軍用地投資を始めたら地主会に加入すべき2つの理由とデメリット

軍用地の所有者になると、軍用地の地主の集まりである地主会に加入することを勧められます。

地主会への加入は任意であり、強制ではありません。
地主会への加入には、メリットもあればデメリットもあります。

その人の軍用地投資に対する姿勢によって、加入すべきかどうかが変わってきます。

本稿では、地主会のメリットとデメリット、加入したほうがよい場合と加入しなくてもよい場合について解説していきます。

地主会の役割を知ろう

軍用地を所有している地主たちの集まりに、地主会(沖縄県軍用地等地主会連合会)というものがあります。

軍用地の所有者が任意で入会する組織ですが、軍用地を購入すれば、おそらく不動産業者から入会を勧められるはずです。

地主会の主な仕事は、軍用地主の利益になるように様々な運動をすることです。

分かりやすいのが、 政府に対する借地料の交渉です。

毎年の借地料の予算は、地主会と政府が交渉することによって決められています。

これにより、適正な借地料が支払われ続けているのはもちろんのこと、地主会は毎年借地料の増額を求めており、例外なく認められてきました。

軍用地の歴史は複雑であり、これまで様々な問題も起こってきました。

借地料の交渉だけではなく、何らかのトラブルによって地主の財産が損なわれることがないように運動したり、福利厚生に取り組んだりするのも、地主会の仕事です。

このため、軍用地の所有者は必ず地主会に入るものと思っている人もいるのですが、 加入するかどうかは本人の自由です。

地主会に入るメリット

地主会に加入することで、いくつかのメリットが得られます。

それは、借地料の支払いが遅れないこと、そして低金利の融資を利用できることです。

借地料の支払いが遅れない

軍用地の借地料が支払われるとき、沖縄防衛局から地主会へ、地主会から地主へという流れで支払われるのが普通です。

この支払いが行われるのは年に一回であり、毎年8月ごろに支払われます。

ところが、毎年この時期に安定して支払いを受けられるのは、地主会に加入している地主だけであり、 加入していない地主への支払いは後回しとなります。

それも、少し遅れる程度ではなく、 ひどい場合には12月ごろまで支払いがずれ込むこともあります。

というのも、沖縄防衛局→地主会→地主という流れで支払われるのは、地主会に加入している地主だけであり、 加入していない地主は沖縄防衛局からの直接の支払いとなるからです。

未加入者が後回される理由

借地料の支払い件数は、年間数万件に上ります。これを、それぞれの地主に直接支払っていたのでは、沖縄防衛局は事務負担に耐えられません。

もし、借地料の大幅な遅延につながれば、軍用地主からの反発に遭う可能性もあります。

そこで沖縄防衛局は、 最初に地主会にまとめて支払うことで、地主会所属の地主への支払いを一気に済ませ、その後に地主会に所属していない地主に順次支払っていくことになります。

このように、借地料の支払いは地主会を優先せざるを得ない事情があるのです。

融資を受けて軍用地を購入している人は、計画的に返済するためにも、借地料の支払時期が安定しているほうが好ましいです。

その場合、地主会に加入することで、毎年8月ごろに借地料を安定して受け取れるようにするのが良いでしょう。

低金利の融資を利用できる

次に、地主会の会員になると、共済会に10万円を拠出して加入することで、共済融資制度を利用できるようになります。

共済融資制度を利用すれば、軍用地を担保とすることによって、 最高で3000万円の融資を、返済期間20年、金利は0.95%、保証人不要で受けることができます。

通常の軍用地主ローンでは、年利2%程度の金利が相場ですから、 半分以下の金利で融資を受けられるのです。

もちろん、これから軍用地投資を始める人は、まだ軍用地を持たず、地主会にも入っていませんから、共済融資制度を利用するのは購入後です。

しかし、2件目以降の軍用地を買い集める際に、うまく活用することができれば、スピーディに資産を増やしていくことができます。

地主会に入るデメリットは年会費

借地料の支払いが安定することも、低金利の共済融資制度を利用できることも、地主会の大きなメリットと言えるでしょう。

しかし、地主会に加入すると、 年会費として年間借地料の0.3%を支払う必要があり、これが大きなデメリットとなります。

0.3%くらい大したことない、と考える人もいるかもしれません。

しかし、軍用地の利回りはそれほど高くなく、よほどいい物件でも年利3%程度の利回りです。
多くの軍用地では、年利2%前後の利回りとなっています。

この利回りに対して、年間0.3%の会費負担は、決して軽いとは言えないでしょう。

さらに、地主会の交渉によって、借地料は年々増額されているのですから、地主会の会費も年々増加していくことになります。

長期的に、軍用地を買い集めていきたいと考えているならばなおさらです。

地主会への加入は、このデメリットをよく考えたうえで決めるべきです。

計画的な返済のために借地料の支払時期を安定させたい、共済融資制度を積極的に活用したいなど、 明確な目的があれば、地主会に加入しても良いと思います。

しかし、具体的な目的もなく、なんとなく便利そうだからといった理由で加入すれば、収益を圧迫するだけの結果になってしまいます。

加入時と未加入時の比較

以上のことから、融資を利用して軍用地投資に取り組みたい人にとっては、地主会に加入するメリットがあると言えるでしょう。

では、地主会に加入するメリットがどの程度であるか、具体的なシミュレーションによって比較してみましょう。

地主会に加入する場合

まず、地主会に加入して会費を支払い、共済融資制度を利用した場合を考えてみます。

  • 軍用地の価格:1000万円
  • 借入総額:1000万円
  • 返済期間:20年
  • 借入金利:0.95%
  • 年間借地料:25万円
  • 年間の借地料の上昇率:1%
  • 地主会への年会費:借地料の0.3%

この条件で投資すれば、以下のような結果となります。

借地料 (変動率) 地主会会費 (経費率) 収支 元利返済額 返済余裕率 税引前CF (月額) 期間
250,000 0.30% 250,000 当初
250,000 0.00% 750 0.30% 249,250 551,367 0.45 -302,117 -25176 1年目
252,500 1.00% 758 0.30% 251,743 551,367 0.46 -299,625 -24969 2年目
255,025 1.00% 765 0.30% 254,260 551,367 0.46 -297,108 -24759 3年目
257,575 1.00% 773 0.30% 256,803 551,367 0.47 -294,565 -24547 4年目
260,151 1.00% 780 0.30% 259,371 551,367 0.47 -291,997 -24333 5年目
262,753 1.00% 788 0.30% 261,964 551,367 0.48 -289,403 -24117 6年目
265,380 1.00% 796 0.30% 264,584 551,367 0.48 -286,784 -23899 7年目
268,034 1.00% 804 0.30% 267,230 551,367 0.48 -284,138 -23678 8年目
270,714 1.00% 812 0.30% 269,902 551,367 0.49 -281,465 -23455 9年目
273,421 1.00% 820 0.30% 272,601 551,367 0.49 -278,766 -23231 10年目
276,156 1.00% 828 0.30% 275,327 551,367 0.50 -276,040 -23003 11年目
278,917 1.00% 837 0.30% 278,080 551,367 0.50 -273,287 -22774 12年目
281,706 1.00% 845 0.30% 280,861 551,367 0.51 -270,506 -22,542 13年目
284,523 1.00% 854 0.30% 283,670 551,367 0.51 -267,698 -22,308 14年目
287,369 1.00% 862 0.30% 286,506 551,367 0.52 -264,861 -22,072 15年目
290,242 1.00% 871 0.30% 289,372 551,367 0.52 -261,996 -21,833 16年目
293,145 1.00% 879 0.30% 292,265 551,367 0.53 -259,102 -21,592 17年目
296,076 1.00% 888 0.30% 295,188 551,367 0.54 -256,180 -21,348 18年目
299,037 1.00% 897 0.30% 298,140 551,367 0.54 -253,228 -21,102 19年目
302,027 1.00% 906 0.30% 301,121 551,367 0.55 -250,246 -20,854 20年目
305,048 1.00% 915 0.30% 304,132 0 #DIV/0! 304,132 25,344 21年目
308,098 1.00% 924 0.30% 307,174 0 #DIV/0! 307,174 25,598 22年目
311,179 1.00% 934 0.30% 310,245 0 #DIV/0! 310,245 25,854 23年目
314,291 1.00% 943 0.30% 313,348 0 #DIV/0! 313,348 26,112 24年目
317,434 1.00% 952 0.30% 316,481 0 #DIV/0! 316,481 26,373 25年目
320,608 1.00% 962 0.30% 319,646 0 #DIV/0! 319,646 26,637 26年目
323,814 1.00% 971 0.30% 322,843 0 #DIV/0! 322,843 26,904 27年目
327,052 1.00% 981 0.30% 326,071 0 #DIV/0! 326,071 27,173 28年目
330,323 1.00% 991 0.30% 329,332 0 #DIV/0! 329,332 27,444 29年目
333,626 1.00% 1,001 0.30% 332,625 0 #DIV/0! 332,625 27,719 30年目

20年で返済した場合、元利返済総額は1102万7340円となり、102万7340円の支払利息が発生しています。

支払利息を単体で見た場合、収益に対する経費率は、20年間での借地料総額550万4751円に対して、18.66%となります。

30年目の借地料は33万3626円で地主会への会費が1001円ですから、 実質利回りは約3.326%となります。

このエリアの軍用地倍率が50倍であれば、30年目の軍用地価格は1668万1300円(30年での上昇率は66.8%)となります。

地主会に加入しない場合

次に、地主会に加入せずに会費も負担せず、通常の軍用地主ローンを利用した場合を考えてみます。

  • 軍用地の価格:1000万円
  • 借入総額:1000万円
  • 返済期間:25年
  • 借入金利:2.0%
  • 年間借地料:25万円
  • 年間の借地料の上昇率:1%
  • 地主会への年会費:なし

この条件で投資すれば、以下のような結果となります。

借地料 (変動率) 地主会会費 (経費率) 収支 元利返済額 返済余裕率 税引前CF (月額) 期間
250,000 0.00% 250,000 当初
250,000 0.00% 0 0.00% 250,000 512,204 0.49 -262,204 -21850 1年目
252,500 1.00% 0 0.00% 252,500 512,204 0.49 -259,704 -21642 2年目
255,025 1.00% 0 0.00% 255,025 512,204 0.50 -257,179 -21432 3年目
257,575 1.00% 0 0.00% 257,575 512,204 0.50 -254,629 -21219 4年目
260,151 1.00% 0 0.00% 260,151 512,204 0.51 -252,053 -21004 5年目
262,753 1.00% 0 0.00% 262,753 512,204 0.51 -249,452 -20788 6年目
265,380 1.00% 0 0.00% 265,380 512,204 0.52 -246,824 -20569 7年目
268,034 1.00% 0 0.00% 268,034 512,204 0.52 -244,171 -20348 8年目
270,714 1.00% 0 0.00% 270,714 512,204 0.53 -241,490 -20124 9年目
273,421 1.00% 0 0.00% 273,421 512,204 0.53 -238,783 -19899 10年目
276,156 1.00% 0 0.00% 276,156 512,204 0.54 -236,049 -19671 11年目
278,917 1.00% 0 0.00% 278,917 512,204 0.54 -233,287 -19441 12年目
281,706 1.00% 0 0.00% 281,706 512,204 0.55 -230,498 -19,208 13年目
284,523 1.00% 0 0.00% 284,523 512,204 0.56 -227,681 -18,973 14年目
287,369 1.00% 0 0.00% 287,369 512,204 0.56 -224,836 -18,736 15年目
290,242 1.00% 0 0.00% 290,242 512,204 0.57 -221,962 -18,497 16年目
293,145 1.00% 0 0.00% 293,145 512,204 0.57 -219,060 -18,255 17年目
296,076 1.00% 0 0.00% 296,076 512,204 0.58 -216,128 -18,011 18年目
299,037 1.00% 0 0.00% 299,037 512,204 0.58 -213,168 -17,764 19年目
302,027 1.00% 0 0.00% 302,027 512,204 0.59 -210,177 -17,515 20年目
305,048 1.00% 0 0.00% 305,048 512,204 0.60 -207,157 -17,263 21年目
308,098 1.00% 0 0.00% 308,098 512,204 0.60 -204,106 -17,009 22年目
311,179 1.00% 0 0.00% 311,179 512,204 0.61 -201,025 -16,752 23年目
314,291 1.00% 0 0.00% 314,291 512,204 0.61 -197,914 -16,493 24年目
317,434 1.00% 0 0.00% 317,434 512,204 0.62 -194,771 -16,231 25年目
320,608 1.00% 0 0.00% 320,608 0 #DIV/0! 320,608 26,717 26年目
323,814 1.00% 0 0.00% 323,814 0 #DIV/0! 323,814 26,985 27年目
327,052 1.00% 0 0.00% 327,052 0 #DIV/0! 327,052 27,254 28年目
330,323 1.00% 0 0.00% 330,323 0 #DIV/0! 330,323 27,527 29年目
333,626 1.00% 0 0.00% 333,626 0 #DIV/0! 333,626 27,802 30年目

25年で返済した場合、元利返済総額は1280万5100円となります。

借入期間が5年長かったこと、金利が倍になったことにより、支払利息の総額も280万5100円へと膨らんでいます。

支払利息を単体で見た場合、収益に対する経費率は、25年間での借地料総額706万800円に対して、39.73%となります。

30年目の借地料は33万3626円で、 実質利回りは約3.336%となります。

利回りを比べてみても、地主会の会費を払った場合とほとんど変わりません。

軍用地価格の上昇は、地主会に加入した場合と同じです。

融資を使うなら地主会に入るべき

上記のように、地主会に加入した場合の支払利息は102万7340円、加入しなかった場合の支払利息は280万5100円となり、177万7760円もの差がでてきます。

この間、地主会に支払った年会費の総額は1万6514円にすぎませんから、 差し引き176万1246円のメリットが得られたことになります。

このように、地主会に入って共済融資制度を利用すれば、年会費を考慮しても圧倒的にメリットがあります。

もちろん、地主会の年会費は、共済融資制度を利用して購入した軍用地の借地料だけではなく、所有する軍用地の全ての借地料にかかるため、 たくさんの軍用地を所有するにつれて、負担が重くなってきます

それでも、共済融資制度を利用した場合と、軍用地主ローンを利用した場合では、1000万円の融資あたり177万7760円のメリットがあるのです。

これをごく単純に考えてみれば、共済融資制度で1000万円の軍用地を買い増したとき、地主会の会費によって177万7760円のメリットが損なわれるのは、年間の借地料総額が約2670万円以上になった場合です(下図)。

借地料 (変動率) 地主会会費 (経費率) 期間
26,700,000 0.30% 当初
26,700,000 0.00% 80,100 0.30% 1年目
26,967,000 1.00% 80,901 0.30% 2年目
27,236,670 1.00% 81,710 0.30% 3年目
27,509,037 1.00% 82,527 0.30% 4年目
27,784,127 1.00% 83,352 0.30% 5年目
28,061,968 1.00% 84,186 0.30% 6年目
28,342,588 1.00% 85,028 0.30% 7年目
28,626,014 1.00% 85,878 0.30% 8年目
28,912,274 1.00% 86,737 0.30% 9年目
29,201,397 1.00% 87,604 0.30% 10年目
29,493,411 1.00% 88,480 0.30% 11年目
29,788,345 1.00% 89,365 0.30% 12年目
30,086,228 1.00% 90,259 0.30% 13年目
30,387,091 1.00% 91,161 0.30% 14年目
30,690,961 1.00% 92,073 0.30% 15年目
30,997,871 1.00% 92,994 0.30% 16年目
31,307,850 1.00% 93,924 0.30% 17年目
31,620,928 1.00% 94,863 0.30% 18年目
31,937,138 1.00% 95,811 0.30% 19年目
32,256,509 1.00% 96,770 0.30% 20年目

※20年間での地主会費の合計は176万3722円となり、 融資総額1000万円、借入金利0.95%、返済期間20年の場合に共済融資制度によって得られる177万7760円のメリットをほぼ失う。

このとき、所有している軍用地の平均的な軍用地倍率が50倍であるとすれば、所有する軍用地の資産総額は13億3500万円となりますから、普通の投資家にはあまり縁のない話だと言ってよいでしょう。

まとめ

地主会に加入することによって、借地料の支払いが遅れない、共済融資制度を利用できるといったメリットがあります。

その反面、年間借地料の0.3%相当の年会費がかかるというデメリットもあります。

このメリット・デメリットを良くわきまえて、

  • 融資を使って軍用地を増やす計画であれば、地主会に入って共済融資制度を利用したほうがよい
  • 軍用地を増やす計画がなければ、地主会の会費は無駄なコストになるため、加入の必要はない。

融資を使いたくなってから加入すればよいと考えましょう。
自分の投資計画に合わせて、加入するかどうかを選ぶことが大切です。

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