軍用地の返還リスクに備えるためには、返還後を見据えた投資をすること
ローリスクな軍用地投資にも、軍用地が返還されることで借地料が得られなくなったり、土地の価値が下がってしまう「 返還リスク」があります。
あまり過度に警戒する必要もありませんが、リスクに備えておくに越したことはありません。
そこで、返還リスクに備えるためには、 返還後に土地として活用でき、価値が高まるエリアに投資することが大切です。
本稿では、 返還リスクへの備えについて解説していきます。
目次
返還リスクに備える
軍用地投資は、数ある投資の中でも極めてリスクが少なく、さらに安定した収益が期待できるローリスク・ミドルリターンの投資です。
このため、長期間にわたり着実に資産を形成していきたい人に適しています。
しかし、 軍用地投資にもリスクがあります。
これは、米軍が軍用地を返還することにより、投資していた土地が軍用地ではなくなり、借地料も得られなくなってしまうことです。
日米関係や東アジア情勢などから考えても、米軍が沖縄から完全に撤退することはほぼあり得ません。
また、返還の予定が決まったとしても、予定通りにスムーズにいかない可能性が高いです。
実際、普天間飛行場の返還予定は10年後となっていますが、移転先の辺野古の問題が解決しなければ移転は進まず、返還が遅れることが見込まれます。
また、返還されたとしても、返還された軍用地で土壌汚染が問題になる可能性も高く、汚染物質の除去にも数年を要するため、 少なくとも20年間は借地料が得られると考えられます。
とはいえ、これまでにもたびたび、非常に細かい単位で返還が行われることがありましたし、基地が移転してしまうこともあります。
返還される可能性があり、そうとなれば永久に借地料をもらうことはできなくなるのです。
したがって、軍用地投資に取り組む際には、 返還リスクへの備えもそれなりに考えておくべきです。
リスクに備えるためには?
返還リスクは、それほど神経質に考える必要もないのですが、リスクに備えておくに越したことはありません。
リスクに備えるための一番の方法は、返還後に価値が見込める軍用地を買っておくことです。
返還された軍用地は、借地料も得られなくなり(返還後長期にわたって補償が出る可能性もある)、ただの土地になってしまいます。
ということは、ただの土地となってしまった後に、借地料が得られる軍用地としてではなく、 ただの土地として価値が出るエリアであればいいわけです。
基本的には、軍用地が返還されたエリアは、そのまま放置されるということはありません。
国土交通省によって区画整理事業が行われ、その土地に価値が出てくる可能性もあります。
実際のケースでは、1996年に返還が決まり、2010年に返還された泡瀬ゴルフ場のケースが挙げられます。
泡瀬ゴルフ場は、米軍専用のゴルフ場として、キャンプ・フォスター内にあった軍用地です。
このゴルフ場は、2008年に軍用地所有者の団体とイオンモールの間で協定を結び、2009年にはこのエリアにイオンモールを開業することが決まりました。
その後、2015年にイオンモールが開業され、今や県内最大級の商業施設として大変にぎわっています。
もちろん、集客力のあるイオンモールの周辺には、アパートやマンション、他の商業施設なども建設されるようになり、非常に活気あるエリアへと変貌しています。
このエリアに軍用地を持っていた人は、返還によって借地料がもらえなくなりましたが、イオンモールが開業したことで土地の価格は跳ね上がったはずです。
このように、返還リスクに備えるためには、返還後に活用が見込まれる軍用地に投資する必要があります。
もし、 開発の見込みがない軍用地を購入していれば、借地料を受け取っている間は良いですが、返還後に土地を持て余すことになります。
そうならないためにも、返還後を見据えて軍用地を購入し、実際に 返還された後に区画整理が進めば価値が見込めるエリアを購入しておくのがベストです。
もちろん、返還後を見据えて購入したとしても、返還後に開発がスムーズに進まない可能性もありますし、期待したほど土地の価格が上がらない可能性もあります。
そのため、返還後の値上がりを 過度に期待して投資するのは間違いです。
これは返還リスクへの備えにすぎず、あくまでも軍用地投資は「返還後の土地の値上がり」ではなく、「 半永久的に借地料が安定して得られること」を目的とすべきです。
返還を予測する
返還後の土地の活用を見据えて投資するためには、 米軍基地の状況や返還予定などを事前に把握する必要があります。
基本的に、米軍の基地返還は簡単なことではありません。
アメリカ、日本、地元民の三者の利害が複雑に絡み合っていることから、返還はなかなか進まず、 返還が計画されても実際の返還までに数年、数十年とかかるのです。
状況を把握し、返還予定を掴んでいくためには、政治的な側面や経済的な側面など、軍用地に投資するという一個人の利害ではなく、 もっと広い範囲での利害を考えることがポイントです。
具体的には、以下のような見方をするべきです。
簡単に機能を移設できるエリアは返還の可能性が高い
米軍基地の返還は、返還した部分について米軍が撤退するのではなく、 県内の他のエリアに基地の機能をそのまま移設し、その後に返還に至るケースがほとんどです。
したがって、他のエリアに機能を移設できない重要施設、特殊施設については、返還の可能性が低いと言えます。
逆に、簡単に移設できるエリアほど、返還の可能性は高いと言えます。
一度再編統合されたエリアは返還の対象にはなりにくい
米軍基地の返還では、 再編統合のために返還が行われることもあります。
複数の基地の機能を統合・集約してひとまとめにし、元のエリアを返還するという形です。
重要性や規模が小さい基地は、統合のために機能の移設も比較的容易であり、返還の対象になりやすいと言えます。
また、このような再編統合には非常な手間がかかることから、一度再編統合されたエリアは返還の対象にはなりにくいと考えられます。
各関係者の分析と情報収集が重要
基地を移設するためには、移設先の地元住民の受け入れが必須となります。
このため、基地所在地の首長と米軍・国などとの関係、受け入れ先となる地域の首長との関係なども参考になります。
このような分析と同時に、 現時点での返還計画、返還時期、返還後の土地利用計画などの情報を収集しておくと、返還の予定がどうなりそうかが分かってきます。
その上で、返還が予定されているエリアや、返還の可能性があるエリアの軍用地を購入するならば、返還後に需要が見込める土地を購入しましょう。
なお、これらの情報は防衛省や 沖縄防衛局のホームページ、地元メディアのホームページ(琉球新報、沖縄タイムスなど)から収集するのが良いでしょう。
まとめ
軍用地の返還リスクは、それほど神経質になる必要はありません。
米軍が完全撤退することは考えられませんし、移設の難しさから大規模な返還が行われる可能性も低いからです。
しかし、リスクとして認識しておくことは重要です。
その認識があるからこそ、返還された場合の備えとして、あらかじめ活用されやすいエリアの軍用地を購入することも可能となります。
ぜひ、軍用地投資の唯一のリスクである返還リスクを認識して、投資判断に役立ててください。