軍用地を融資で買うと赤字になる。それでも効率が良いと断言できる理由

軍用地投資の際、必要となる資金を融資によってカバーしたいと考える人は多いと思います。

しかし近年では、 軍用地の利回りは融資金利を下回るのが普通になっており、購入からローンの完済まで、赤字が続くことになります。

赤字になるとわかっているならば、投資するべきではないと考えるかもしれません。

しかし軍用地投資は、たとえ赤字になっても投資する価値があります。

本稿では、軍用地投資と融資の関係、赤字になっても投資するメリット、有利な条件で融資を受ける方法について解説していきます。

軍用地投資と銀行融資

軍用地への投資は、不動産投資における土地への投資の一種です。

一般的に、土地の購入のためにはある程度まとまった資金が必要になるため、軍用地投資でも同じように多額の資金が必要となるイメージがあります。

しかし、 軍用地の価格はさまざまです。

まとまった広さの軍用地が数千万円、1億円以上といった価格で売りに出されることもありますが、小規模な軍用地が数百万円で売りに出されることもあります。

これは、軍用地も一般的な土地と同じように分筆することができ、何らかのタイミングで資金を必要としている軍用地主が切り売りすることがあるためです。

具体的には、 軍用地を相続する人が、相続税の支払いのために相続税分だけ切り売りするケースがしばしば見られます。

しかし、 最低でも数百万円のまとまった資金が必要になるため、融資を受けて軍用地を購入する人も多いものです。

数年前、不動産投資が活況を呈していた頃であれば、非常に低い金利で融資を受けることができました。

特に軍用地は、政府が軍用地主に対して支払う借地料が安定した返済原資となるため、一般的なアパートローンよりも低い金利で融資を受けられることも多かったといえます。

例えば、借地料による利回りが3%、銀行融資の金利が1.5%であれば、借地料で元利返済を全てカバーすることができます。

かつての融資ではこのようなケースも多く、フルローンやオーバーローンで融資を受けても、借地料を返済に充て、なおかつ黒字になっていたのです。

融資を受けて軍用地に投資すれば赤字に

しかし 現在、金融庁の監督も厳しくなったことで、不動産投資に関する融資の金利は軒並み高くなっており、軍用地も例外ではありません。

特に、軍用地投資で融資を受けるとなると、多くの場合、沖縄銀行や琉球銀行といった沖縄の地銀・信金を利用することになります。

地銀や信金は、都市銀行に比べて融資金利が高いため、軍用地投資のための融資でも金利が高くなる傾向があります。

また、軍用地投資の人気の高まりから、軍用地の取引価格は年々上昇しています。

軍用地の借地料は年々上昇しているものの、取引価格の上昇率がそれを上回っているため、軍用地の利回りも低下傾向にあります。

近年では、軍用地の利回りは2%弱になるのが一般的です。

これに対し、融資金利は2.5~3%くらいを見込んでおくべきですから、ローン返済が借地料を上回り、毎年赤字になってしまいます。

赤字を避けるためには、頭金を多めに支払って返済額を圧縮する必要があります。

しかし、 そもそも融資を受ける最大の目的は、手元資金が少ない状態で軍用地に投資するためなのですから、多額の頭金を支払うのは本末転倒です。

それよりも、 赤字になっても軍用地に投資するメリットを理解し、赤字を受け入れる姿勢を持つべきでしょう。

融資を受けた場合のシミュレーション

具体的に、融資を受けて軍用地を購入した際の収支がどのようになるか、シミュレーションしてみましょう。

軍用地の取引価格は、借地料に対して、購入する軍用地の人気によって決められる倍率を掛け合わせて算出されます。

エリアごとの倍率は、そのエリアの軍用地が返還される可能性などから決められるため、返還の可能性が低く、人気が高いエリアほど倍率が高まります。

ここでは、年間の借地料が20万円、倍率は60倍と仮定し、購入価格は1200万円とします。

したがって、利回りは約1.66%です。

融資条件は金利を3%、融資期間を25年、頭金として3割を負担し、借入総額は840万円とします。

借地料は毎年増額されます。

2011年から2018年まで、返還リスクの低いとされる嘉手納飛行場の借地料は年平均1.8%ペースで増額されているため、ここでは毎年1.5%増額するものとします。

以上の条件で軍用地に投資すると、以下のような結果となります。

期間 借地料収入 上昇率 物件価値 元利返済額 返済余裕率 税引前CF
1年目 200,000 1.50% 12,000,000 482,394 0.41 -282,394
2年目 203,000 1.50% 12,180,000 482,394 0.42 -279,394
3年目 206,045 1.50% 12,362,700 482,394 0.43 -276,349
4年目 209,136 1.50% 12,548,141 482,394 0.43 -273,258
5年目 212,273 1.50% 12,736,363 482,394 0.44 -270,121
6年目 215,457 1.50% 12,927,408 482,394 0.45 -266,937
7年目 218,689 1.50% 13,121,319 482,394 0.45 -263,705
8年目 221,969 1.50% 13,318,139 482,394 0.46 -260,425
9年目 225,299 1.50% 13,517,911 482,394 0.47 -257,096
10年目 228,678 1.50% 13,720,680 482,394 0.47 -253,716
11年目 232,108 1.50% 13,926,490 482,394 0.48 -250,286
12年目 235,590 1.50% 14,135,387 482,394 0.49 -246,804
13年目 239,124 1.50% 14,347,418 482,394 0.50 -243,270
14年目 242,710 1.50% 14,562,629 482,394 0.50 -239.684
15年目 246,351 1.50% 14,781,069 482,394 0.51 -236,043
16年目 250,046 1.50% 15,002,785 482,394 0.52 -232,348
17年目 253,797 1.50% 15,227,827 482,394 0.53 -228,597
18年目 257,604 1.50% 15,456,244 482,394 0.53 -224,790
19年目 261,468 1.50% 15,688,088 482,394 0.54 -220,926
20年目 265,390 1.50% 15,923,409 482,394 0.55 -217,004
21年目 269,371 1.50% 16,162,260 482,394 0.56 -213,023
22年目 273,412 1.50% 16,404,694 482,394 0.57 -208,983
23年目 277,513 1.50% 16,650,764 482,394 0.58 -204,881
24年目 281,675 1.50% 16,900,526 482,394 0.58 -200,719
25年目 285,901 1.50% 17,154,034 482,394 0.59 -196,494
26年目 290,189 1.50% 17,411,344 0 290,189
27年目 294,542 1.50% 17,672,514 0 294,542
28年目 298,960 1.50% 17,937,602 0 298,960
29年目 303,444 1.50% 18,206,666 0 303,444
30年目 307,996 1.50% 18,479,766 0 307,996
31年目 312,616 1.50% 18,756,963 0 312,616
32年目 317,305 1.50% 19,038,317 0 317,305
33年目 322,065 1.50% 19,323,892 0 322,065
34年目 326,896 1.50% 19,613,750 0 326,896
35年目 331,799 1.50% 19,907,956 0 331,799

赤字でも投資して良い理由

まず注目したいのが、毎年の元利返済額が48万2394円であるのに対し、借地料がそれを大きく下回り、キャッシュフローが赤字になっていることです。

毎年借地料が増額されることによって、赤字は徐々に縮小していくものの、ローンを完済する25年目まで赤字が解消されることはありません。

これを見て、軍用地投資と融資は相性が悪いと考える人もいると思います。

一般的な不動産投資では、賃料の範囲内でローンを返済していくものであり、赤字の不動産には投資しないものですから、そう思うのも仕方がありません。

しかし 軍用地投資は、このように赤字を抱えたとしても、投資に値する十分なメリットを備えています。

完済後に高い利回りを期待できる

確かに、完済するまでは赤字が解消されず、出費がかさみますが、完済後に注目するとどうでしょうか。

購入当初、この軍用地の利回りは約1.66%であり、それほど多くのリターンは得られていませんでした。

しかし、 ローン返済のために赤字も出しながら所有し続けた期間中、借地料は増額を続けてリターンは高まっていきます。

完済後の利回りを見ると、26年目の借地料は29万189円となっており、購入価格1200万円に対する利回りは約2.42%に上昇しています。

これだけでは軽微な上昇にも見えますが、ローン完済までの期間中、継続して借地料を受け取っていることも忘れてはなりません。

25年間で得られた借地料の総額は601万2605円であり、元利返済総額は1205万9853円、当初支払った頭金が360万円であることを考えると、

1205万9853円+360万円-601万2605円=964万7248円

となります。

この軍用地を手に入れるための実質的な負担は、964万7248円まで下がったことが分かります。

実質的な取得価格をベースとすれば、完済後に得られる29万189円の借地料による利回りは約3.01%となり、26年目以降はこれ以上の利回りが期待できるのです。

売却しても多くの利益を得られる

さらに、 売却によっても多額の利益が期待できます。

上記の通り、軍用地の売却価格は、借地料と倍率によって算出されます。

もし、このエリアの倍率が25年間変わらなかった場合、26年目の売却額は

29万189円×60=1741万1344円

に上昇しています。

実質的な取得価格は964万7248円ですから、この価格で売却することで得られる利益は776万円4096円となります。

取得価格に対する売却益の利回りは80%以上であり、年利換算では約3.22%ですから、割の良い定期預金だと捉えることも可能です。

もっとも、軍用地の倍率は近年大幅に上昇しています。

軍用地投資の人気が高まったことにより、買いたいと思う人が増えているためです。

25年後には倍率が大きく高まっており、より高く売れる可能性も高いでしょう。

もちろん、倍率が高まれば相対的に利回りが下がるため、利回りがあまりにも低くなってしまう倍率では、取引が成立しません。

したがって、投資家にとって魅力的と思える利回りが確保できる倍率が上限と考えられます。

しかし同時に、借地料が増額されれば倍率の上昇余地も生まれるため、 長期的に倍率は上昇していくと考えるのが自然です。

担保価値も上昇する

借地料の上昇によって軍用地の価値が高まれば、当然ながら担保価値も上昇していきます。

軍用地の担保評価額は、「 借地料×融資倍率」で算出します。

融資倍率とは、対象となるエリアの軍用地に融資できる金額を決めるための倍率です。

取引価格を決めるための倍率よりも低く設定され、例えば嘉手納飛行場の取引価格が60倍で計算されるならば融資倍率は50倍、嘉手納弾薬庫の取引価格が50倍で計算されるならば融資倍率は40倍というように、一定の差が設けられています。

上記の例の物件は取引価格が60倍で計算されているため、融資倍率を50倍として考えてみると、この軍用地の購入時の担保評価額は、

20万円×50倍=1000万円

となり、物件価格1200万円に対し、担保評価額は1000万円となります。

25年かけてローンを完済したとき、融資倍率が50倍のままであったとすれば、26年目の軍用地の担保評価額は、

29万189円×50倍=1450万9450円

に増えていることになります。

これ以降、さらに軍用地への投資を広げていくにあたって、この軍用地の担保価値を利用することで、スムーズに投資することも可能です。

共済融資制度を使おう

上記のように、融資によって軍用地を買えば赤字になるものの、長期的にみれば非常に割の良い投資であることが分かります。

とはいえ、赤字を避けるに越したことはないのですから、金利が低ければ低いほど有利な条件で投資することができます。

そこで 検討したいのが、沖縄県軍用地等地主会連合会(以下、地主会)の会員になり、共済融資制度を利用することです。

共済融資制度は 、地主会の共済会に加入することで利用できる融資制度です。

2019年1月時点では長期プライムレートの変動金利で0.95%の条件で、最長20年の融資を組むことができます。

融資上限は3000万円までです。

ただし、 共済会に加入する際には10万円の拠出金を支払う必要があるほか、地主会に年会費を納める必要があります。

地主会はエリアごとに分かれており、年会費の設定も異なりますが、借地料の0.3%程度が一般的です。借地料が増額されれば、年会費も上昇していきます。

共済融資制度を利用した場合のシミュレーション

地主会に加入すれば、このような費用がかかりますが、それを考慮しても共済融資制度のメリットは大きいです。

上記の例と同じ条件で軍用地を購入するにあたり、共済融資制度を利用した場合のシミュレーションは以下の通りです。

期間 借地料収入 上昇率 物件価値 地主会費用 元利返済額 返済余裕率 税引前CF
1年目 200,000 1.50% 12,000,000 100,600 463,149 0.43 -363,749
2年目 203,000 1.50% 12,180,000 609 463,149 0.44 -260,758
3年目 206,045 1.50% 12,362,700 618 463,149 0.44 -257,722
4年目 209,136 1.50% 12,548,141 627 463,149 0.45 -254,640
5年目 212,273 1.50% 12,736,363 637 463,149 0.46 -251,513
6年目 215,457 1.50% 12,927,408 646 463,149 0.47 -248,338
7年目 218,689 1.50% 13,121,319 656 463,149 0.47 -245,116
8年目 221,969 1.50% 13,318,139 666 463,149 0.48 -241,846
9年目 225,299 1.50% 13,517,911 676 463,149 0.49 -238,526
10年目 228,678 1.50% 13,720,680 686 463,149 0.49 -235,157
11年目 232,108 1.50% 13,926,490 696 463,149 0.50 -231,737
12年目 235,590 1.50% 14,135,387 707 463,149 0.51 -228,266
13年目 239,124 1.50% 14,347,418 717 463,149 0.52 -224,742
14年目 242,710 1.50% 14,562,629 728 463,149 0.52 -221,166
15年目 246,351 1.50% 14,781,069 739 463,149 0.53 -217,537
16年目 250,046 1.50% 15,002,785 750 463,149 0.54 -213,852
17年目 253,797 1.50% 15,227,827 761 463,149 0.55 -210,113
18年目 257,604 1.50% 15,456,244 773 463,149 0.56 -206,317
19年目 261,468 1.50% 15,688,088 784 463,149 0.56 -202,465
20年目 265,390 1.50% 15,923,409 796 463,149 0.57 -198,555
21年目 269,371 1.50% 16,162,260 808 0 268,563
22年目 273,412 1.50% 16,404,694 820 0 272,591
23年目 277,513 1.50% 16,650,764 833 0 276,680
24年目 281,675 1.50% 16,900,526 845 0 280,830
25年目 285,901 1.50% 17,154,034 858 0 285,043
26年目 290,189 1.50% 17,411,344 871 0 289,319
27年目 294,542 1.50% 17,672,514 884 0 293,658
28年目 298,960 1.50% 17,937,602 897 0 298,063
29年目 303,444 1.50% 18,206,666 910 0 302,534
30年目 307,996 1.50% 18,479,766 924 0 307,072
31年目 312,616 1.50% 18,756,963 938 0 311,678
32年目 317,305 1.50% 19,038,317 952 0 316,353
33年目 322,065 1.50% 19,323,892 966 0 321,099
34年目 326,896 1.50% 19,613,750 981 0 325,915
35年目 331,799 1.50% 19,907,956 995 0 330,804

共済融資制度を利用すれば、20年間の元利返済総額は926万2980円となります。

金利3%・25年返済の場合の元利返済総額は1205万9853円ですから、約280万円も圧縮できることが分かります。

地主会の会費は、軍用地投資の規模を年々拡大していくにつれて、長期的には大きな出費になります。

しかし、 地主会の会費と、共済融資制度の利用によって圧縮された元利返済総額を比較すれば、地主会の会費は微々たるものです。

なお、 地主会の会員になるためには、軍用地の地主であることが条件であるため、これから初めて軍用地を購入する人は、地主会の会員になることはできず、共済融資制度も利用できません。

したがって、 共済融資制度を利用するならば、2件目以降の軍用地投資に限られますが、利用できる立場になれば、ぜひ積極的に利用を検討したいものです。

まとめ

近年、 軍用地投資の人気の高まりによって、軍用地の取引価格は上昇し、相対的に利回りが低下しています。

一方、銀行の融資金利は以前より高くなっており、ローンの返済額が借地料を上回ることも珍しくありません。

このように、 融資を受けて軍用地に投資すれば、赤字が続くことを知っておく必要があります。

一定期間にわたって赤字になるため、軍用地投資と融資の相性は悪く見えるものの、 長期にわたって投資を継続することで、十分なメリットを得ることができます。

これから軍用地に投資する人は、融資の活用も検討してみてください。

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