軍用地の借地料は上昇率が鈍い。それでも軍用地投資の魅力は増していく

軍用地投資の大きな魅力のひとつに、借地料の増額があります。

政府はこれまで、借地料の増額を続けており、これによって軍用地投資の利回りが上昇しています。

しかしながら、 最近では借地料の上昇が鈍く、利回りへの影響も低下しています。

このような状況でも、 軍用地投資にメリットはあるのでしょうか。

本稿では、借地料の推移、今後の見通し、借地料の上昇率が鈍くても軍用地投資の魅力が損なわれない理由について解説していきます。

借地料が上昇する理由

軍用地投資で得られる主なリターンは、政府が支払う借地料です。

借地料は、1972年に沖縄県が日本に復帰を果たしてから支払いが始まったものですが、これまで 一度も支払われなかったことはなく、抜群の安定性を誇っています。

さらに、借地料はほぼ毎年のように増額され続けてきました。

政府は毎年、借地料の予算を組む際に軍用地主らと交渉しており、軍用地主はできるだけ借地料が増額されるように交渉します。

もし、借地料の増額を渋って軍用地主にヘソを曲げられてしまうと、米軍基地や自衛隊基地の円滑な運営に支障をきたします。

沖縄は、 極東アジア方面における国防の要衝であるため、政府は軍用地主とトラブルを起こすことなく、良好な関係を保つことが欠かせません。

増額の最大の目的はここにあります。

実際に、米軍基地の借地料の推移をみても、 以下のように安定した増額が続いています。

借地料予算(百万円) 上昇率
1972 12,315 0.00%
1973 17,715 43.85%
1974 25,538 44.16%
1975 25,951 1.62%
1976 25,912 -0.15%
1977 25,245 -2.57%
1978 27,617 9.40%
1979 29,368 6.34%
1980 31,116 5.95%
1981 33,773 8.54%
1982 34,507 2.17%
1983 35,468 2.78%
1984 36,772 3.68%
1985 38,314 4.19%
1986 39,932 4.22%
1987 39,402 -1.33%
1988 40,671 3.22%
1989 42,650 4.87%
1990 44,726 4.87%
1991 47,031 5.15%
1992 51,690 9.91%
1993 55,140 6.67%
1994 57,707 4.66%
1995 60,317 4.52%
1996 63,043 4.52%
1997 66,210 5.02%
1998 68,245 3.07%
1999 70,484 3.28%
2000 72,811 3.30%
2001 75,064 3.09%
2002 76,451 1.85%
2003 76,568 0.15%
2004 76,991 0.55%
2005 77,542 0.72%
2006 77,670 0.17%
2007 77,682 0.02%
2008 78,375 0.89%
2009 79,090 0.91%
2010 79,295 0.26%
2011 79,849 0.70%
2012 81,125 1.60%
2013 83,240 2.61%
2014 84,514 1.53%
2015 84,798 0.34%
2016 85,843 1.23%
2017 86,662 0.95%
全期間合計 74347 603.71%

借地料の増額がリターンを高める

上記の表は、政府が借地料のために引き当てた年間の予算と、上昇率の推移を計算したものです。

時折、 予算が減っている年もあります。

しかし、これは基地の返還によって借地料を支払う軍用地の面積が減少しているケースもあるため、必ずしも軍用地の利回りが低下しているとは限りません。

なによりも、1972年から2017年までの全期間では、借地料に充てられる予算は603.71%も上昇しています。

借地料の増額は利回りの上昇を意味します。

借地料が増額されれば、借地料によってもたらされる利回りが高まるためです。

また、軍用地の取引価格は「 年間の借地料×相場の倍率」で計算されます。

相場の倍率は近年大幅に上昇しており、軍用地の取引価格も高くなっています。

しかし、もし倍率が変わらなかったとしても、借地料が上昇すれば軍用地の価値は高まり、多くの売却益が得られます。

このように、 毎年欠かさず借地料が増額されることによって、軍用地投資のリターンは高まっていくのです。

最近は上昇が鈍い

しかし、最近は借地料の上昇が鈍くなっています。

これは、政府の財政状況が大きく関係しています。

現在、日本経済の成長率は低迷しており、少子高齢化をはじめ多くの問題を抱えています。

これによって、政府の財政は逼迫しています。

財政難の状況では、借地料に充てられる予算もおのずと限られてくるため、上昇率はどうしても低くなってしまいます。

政府の財政が借地料の上昇に響いていることは、期間別の借地料上昇率と、日本の経済成長率を比較すると良く分かります。

期間 上昇率
借地料 GDP
1972-1981 174.24% 171.15%
1982-1991 36.29% 71.50%
1992-2001 45.22% 2.51%
2002-2011 4.44% -5.65%
2012-2017 7.06% 10.14%

上記の表によって、借地料の上昇率と経済成長率の関係を、以下のように解釈できます。

  • 1972年から1981年

いざなぎ景気が終わったものの、高度経済成長の余勢を駆って経済成長が続き、それに伴って借地料もほぼ同レベルに上昇している。

  • 1982年から1991年

低成長の時代に突入し、日米貿易摩擦の激化や円高不況などに見舞われるが、低金利政策によってバブル景気が生まれ、経済成長が続く。

しかし、1975年から赤字国債の発行が始まっているように、恒常的な財政赤字はすでに始まっており、借地料の大幅な増額は難しくなってきた。

  • 1992年から2001年

1992年にバブルが崩壊し、経済は停滞する。

10年間での借地料の上昇率は、以前の10年間を上回っている。

しかし、上昇率を年単位に見れば、この10年間の上昇率は年々低下している。

バブル崩壊の影響が顕著に表れており、ここから借地料の上昇率の低迷が始まったと言える。

  • 2002年から2011年

公的資金の注入によってバブル崩壊の混乱は鎮静化したものの、ITバブルの崩壊やサブプライムローンに端を発する世界金融危機の影響を受け、この期間の経済成長率はマイナスに転落する。

借地料の上昇率も、10年間で4.44%とかなり縮小している。

  • 2012年から2017年

安倍内閣の経済政策によって、日本経済は息を吹き返し、経済成長率もマイナスから脱する。

借地料の上昇率もやや回復している。

しかし、 東日本大震災の影響により、2012年、軍用地の賃貸借契約更新に伴う借地料の大幅な増額もされず、また財政の悪化は続いていることから、引き続き借地料の上昇は鈍い。

今後も大幅な上昇は期待できない

現在、 日本の置かれている状況は深刻です。

人口は長期的に減少を続けるでしょう。

単なる人口減少ではなく、同時に少子高齢化も止まらないため、生産年齢人口に対する非生産年齢人口の割合が増え続けています。

そのため、 社会保障費はぐんぐん重くなっています。

政府は、このジリ貧ともいえる状況から抜け出すべく、

  • 生産性の向上を促し
  • 外国人労働者の受け入れを拡大
  • 高年齢者の労働を促進
  • 女性の活躍を促進

など様々な取り組みを実施しています。

とはいえ、 一朝一夕に好転するとは考えにくいです。

追い打ちをかけるように、米中貿易摩擦が長期化し、世界経済は徐々に減速しつつあります。

したがって、 政府の財政は今後も長期的に困難な状況が続き、借地料を大幅に増額することは難しいと考えられます。

それでも魅力的な軍用地投資

しかし、軍用地投資の魅力が損なわれることはありません。

これまで借地料が増額され続けてきた歴史や、借地料を増額しなければ軍用地主との関係が悪化する可能性が高いことなどから、 今後も借地料はわずかずつでも上昇を続けると思います。

このため、軍用地投資によって安定したリターンが得られること、そして 徐々にリターンが向上していくと考えてよいでしょう。

また、政府の財政難の背景には、日本経済の行き詰まりがあります。

日本経済が行き詰れば、人々は将来に不安を抱きます。

8月28日付の日本経済新聞朝刊でも、公的年金制度の検証結果が報じられていますが、将来への不安を煽るに十分な内容でした。

検証の結果、経済成長率がゼロの場合、 現在20歳の人が今の65歳と同水準の年金をもらうためには、68歳9ヶ月まで働かなければならならないことが明らかとなりました。

年金制度の改革が急務であることは疑いがありませんが、いずれにしても、 個々にとって将来への備えが重要となっています。

このような流れのなかで、軍用地投資の魅力は高まっていくでしょう。

借地料の上昇が鈍く、それほど多くの利回りが期待できなかったとしても、長期投資によって老後の経済を安定させるには十分すぎるほどの効果を持っています。

例えば、現在30歳の人が、購入時点での借地料が年間20万円、取得価格は1160万円、借地料による利回りが1.72%の軍用地を購入し、借地料が年間0.5%ずつ増額された場合、65歳まで軍用地を保有し続けると、以下のような結果となります。

期間 借地料収入 累積借地料 借地料利回り
1年目 200,000 200,000 1.72%
2年目 201,000 401,000 1.73%
3年目 202,005 603,005 1.74%
4年目 203,015 806,020 1.75%
5年目 204,030 1,010,050 1.76%
6年目 205,050 1,215,100 1.77%
7年目 206,076 1,421,176 1.78%
8年目 207,106 1,628,282 1.79%
9年目 208,141 1,836,423 1.79%
10年目 209,182 2,045,605 1.80%
11年目 210,228 2,255,833 1.81%
12年目 211,279 2,467,112 1.82%
13年目 212,336 2,679,448 1.83%
14年目 213,397 2,892,845 1.84%
15年目 214,464 3,107,310 1.85%
16年目 215,537 3,322,846 1.86%
17年目 216,614 3,539,460 1.87%
18年目 217,697 3,757,158 1.88%
19年目 218,786 3,975,943 1.89%
20年目 219,880 4,195,823 1.90%
21年目 220,979 4,416,802 1.90%
22年目 222,084 4,638,886 1.91%
23年目 223,194 4,862,081 1.92%
24年目 224,310 5,086,391 1.93%
25年目 225,432 5,311,823 1.94%
26年目 226,559 5,538,382 1.95%
27年目 227,692 5,766,074 1.96%
28年目 228,830 5,994,904 1.97%
29年目 229,975 6,224,879 1.98%
30年目 231,124 6,456,003 1.99%
31年目 232,280 6,688,283 2.00%
32年目 233,441 6,921,725 2.01%
33年目 234,609 7,156,333 2.02%
34年目 235,782 7,392,115 2.03%
35年目 236,961 7,629,076 2.04%

この表のように、35年が経過した65歳時点において、年間の借地料は23万6961円、利回りは2.04%となっています。

それまでに得られた借地料を積み立てていれば762万9076円です。

さらに、軍用地の価格は借地料と相場の倍率を掛け合わせて算出します。

このため、購入時点では1160万円であった軍用地が、35年後には1374万3738円に値上がりしています。

もちろん、相場の倍率は長期的に上昇していくと考えられるため、これ以上の値上がりも十分に期待できます。

このように、 軍用地に長期投資した場合、老後の経済に大きくプラスになることが期待できます。

以上のことから、経済成長が低迷し、政府の財政は困難を窮めていく中で、借地料の上昇は鈍くなっているものの、これによって必ずしも軍用地の魅力を損なわれるわけではありません。

むしろ、 将来の不安が軍用地投資の魅力をさらに高め、人気を押し上げるきっかけとなる可能性も高いのです。

したがって、借地料の上昇率は低下しているものの、軍用地は間違いなく魅力的な投資対象と言えるでしょう。

まとめ

これまで、毎年のように借地料の増額が続いてきました。

借地料の上昇率は政府の財政と密接な関係があり、政府が財政難に陥ってからというもの、 大幅な増額は困難になっています。

しかし、 これによって軍用地投資の魅力が損なわれることはなく、むしろ魅力が高まっていくことでしょう。

借地料があまり増えなくなっている、利回りもあまり上昇しない、だから軍用地投資はたいして魅力的ではない・・・

と短絡的に考えることなく、 積極的に投資することをおすすめします。

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