沖縄不動産は割高・割安?マンションPERで測ってみよう

不動産への投資を検討するにあたって、その物件が割安であるか、割高であるかを考える人は多いと思います。これは、どのような投資においても大切な視点です。

不動産の割高・割安を知るための指標に、マンションPERがあります。

これは、不動産の割高・割安を知るためのものであり、マンションPERを見ることによって、その不動産への投資資金を回収するために必要な期間を計ることができます。

現在、沖縄不動産は割高である、バブル状態にあると言われることも多いのですが、実際にはどうなのでしょうか。

マンションPERを頼りに、沖縄不動産の現状を探っていきたいと思います。

投資における割高・割安の考え方

投資で成果を上げるための考え方の一つに、その投資対象が割高であるか、あるいは割安であるかを判断したうえで投資することが挙げられます。

基本的に、商品の価値は適正価格に収束するものとされます。もし、投資対象が割高であれば、やがて適正価格に向かって値下がりしていき、逆に割安であれば、適正価格に向かって値上がりしていくと考えられます。

したがって、 割高なものへの投資を避け、割安なものを選んで投資することによって、損失を避けつつ、利益を得られる可能性が高まるのです。

これは、株式投資の経験がある人にとっては、常識的な考え方です。同じように、不動産投資にも割高あるいは割安な不動産があります。

割高・割安の指標PER

その不動産が割高であるか、割安であるかを知るための指標には、PERが用いられます。PERは、株式投資で頻繁に用いられる指標です。

PERとは、「Price Earnings Ratio(株価収益率)」の略であり、株価が1株当たり当期純利益の何倍であるかを示します。

つまり、PERは企業の利益から見た株価の割安性を表すものです。

例えば、ある企業の1株当たり当期純利益が100円、株価が1000円であれば、PERは10倍となります。

この株を1株購入し、この企業が1株益100円を10年間にわたって継続すれば、10年間の1株当たり総利益は1000円となり、株主は1000円の投資資金を回収できることになります。

つまり、PERという指標は、 その投資対象に投資した場合、何年で投資資金を回収できるかを表しているのです。

不動産投資におけるPER

PERは、株式投資だけではなく、不動産投資でも用いられます。不動産投資で用いる場合には、特に「 マンションPER」と表すこともあります。

考え方は、株式投資におけるPERと同じです。マンションPERも、その不動産に投資した場合に、何年で投資資金を回収できるかを表します。

上記の通り、株式投資におけるPERは、株価を1株当たり利益で割ることで算出します。同じく、不動産投資におけるPERは、 不動産価格を年間賃料で割ることで算出します。

 

例えば、分譲マンションを2000万円で購入し、月々10万円の賃料で貸し出した場合には、マンションPER=不動産価格÷年間賃料=2000万円÷(10万円×12ヶ月)=16.66…となります。

つまり、このマンションへの投資資金は、約16.66年で元が取れることが分かります。

マンションPERは、何年で元が取れるのかを表しているのですから、 PERの数値は小さければ小さいほど収益力が高く割安であり、 PERの数値が高ければ高いほど収益力が低く割高と言えます

マンションPERの標準値

株式投資では、PERが15倍以下であれば割安、15倍以上であれば割高と考えます。一方、不動産投資では、マンションPERの標準値は24~25倍とされており、これを境に割高・割安と考えます。

ただしPERは、その時々の不動産市況によって大きく左右されます。

好景気であれば地価は上昇し、不動産価格も高くなるため、PERも高くなり、多くの不動産が割高と判断されてしまいます。

そこで、標準的なPERの範囲はやや緩く見て、 15~35くらいの範囲内であれば適正値と考えるのが普通です。

これを大きく外れるならば、何らかの理由があって安すぎる、あるいは高すぎる価格となっており、何らかの原因があるため注意が必要と考えられます。

沖縄不動産のPERは?

これから沖縄不動産投資を始めたいと思っている人は、沖縄不動産のPERが気になるところでしょう。

近年、沖縄の地価は大きく上昇を続けており、物件価格も高騰しています。賃料も順調に上昇しているのですが、賃料の上昇率が物件価格の上昇率に追い付いていないため、賃貸利回りは相対的に低下傾向にあります。

賃料は入居者の収支状況に大きく依存します。個人の収入は短期間で大幅に伸びることは基本的にないため、賃料の上昇も限定的であり、不動産価格の上昇に追い付いていないのです。

このため、沖縄不動産投資では、不動産の収益力の低さがデメリットに挙げられることも多いものです。

このことは、 都道府県別にマンションPERを比較してみるとよくわかります。

都道府県別の最新PER

以下のデータは、各都道府県の2019年10月時点での、中古マンションの70㎡換算価格と、間取りが3部屋の物件の平均家賃から、PERを算出したものです。

順位 都道府県 家賃(円) 70㎡換算価格(万円) PER
1位 和歌山県 56,296 931 13.78
2位 奈良県 62,228 1,282 17.17
3位 香川県 56,452 1,175 17.35
4位 静岡県 66,752 1,458 18.20
5位 山口県 57,832 1,271 18.31
6位 徳島県 59,312 1,341 18.84
7位 山梨県 60,848 1,425 19.52
8位 福井県 60,467 1,450 19.98
9位 岐阜県 58,637 1,424 20.24
10位 長崎県 63,056 1,555 20.55
11位 高知県 61,683 1,583 21.39
12位 山形県 56,611 1,463 21.54
13位 大分県 57,501 1,505 21.81
14位 佐賀県 54,869 1,458 22.14
15位 鳥取県 57,470 1,530 22.19
16位 茨城県 57,063 1,524 22.26
17位 新潟県 58,553 1,566 22.29
18位 北海道 63,373 1,719 22.60
19位 石川県 62,010 1,693 22.75
20位 群馬県 57,266 1,570 22.85
21位 三重県 59,480 1,638 22.95
22位 兵庫県 74,298 2,084 23.37
23位 青森県 55,000 1,555 23.56
24位 秋田県 57,709 1,662 24.00
25位 福岡県 69,986 2,041 24.30
26位 富山県 55,930 1,640 24.44
27位 千葉県 69,989 2,056 24.48
28位 福島県 56,964 1,681 24.59
29位 愛媛県 52,544 1,557 24.69
30位 宮崎県 52,202 1,555 24.82
31位 宮城県 66,465 1,991 24.96
32位 熊本県 58,595 1,762 25.06
33位 岡山県 64,532 1,945 25.12
34位 鹿児島県 60,259 1,895 26.21
35位 埼玉県 72,254 2,285 26.35
36位 広島県 65,276 2,098 26.78
37位 滋賀県 67,189 2,170 26.91
38位 栃木県 55,653 1,861 27.87
39位 岩手県 53,966 1,813 28.00
40位 島根県 59,744 2,024 28.23
41位 神奈川県 84,413 2,937 28.99
42位 愛知県 61,643 2,183 29.51
43位 大阪府 71,500 2,560 29.84
44位 長野県 55,864 2,286 34.10
45位 京都府 74,875 3,150 35.06
46位 沖縄県 62,165 3,205 42.96
47位 東京都 94,202 5,165 45.69
平均 62,148 1,866 24.65

この表を見ると、 多くの都道府県がマンションPERの標準値である24~25倍前後となっており、緩く見た場合の標準値である15~35倍を超過しているのは、 ワースト3の京都府・沖縄県・東京都のみとなっています。

特に、沖縄県と東京都のPERは40倍を超えており、投資資金を回収するのに沖縄県では約43年、東京都では約46年かかることが分かります。

不動産価格が上昇を続けた結果、現在の沖縄不動産のPERは非常に高い水準に達し、PERはかなり割高であることを示しています。

大幅に上昇する沖縄不動産のPER

合わせて知っておきたいのが、沖縄不動産のPERの上昇ぶりです。1 0年間でのPERの変化を見てみると、沖縄不動産のPERは急速に高まっているのです。

各都道府県の2010年12月(今から約10年前)時点での、中古マンションの70㎡換算価格と、間取りが3部屋の物件の平均家賃からPERを算出すると、各都道府県のPERがどのように変化したかを知ることができます。

順位 都道府県 家賃(円) 70㎡換算価格(万円) PER
1位 新潟県 62,536 729 9.71
2位 山梨県 60,342 858 11.85
3位 北海道 65,166 1,013 12.95
4位 石川県 68,852 1,225 14.83
5位 群馬県 58,258 1,057 15.12
6位 徳島県 57,500 1,050 15.22
7位 宮城県 65,400 1,196 15.24
8位 和歌山県 55,792 1,046 15.62
9位 山形県 56,220 1,082 16.04
10位 福岡県 66,431 1,308 16.41
11位 香川県 56,653 1,117 16.43
12位 三重県 57,003 1,126 16.46
13位 静岡県 64,774 1,285 16.53
14位 岡山県 61,610 1,301 17.60
15位 山口県 58,750 1,250 17.73
16位 栃木県 58,806 1,259 17.84
17位 岐阜県 54,265 1,164 17.88
18位 高知県 63,833 1,377 17.98
19位 大分県 52,834 1,152 18.17
20位 秋田県 55,684 1,215 18.18
21位 広島県 66,911 1,460 18.18
22位 福島県 54,947 1,210 18.35
23位 宮崎県 54,336 1,203 18.45
24位 奈良県 51,250 1,146 18.63
25位 熊本県 59,161 1,327 18.69
26位 富山県 55,770 1,271 18.99
27位 福井県 65,554 1,517 19.28
28位 長崎県 63,229 1,471 19.39
29位 滋賀県 63,200 1,477 19.48
30位 長野県 60,137 1,417 19.64
31位 千葉県 80,048 1,891 19.69
32位 佐賀県 49,000 1,191 20.26
33位 兵庫県 74,025 1,817 20.45
34位 愛知県 64,225 1,594 20.68
35位 茨城県 50,371 1,286 21.28
36位 岩手県 53,104 1,363 21.39
37位 埼玉県 71,644 1,859 21.62
38位 鹿児島県 62,023 1,610 21.63
39位 青森県 51,672 1,348 21.74
40位 島根県 62,667 1,654 21.99
41位 愛媛県 53,531 1,436 22.35
42位 鳥取県 53,550 1,448 22.53
43位 大阪府 68,177 1,855 22.67
44位 神奈川県 92,414 2,562 23.10
45位 沖縄県 61,781 1,783 24.05
46位 京都府 57,076 2,119 30.94
47位 東京都 94,411 3,945 34.82
平均 61,594 1,427 19.11

この表によって10年前と比較してみると、 全国的に地価が上がったことで、PERが上昇している様子が分かります。とはいえ、ほとんどの都道府県で大幅な上昇とはなっていません。

ワースト3は、2010年でも京都府・東京都・沖縄県が占めています。

それぞれのPERの変化を見てみると、京都府は30.94から35.06へ4.12の上昇、東京都は34.82から45.69へ10.87の上昇であるのに対し、 沖縄県は24.05から42.96へ18.91の上昇となっています。

このことから、沖縄県のPERは、京都府や東京都に比べて大幅な上昇となっていることがわかります。

 

特に、沖縄県と東京都のPERの差を見てみると、10年前には10倍以上の差があったものが、最近では3倍程度にまで狭まっています。

今後も同じペースで上昇を続けた場合、 沖縄県のPERが東京都のPERを超える可能性も否定できません

東京都は日本の首都であり、経済規模も突出しているため、PERが高いのは当然のことです。

一方、沖縄県は日本最南端の県であり、経済規模は全国的に見て非常に低いレベルにあり、本来ならばPERは低いのが普通です。

現在、沖縄不動産はバブル状態にあると指摘する意見も多いですが、PERを見ればその意見があながち間違っていないことが分かります。

沖縄不動産に投資すべきか?

ここまで見てきた通り、沖縄不動産のPERは非常に高くなっており、東京都のPERに迫る異常な数値となっています。

PERは、不動産の割高・割安を知るための指標ですから、現在の沖縄不動産がかなり割高な水準にあり、収益力に問題があることは否めません。

とはいえ、これを以て、一概に沖縄不動産投資が危険であるとは言い切れません。

なぜならば、 PERは現在における収益性を示すものであり、あくまでも目安にすぎず、 投資の成果を決定づけるものではないからです

PERは将来を保証するものではない

これは、株式投資について考えると分かりやすいでしょう。

株式投資においては、PERを見ることによって、株価の割高・割安を考えます。しかし、それはあくまでも、現時点における1株利益と株価を比較した結果にすぎません。

例えば、現在、1株利益が100円、株価が4000円であれば、PERは40倍で割高と判断されます。しかし 10年後、この企業の1株利益が400円、株価が8000円になっていれば、PERは20倍で標準となっています

また、株価が4000円から8000円に上昇したことで、4000円の差益が生じています。投資時点では、投資資金の回収に40年かかるとされていましたが、実際には10年で投資資金を回収できています。

 

このように、現時点におけるPERは長期的な成果を保証するものではなく、時にはPERとは無関係に十分な成果を得られることも多いのです。

不動産投資でも、同じことが言えます。 現在のPERが高い水準にあっても、長期目線で考えた場合、必ずしも割高とは言い切れません

もちろん、PERが低いに越したことはありません。しかし、 沖縄不動産はPERが高い一方で、収益の安定性に優れています

全国的に人口の減少が続いている中で、沖縄県は今後も長期的に人口の増加が見込まれています。

また、観光業が急速に成長しており、持続的な経済成長も期待されています。

 

他の都道府県では、多かれ少なかれ人口の減少が見込まれています。

経済成長は人口の増減に左右される部分が大きいため、今後、人口の減少によって経済成長が鈍化したり、経済的に後退していく都道府県も少なくないでしょう。

さらに、なんといっても人口は賃貸需要に直結する要素です。人口が減少すれば賃貸需要も減り、賃貸物件の空室リスクは高まっていきます。

いくらPER的に割安であると言っても、そのエリアで人口減少が進み、賃貸需要が長期的に減少していくのであれば、物件の収益性は低くなります。

このように考えると、今後も長期的に人口増加が続き、高い入居率が期待できる沖縄不動産は、PER的には割高であり収益性が低いとしても、 実質的な収益性は高いと考えることができます。

 

また、沖縄不動産のPERが急上昇していることは、土地や建物の価格が急上昇していることの証左でもあります。

今後も上昇を続けた場合、売却益が狙える可能性も高いです。

売却益が得られるならば、賃貸経営による収益が乏しくとも、最終的な利益では、他の都道府県の不動産と比べても、なんら遜色ない成果が期待できるでしょう。

不動産の価値を測る最大の尺度は収益性です。

この収益性は、 現時点のPERだけで測りきれるものではなく、長期的な成果で考えるべきものです。

もし、PERが高い不動産でも、長期的に高い収益性が期待できるならば割安と言えるでしょうし、PERが低い不動産でも、長期的な収益性が低ければ割高と判断すべき場合もあるのです。

まとめ

不動産投資に取り組む際には、その物件が割安であるか、割高であるかを知るためにも、PERを見るのが参考になります。

現在、沖縄不動産のPERは非常に高く、PER的には割高な水準にあると言えます。PERが高ければ、賃貸経営を続けることで元を取るまでの時間もかかります。

しかし、そもそも不動産投資とは長期的に取り組むものです。現時点でのPERに捉われすぎることなく、長期的な収益性を見据えるならば、沖縄不動産投資の魅力は何ら損なわれるものではありません。

最初のコメントをしよう

必須