,000 2.00% 192,176 12,000,000 9,608,776 2,583,399 1.60%
13年目 240,000 2.00% 188,332 12,000,000 9,416,601 2,771,731 1.57%
14年目 240,000 2.00% 184,565 12,000,000 9,228,269 2,956,297 1.54%
15年目 240,000 2.00% 180,874 12,000,000 9,043,703 3,137,171 1.51%
16年目 240,000 2.00% 177,257 12,000,000 8,862,829 3,314,427 1.48%
17年目 240,000 2.00% 173,711 12,000,000 8,685,573 3,488,139 1.45%
18年目 240,000 2.00% 170,237 12,000,000 8,511,861 3,658,376 1.42%
19年目 240,000 2.00% 166,832 12,000,000 8,341,624 3,825,209 1.39%
20年目 240,000 2.00% 163,496 12,000,000 8,174,791 3,988,704 1.36%
21年目 240,000 2.00% 160,226 12,000,000 8,011,296 4,148,930 1.34%
22年目 240,000 2.00% 157,021 12,000,000 7,851,070 4,305,952 1.31%
23年目 240,000 2.00% 153,881 12,000,000 7,694,048 4,459,833 1.28%
24年目 240,000 2.00% 150,803 12,000,000 7,540,167 4,610,636 1.26%
25年目 240,000 2.00% 147,787 12,000,000 7,389,364 4,758,423 1.23%
26年目 240,000 2.00% 144,832 12,000,000 7,241,577 4,903,255 1.21%
27年目 240,000 2.00% 141,935 12,000,000 7,096,745 5,045,190 1.18%
28年目 240,000 2.00% 139,096 12,000,000 6,954,810 5,184,286 1.16%
29年目 240,000 2.00% 136,314 12,000,000 6,815,714 5,320,600 1.14%
30年目 240,000 2.00% 133,588 12,000,000 6,679,400 5,454,188 1.11% 1.11%
全期間の年平均利回り 0.04%

債券はインフレリスクに弱い

投資を開始する時点では、軍用地投資の利回りは1.67%、米国債は2%であるため、米国債のほうが魅力的に感じるかもしれません。

しかし、 上記の表から明らかな通り、最終的なリターンでは軍用地投資が圧倒的に上回っています。

軍用地投資の推移では、相場の倍率が全く変わっていませんが、実際には倍率は上昇していくため、両者の差はもっと大きくなるはずです。

米長期国債の投資効率が悪い理由は、インフレの影響を大きく受けるためです。

インフレが続く中で長期国債に投資した場合には、毎回定額で利払いを受けられるものの、インフレによって実質的な価値が落ちていき、長期的にリターンを大きく損なうことになるのです。

インフレリスクが国債投資に与える影響は、歴史的にも証明されています。

例えば、アメリカの歴史において、インフレ率が年平均0.1%だった1802~1870年の米長期国債の年平均利回りは5.1%でしたが、インフレ率が年平均7.0%だった1966~1981年の米長期国債の年平均利回りは-3.9%となっています。

インフレ率が高くなるほど、利払い収入の実質的な価値は大きく減少します。

それが長期に及ぶと、当初の確定利回りによって価値の減少を支えられず、利回りがマイナスに転落することもあり得るのです。

軍用地投資はインフレリスクに強い

米国債とは違い、軍用地はインフレに非常に強いです。

まず、軍用地はあくまでも土地です。

物価が上昇すれば、土地の価値も上昇していきます。

インフレによって物価が上がり続けているのに、土地の価値は変わらないままということはあり得ません。

もっとも、軍用地と一般的な土地では、価値の上がり方が異なります。

一般的な土地は、インフレに連動して価値が上がるだけではなく、その土地が住宅地や商業地としての需要が高まった場合に、地価が大きく上昇します。

しかし、 軍用地は軍事施設に使われている土地であり、返還されるまで開発は不可能です。

そのため、インフレによって地価が上昇することはあっても、返還されない限り、開発によって地価が上昇することはありません。

とはいえ、 インフレに伴って地価が上昇するのですから、軍用地はインフレリスクに強い資産だと言えます。

インフレを受けても実質的な利回りが低下することはなく、むしろ利回りは上昇していきます。

上記の比較で、借地料の上昇率を年平均2.5%とした理由も、借地料の上昇率がインフレ率を上回るためです。

近年の借地料上昇率は1~2%程度で推移していますが、これもインフレ率を上回る上昇率です。

このことは、沖縄が日本に復帰し、借地料が支払われ始めた1972年から最近までの借地料の上昇率と、同期間のインフレ率の推移を比較すれば明らかです。

(以下の表の借地料予算は、米軍基地の借地料予算)

 

借地料予算(百万円) 借地料上昇率 消費者物価指数 インフレ率
1972 12,315 0.00% 35.2 5.07%
1973 17,715 43.85% 39.3 11.65%
1974 25,538 44.16% 48.4 23.16%
1975 25,951 1.62% 54.0 11.57%
1976 25,912 -0.15% 59.1 9.44%
1977 25,245 -2.57% 63.9 8.12%
1978 27,617 9.40% 66.7 4.38%
1979 29,368 6.34% 69.1 3.60%
1980 31,116 5.95% 74.5 7.81%
1981 33,773 8.54% 78.1 4.83%
1982 34,507 2.17% 80.3 2.82%
1983 35,468 2.78% 81.8 1.87%
1984 36,772 3.68% 83.6 2.20%
1985 38,314 4.19% 85.4 2.15%
1986 39,932 4.22% 85.9 0.59%
1987 39,402 -1.33% 85.9 0.00%
1988 40,671 3.22% 86.5 0.70%
1989 42,650 4.87% 88.5 2.31%
1990 44,726 4.87% 91.2 3.05%
1991 47,031 5.15% 94.3 3.40%
1992 51,690 9.91% 95.8 1.59%
1993 55,140 6.67% 97.1 1.36%
1994 57,707 4.66% 97.7 0.62%
1995 60,317 4.52% 97.6 -0.10%
1996 63,043 4.52% 97.7 0.10%
1997 66,210 5.02% 99.5 1.84%
1998 68,245 3.07% 100.1 0.60%
1999 70,484 3.28% 99.8 -0.30%
2000 72,811 3.30% 99.1 -0.70%
2001 75,064 3.09% 98.4 -0.71%
2002 76,451 1.85% 97.5 -0.91%
2003 76,568 0.15% 97.2 -0.31%
2004 76,991 0.55% 97.2 0.00%
2005 77,542 0.72% 96.9 -0.31%
2006 77,670 0.17% 97.2 0.31%
2007 77,682 0.02% 97.2 0.00%
2008 78,375 0.89% 98.6 1.44%
2009 79,090 0.91% 97.2 -1.42%
2010 79,295 0.26% 96.5 -0.72%
2011 79,849 0.70% 96.3 -0.21%
2012 81,125 1.60% 96.2 -0.10%
2013 83,240 2.61% 96.6 0.42%
2014 84,514 1.53% 99.2 2.69%
2015 84,798 0.34% 100.0 0.81%
2016 85,843 1.23% 99.9 -0.10%
2017 86,662 0.95% 100.4 0.50%

1年ごとにみれば、借地料の上昇率はインフレ率を下回ることもあります。

しかし、 軍用地投資は長期投資が前提となるため、まとまった期間ごとに見て、インフレ率を上回っていればなんら問題ありません。

以下のように、まとまった期間ごとの借地料の上昇率を見ると、常にインフレ率を上回っていることが分かります。

期間 上昇率
借地料 インフレ率
1972-1981 174.24% 121.88%
1982-1991 36.29% 17.43%
1992-2001 45.22% 2.71%
2002-2011 4.44% -1.23%
2012-2017 7.06% 4.26%

結論:長期国債投資が軍用地投資に勝つのは困難

上記の条件で、米国債投資で軍用地投資と同じ利回りを得るためには、投資時点での利回りが高いタイミングで投資する、もしくはインフレリスクをカバーできる設計のものに投資する必要があります。

具体的には、

  • 投資時点の確定利回りが5.25%の利付債に投資する
  • 投資時点の利回りが2.31%の物価連動債(インフレ率に応じて利回りが変わる債券)に投資する
  • 投資時点の確定利回りが1.77%のゼロ・クーポン債(毎回の利払いを受け取らないかわりに、額面価格から割り引いた価格で購入でき、満期時に額面価格が償還される債券。
    実質的には、定期的に受け取る利払いを再投資し、複利運用した結果が得られる)に投資する
  • 投資時点の確定利回りが2.31%の米国短期国債(残存期間1ヶ月以上1年未満の国債。短期国債利回りはインフレ率に連動する)に、30年間にわたって投資し続ける

など、様々なパターンが考えられます。

ただし、確定利回り5.25%の利付債や、確定利回り1.77%のゼロ・クーポン債に投資しても、インフレ率が上昇すれば軍用地投資の利回りを下回ります。

これを避けるためには、投資時点でより高い利回りを確保する必要がありますが、長期国債の利回りは、インフレ率に連動する短期国債利回りから大きく乖離するものではなく、インフレリスクを回避することは困難です。

また、インフレターゲットは必ず達成されるとは限らず、景気の影響によって低下することもあれば、上昇することもあります。

このため、 安定した利回りを得るためには、物価連動債や短期国債に投資するのがベストです。

しかし、 物価連動債や短期国債によって長期投資した場合でも、期待できる利回りはインフレ率に連動しており、インフレ率を上回るリターンは得られません。

当然、インフレ率が低ければリターンは少なくなり、インフレ率がマイナスになればリターンを得るどころか損失が発生します。

これに対して、 軍用地の借地料上昇率は常にインフレ率を上回ってきました。

つまり、 インフレ率がどのような推移になろうとも、借地料の上昇率はそれを上回り、長期国債投資よりも常に大きなリターンが期待できるのです。

また、 インフレ率がマイナスになったとしても、借地料の上昇率がマイナスになることは考えにくいです。

なぜならば、 借地料を減額すれば軍用地主から反発され、米軍基地の運営に支障をきたし、安保や国防の問題に発展しかねないからです。

政府は、そのような危険を犯すことを嫌い、いくらかでも借地料を増額するのが普通です。

上記のように、 インフレリスクを考慮しながら軍用地投資と長期国債投資を比較すれば、軍用地投資のほうが優れていると言えます。

まとめ

本稿の解説によって、安全資産としての軍用地の魅力をお伝えできたと思います。

ただし、上記の比較では、 投資した軍用地が返還されることなく、30年にわたって借地料が得られ続けることが前提となっています。

嘉手納飛行場や、航空自衛隊那覇基地などがそれにあたります。

返還によって借地料が得られなくなるリスク、さらに返還後の地価が上昇しないリスクを考慮するならば、長期国債の利回りに劣る可能性もあります。

返還リスクのある軍用地に投資する人は、本稿の比較に加えて、返還後の予測まで含めて考える必要があるので、その点には注意してほしいと思います。

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