沖縄不動産投資で戸建て住宅が投資対象にならない理由とは?沖縄の特殊な事情をみる

不動産投資の投資対象には様々なものがあり、戸建て住宅に投資する場合もあります。戸建て住宅にはファミリー層が定着しやすく、長期的に安定した収益が期待できるメリットがあります。

しかし、沖縄では核家族世帯の増加が続いているにもかかわらず、戸建て住宅は投資対象になりません。

本稿では、 戸建て住宅が流通しない沖縄の特殊な環境について解説していきます。

 

沖縄不動産投資の対象は中古集合住宅

沖縄不動産投資の最大の魅力は、長期的に安定した収益が期待できる点にあります。沖縄は 人口・世帯数ともに増加を続けており、今後も長期にわたって増加すると考えられています。

人口や世帯数が増加すれば、賃貸需要も増加すると考えられるため、 不動産投資に向いているのです。

では、沖縄不動産投資では、どのタイプの物件が特に良いのでしょうか。これはズバリ、 中古アパート・マンションといった集合住宅が最適です。

 

土地と建築コストが高い沖縄では、新築不動産の取得単価が非常に高くつきます。そのため、沖縄不動産投資で新築物件を扱うならば、かなり難易度が高くなります。

新築に強みがある人、例えば 新築不動産投資の経験が豊富な人や、 好立地の土地をすでに持っている人などでなければ、沖縄では中古不動産メインで投資していくことになります。

また、アパートやマンションといった集合住宅に投資するものと考え、 戸建て住宅などは対象になりません

核家族世帯も着実に増えていく沖縄では、長期間の入居が期待できる戸建て住宅に興味を持つ人もいるでしょう。しかし、沖縄県では戸建て住宅がほとんど流通していません。

くわえて取得単価が高いことなどから、投資効率が悪くなってしまうため、戸建て住宅は到底お勧めできないのです。

 

沖縄と戸建て住宅の特殊な性質

これも、沖縄不動産投資の特殊なところです。戸建て住宅の性質として、一般的には、

  • 新築の一戸建ては高く、中古の一戸建ては安い
  • 都市圏の一戸建ては高く、地方の一戸建ては安い

 

という常識があるのに対し、沖縄県では、

  • 新築の一戸建てと中古の一戸建ての価格がそれほど変わらない(新築は2000万円以上、中古は1500万円以上が相場)
  • 都市圏の一戸建ては高く、沖縄の一戸建ても高く、相対的に沖縄の一戸建ては割高である

となっているのです。沖縄不動産投資には、 一般的な不動産投資の常識が通用しない典型的なパターンと言えます。

 

 

戸建てが流通しないのは県民性と経済力が深く関わる

なぜ、沖縄県では新築と中古で一戸建ての価格がそれほど変わらず、また地方都市であるにもかかわらず一戸建てが割高なのでしょうか。

これは、 沖縄の県民性や経済が深く関係しています。

沖縄で一戸建て住宅を所有している世帯は、全世帯の50%程度となっており、全国平均とあまり変わりません。しかし、戸建て住宅所有世帯の半分は、 先祖代々の土地と住宅を受け継いできた世帯です。

代々受け継いできた土地や住宅ですから、それを 安値で手放そうと考える人はあまりいません

そのため、高い土地を買って新築した戸建て住宅は高値で取引されることとなり、土地と建物が一体となっている中古の戸建て住宅も高値で取引されているのです。

 

実際、沖縄の戸建て住宅所有世帯のうち、代々の土地・住宅を継承してきたのではなく、新たに取得した世帯は、 ほぼ例外なく高所得世帯が占めています

沖縄県の県民所得は全国で最も低いため、 戸建て住宅を購入できる経済力がある人はごく一部です。このように、沖縄では戸建て住宅が割高で取引されるため、不動産投資には不向きです。

つまり、沖縄の不動産市場では、

  • 戸建て住宅は住みたくても高くて買えず(実需に乏しい)
  • 投資しようにも投資効率が悪いから買えず(仮需に乏しい)
  • 売れないから出回らず

という状況なのです。以上のような特殊性によって、沖縄は戸建て住宅の需要が非常に低くなっています。

 

これは、2018年における一戸建て住宅の新設着工戸数と世帯数の関係を、都道府県別に見てみるとよくわかります。

平成30年1月~12月分着工新設住宅戸数と世帯の関係
総 戸 数 うち一戸建 世帯数 世帯数増減率(前年比) 順位
戸 数 戸 数 割合 順位
埼玉 58,517 15,255 26.07% 1 419,472 0.26% 3
奈良 6,287 1,615 25.69% 2 55,016 -0.61% 29
千葉 46,807 11,002 23.51% 3 372,179 0.24% 5
神奈川 72,449 16,296 22.49% 4 572,756 0.17% 6
群馬 12,861 2,591 20.15% 5 87,444 -0.38% 19
愛知 66,978 12,577 18.78% 6 457,911 0.26% 3
栃木 13,348 2,480 18.58% 7 88,489 -0.29% 12
兵庫 31,245 5,764 18.45% 8 263,093 -0.30% 13
京都 14,704 2,703 18.38% 9 144,369 -0.24% 10
広島 18,434 3,140 17.03% 10 149,743 -0.30% 13
岐阜 11,254 1,862 16.55% 11 87,806 -0.58% 27
茨城 20,125 3,239 16.09% 12 140,246 -0.32% 15
宮城 19,646 3,147 16.02% 13 129,217 -0.32% 15
静岡 23,405 3,329 14.22% 14 176,696 -0.37% 18
福島 12,761 1,811 14.19% 15 71,060 -0.97% 40
東京 144,813 19,512 13.47% 16 1,158,818 0.79% 1
大阪 75,659 9,982 13.19% 17 503,654 -0.06% 9
滋賀 9,459 1,243 13.14% 18 66,454 -0.04% 8
和歌山 4,935 609 12.34% 19 31,041 -0.98% 41
鹿児島 9,819 1,122 11.43% 20 76,490 -0.73% 33
石川 7,609 869 11.42% 21 48,734 -0.28% 11
福岡 40,704 4,592 11.28% 22 331,430 0.09% 7
山口 8,369 884 10.56% 23 54,762 -0.88% 38
山梨 4,518 475 10.51% 24 37,987 -0.70% 32
三重 10,616 1,114 10.49% 25 79,637 -0.41% 20
長野 12,477 1,302 10.44% 26 88,551 -0.56% 25
秋田 4,357 443 10.17% 27 28,199 -1.37% 47
山形 6,362 616 9.68% 28 35,966 -1.03% 45
香川 5,913 572 9.67% 29 42,357 -0.46% 21
青森 6,431 609 9.47% 30 45,356 -1.14% 46
岡山 13,118 1,231 9.38% 31 87,980 -0.36% 17
佐賀 5,574 516 9.26% 32 35,296 -0.56% 25
宮崎 6,708 602 8.97% 33 45,818 -0.67% 31
愛媛 7,178 624 8.69% 34 50,431 -0.78% 36
福井 4,337 368 8.49% 35 28,097 -0.46% 21
熊本 17,234 1,423 8.26% 36 93,177 -0.50% 24
高知 3,288 269 8.18% 37 26,851 -0.99% 42
新潟 11,672 945 8.10% 38 77,964 -0.85% 37
大分 7,549 600 7.95% 39 46,829 -0.66% 30
富山 6,402 493 7.70% 40 37,326 -0.48% 23
岩手 8,365 540 6.46% 41 46,022 -1.01% 44
北海道 35,888 2,303 6.42% 42 298,130 -0.58% 27
徳島 4,335 271 6.25% 43 28,755 -0.89% 39
沖縄 16,803 838 4.99% 44 94,697 0.30% 2
長崎 6,726 333 4.95% 45 60,027 -1.00% 43
鳥取 2,957 143 4.84% 46 20,813 -0.77% 35
島根 3,374 139 4.12% 47 26,026 -0.74% 34

この表の通り、2018年の一年間を通じて、 沖縄県では一戸建て物件の着工件数が非常に少ないことが分かります。すべての物件の新設着工件数と比較すると、 全体の5%以下にすぎません。

特に、世帯の増加率が全国で2番目に高いことから、世帯は増えても一戸建てに住む世帯は少ない、 つまり一戸建ての需要に乏しいことが分かります。

このデータから明らかな通り、沖縄の環境は極めて特殊で、実需でも仮需でも戸建て住宅の需要が低いです。

 

戸建て住宅の需要がほとんどない沖縄では、他県では戸建て住宅に住んでいるはずの層も集合住宅に住んでいます。沖縄不動産投資で、アパートやマンションへの投資を優先するのは、このようなことも理由となっています。

さらに、沖縄の世帯数は増加し続けており、増加した世帯でも戸建て住宅の需要は低いため 、アパート・マンションなどの集合住宅の需要が相対的に高まっていくと考えられます。

 

まとめ

沖縄では、世帯数が増加しているにもかかわらず、 一戸建て住宅の供給戸数は非常に少ないです。沖縄では、単 独世帯・核家族世帯を問わず、集合住宅に暮らす人が多いことも、安定した賃貸需要が得られる理由となっています。

沖縄不動産投資では、色々な特殊性をくみ取らなければなりません。一般的な不動産投資の常識とは、切り離したほうがうまくいく部分もあります。

沖縄における戸建て住宅の需要についても、沖縄不動産投資ならでは知識として役立ててください。

 

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