沖縄不動産投資と駅の関係。長期投資において今後は無視できない理由
沖縄県には電車が走っておりません。
投資物件を選定する場合には、駅からの距離を考慮しなくて良い代わりに、駐車場の重要性が高いのです。
このように、一般的な不動産投資とは異なる考え方で選定していく必要があります。
しかし、この状況が永遠に続くとは限りません。
モノレールが不動産投資に与える影響は限定されますが、沖縄県が取り組んでいる沖縄鉄軌道構想が実現した場合、沖縄不動産投資の環境に影響する可能性が高いです。
本稿では、沖縄不動産投資と駅の関係について、将来的な予測を含めてお伝えしていきます。
目次
沖縄県不動産投資と鉄道の関係
沖縄不動産投資の特殊な点には色々ありますが、立地の考え方も一般的な不動産投資とは異なる考え方をします。
まず、沖縄県は車社会であり、世帯当たりの自動車普及率は高いことから、 購入する不動産には戸数分の駐車場が必要となります。
戸数あたりの駐車場設置率は、全国で最も高い数値となっています。
自動車の普及率が高い理由のひとつに、沖縄県には鉄道路線がほぼないことが挙げられます。
唯一存在する鉄道路線は、モノレールの「ゆいレール(沖縄都市モノレール)」ですが、これは那覇空港と首里の約13㎞を結ぶものであり、利用者は一部の人に限られます。
このため、沖縄県では自動車の利用が非常に多く、交通渋滞の原因にもなっています。
このような事情により、沖縄不動産投資で立地を選ぶ際には、「 駅との位置関係をほとんど考慮しなくてよい」と言えます。
一般的な不動産投資では駅から近いほど好立地です。空室リスクは低くなり、賃料の下落なども抑えられます。
しかし、沖縄不動産投資では、駅から近い立地を選ぼうとすれば、沖縄県の最も中心にあたるモノレール駅周辺を選ぶほかありません。そのため物件の取得が困難となります。
駅との位置関係があまり影響しないのですから、モノレール駅周辺にこだわらずに物件を探したほうが、良い結果につながる可能性が高いのです。
沖縄の鉄道事情の今後
とはいえ、現在は駅が重要な要素でないとしても、今後も同じ状況が続くのでしょうか。
これは微妙な問題です。長期的に考えてみれば、沖縄県でも駅が立地の重要な要素になる時代が来るかもしれません。
モノレールのさらなる拡張は未定
まず、モノレールの路線拡張ですが、こちらはそれほど気にする必要はありません。
現在は首里から那覇空港を結んでいる路線を「首里からてだこ浦西まで拡張する」としており、実際に建設が進められています。
しかし、 新設される駅は4駅、距離にして4.1㎞にすぎません。
那覇市首里石嶺町に石嶺駅、浦添市経塚に経塚駅、浦添市前田に浦添前田駅、そして最後にてだこ浦西駅を以て沖縄自動車道に接続される計画です。
そもそも、このモノレールは沖縄自動車道に接続することを目指して進められてきました。てだこ浦西駅が開業されれば、 それ以降の拡張は未定であり拡張するとしても時間を要するでしょう。
今後、さらに琉球大学まで拡張する構想もありますが、以下のように沖縄鉄軌道の計画も存在するため、モノレールの路線拡張はにわかには進まないと思います。
新設される4駅の開業は、2019年春の予定となっています。
駅周辺に投資する動きはずいぶん前からあったため、今更駅との位置関係を考慮した不動産投資を考えても、時すでに遅しでしょう。
沖縄鉄軌道構想は無視できない
ただし、無視できないのが沖縄鉄軌道構想です。これは、那覇市から名護市までを結ぶ67㎞の鉄道路線であり、沖縄県はかなり前向きに取り組んでいます。
長きにわたり鉄道路線が存在していなかったこと、また沖縄県民にとってもはや電車という交通機関を使う習慣がないことなどから、沖縄鉄軌道構想に疑問を持つ人も多いです。
しかし、太平洋戦争以前、沖縄には軽便鉄道という路線がありました。
沖縄戦で破壊されてしまいましたが、過去に嘉手納と那覇を繋ぐ嘉手納線、那覇と与那原を繋ぐ与那原線、那覇と糸満を繋ぐ糸満線という、立派な鉄道路線が確かに存在していたのです。
戦前と戦後では、沖縄の環境も随分変わっています。米軍基地やその関連施設も多いため、軽便鉄道の路線を復活させるようなことはできないでしょう。
それでも、過去に沖縄を縦断する鉄道路線があったこと、沖縄県が鉄道路線を建設したいと考えているのは事実であり、将来的な不動産投資への影響も考えておく必要があります。
なお、ルート案はすでに確定しており、 那覇市→浦添市→宜野湾市→北谷市→沖縄市→うるま市→恩納村→名護市とされています。
鉄道が沖縄にもたらす影響
また、沖縄県が鉄道路線を建設したいと考える理由も、それなりに納得できるものです。
交通渋滞の緩和
沖縄県は自動車の利用が多く、交通渋滞が深刻な問題となっています。電車があることで、交通渋滞の緩和が見込まれるのです。
バスの利便性の向上
中部や北部から那覇市に行く場合、公共交通機関ではバスを使うことになります。
しかし、交通渋滞のためにバスの運行が予定通りに進まないことも多い。これにより「発着時間のズレが頻発し、乗り換えできない」などの問題も多く利便性が悪いのです。周辺都市から那覇への通勤も困難である。
電車の運行によって 交通渋滞が緩和し、バスの利便性が向上し、周辺都市から那覇への通勤も簡単になる。
飲酒運転の減少
沖縄県は、飲酒運転の問題が深刻です。飲酒による事故や違反の件数が日本一多い。
電車が運行すれば、飲酒運転の減少が見込まれます。
高齢者の移動手段
沖縄県は死亡率が全国で最も低く、超高齢社会になりつつあります。
高齢者の移動手段として、交通渋滞のなかで自家用車やバスを使うのは無理があるのです。
そこで、電車が便利な移動手段となるでしょう。
駐車場にあてる土地の削減
沖縄県では、移動手段のほとんどが車です。賃貸不動産では戸数分の駐車場を、店舗では顧客分の駐車場を確保する必要があるのです。
これにより、駐車場に充てる土地が必要となり、もともと狭い沖縄の土地が有効活用されなくなります。
鉄道路線があれば、駅を中心として市街地が形成され、メリハリのある開発が可能となる。
電車を利用して訪れる人も多くなり、駐車場に充てる土地は大幅に削減されます。
以上のように、鉄道路線が開通することによって、沖縄県が抱えている多くの問題が解決される可能性があります。
だからこそ、沖縄県は鉄道路線の開通に積極的なのです。
沖縄は前向きであるも「国」は後ろ向き
沖縄鉄軌道の計画は2014年に開始されており、2018年にはルート案も確定しました。しかし、開業予定時期は全くの未定です。
これは、鉄道路線の 開通にはかなりの費用が掛かること、採算性が悪いことが理由です。
計画によれば、この事業にかかる概算事業費は6270億円とされています。そして、開業後40年間にわたって赤字が続き、累積赤字は3580億円になるという試算があります。
公共事業の予算を組むには、費用便益費(公共事業の効果を金銭に置き換えて、その妥当性を評価するための指標)を考慮する必要があります。
公共事業を実施するための費用便益費の目安は「1」であるのに対し、沖縄鉄軌道の費用便益費は「0.66」であり、実施の目安を大きく下回っています。
このことから、沖縄県は 国に対して事業化を求めているものの、国は採算性の低さから公共事業費を投入することに後ろ向きになっています。
当面は問題ないが「無視」はできない
不動産投資は、長期的に取り組むものです。
沖縄県は長期的に人口の増加が続くため、長期投資に向いています。
今後、ほとんど全ての都道府県で人口が減少し、不動産投資の環境は悪化していくのです。不動産投資を続けるうちに沖縄県から他県へ手を広げるよりも、 沖縄県内で長期的に投資することになりそうです。
また、沖縄の不動産はほとんど鉄筋コンクリート造です。
そのため築20年の中古物件を購入したとしても、法定耐用年数で考えて27年は運用可能です。これも、長期投資に向いている要素の一つといえます。
したがって、例えば現在30歳の人が不動産投資を始め、今後30年、40年と沖縄県で投資を続けるならば、いずれは鉄道の影響が表面化してくるかもしれません。
駅との位置関係や、駐車場の重要性に対する考え方が変わる可能性があるのです。
しかし、モノレールの路線は限定されていること、沖縄鉄軌道構想は採算性の低さから実現には時間がかかるでしょう。そのことから当面は問題ないと考えてよいでしょう。
いずれ鉄道が開通したときのために、ルートになりそうなエリアに投資していく方法もあります。
しかし、そもそも現在のルート案では、沖縄の主要なエリアを通過するように設計されています。
そのため人口の多い都市を選んで投資していれば、 それがおのずと鉄道ルートに沿ったものになると思います。
また、現在の費用便益費の低さを改善するためには、路線計画や運航計画を変更することによって、工事単価を再設定する必要があります。
そのため、現在のルート案に沿って投資したところで、それが変更されてしまう可能性も大きいため、こだわりすぎないほうが良いでしょう。
まとめ
沖縄県は日本で唯一、電車が走っていない都道府県です。モノレールの路線も短く、拡張も限定的です。
そのため沖縄不動産投資では駅周辺にこだわって投資する必要もありません。
しかし、沖縄鉄軌道構想の存在は、知っておいて損はないでしょう。
この鉄道路線が開通すれば、沖縄県の環境は大きく変化する可能性があります。
計画の実施にはまだまだ時間がかかるでしょうが、長期投資を前提とする不動産投資だからこそ、このような情報には常にアンテナを張っておきたいものです。