那覇市東部の投資環境は?那覇新都心の発展、ゆいレールの延伸などの影響をくみ取ろう

 

那覇市は、新都心・西部・東部・南部に分けることができます。

その中で人口が最も多く、かつての王府であった首里地区を擁するエリアが 那覇市東部です。

那覇市東部は、那覇新都心が急速に発展していること、首里地区から浦添方面へ向けてゆいレールが拡張されることなどから、投資環境に短期的な変化が見込まれる地域です。

本稿では、 那覇市東部の特徴や近年の変化などから、不動産投資への適性を考えていきます。

 

那覇市東部は「首里地区と真和志地区」の2地区

 

人口の増加に伴う賃貸需要の増加、外国人観光客の増加に伴うリゾート開発と地価の上昇など、沖縄県が不動産投資先として注目されることが増えています。

中でも、最大の発展を見せているのは県庁所在地の那覇市です。

突出して発展している那覇新都心が、那覇市全体に与える影響は小さくありませんが、それだけに 那覇新都心とそれを除く那覇市に分けて考える必要があります

 

那覇市を考える際には、那覇新都心を除く那覇市を、さらに西部・東部・南部に分けて考えます。

那覇市の西部と東部は、国道330号線を境に分けられており、那覇市東部を大きく分けると、 首里地区と真和志地区に分けることができます。

 

那覇市中心部のベッドタウンである「首里地区」

 

那覇市東部を知るにあたって、ぜひ押さえておくべきエリアが首里地区です。

首里地区は、名称からもわかる通り、琉球王朝の城である首里城で知られる地域です。

琉球王朝の都として栄えたエリアであり、 歴史的な背景から伝統工芸品や歴史的遺産が多く、観光産業への貢献度も大きいです。

 

また、かつての王府ですから、首里地区は今でも特別なエリアとして考えられています。

首里地区は、那覇市内の中でも特別に立地が良いわけではないものの、 首里に住むことをステータスとする風潮が残っており、これが那覇市東部エリアの強みにもなっています。

さらに、 那覇市中心部のベッドタウンであることからも、首里地区の賃貸需要は強いと言えるでしょう。

 

このほか、ゆいレール(那覇市の中心部を走るモノレール)が首里駅から那覇空港駅までを繋いでいることから、首里地区はゆいレールと密接な関係にあります。

県庁前駅まで15分、那覇空港駅まで27分で行くことができ、 交通の便は良いと言えるでしょう。

また、首里地区から浦添方面へのゆいレールの延伸計画に伴い、ここ数年で環境の変化が起きている地域でもあります。

これについては、後程解説します。

 

那覇新都心と隣接する「真和志地区」

 

真和志地区は、首里地区よりも西よりに位置しており、 より那覇市の中心に近いエリアです。

真和志地区の特徴は、なんといっても那覇新都心と隣接していることにあります。

このため、那覇市の中心エリアとして大変栄えており、しかし那覇新都心に属していない手軽さもあり、需要は高く、真和志地区は那覇市で最も人口が密集しています。

それだけに、交通渋滞が深刻なエリアとしても有名です。ゆいレールの駅から近いことが救いと言えるでしょう。

 

 

那覇市東部の投資環境

 

那覇市全体で、もっと言えば沖縄県全体で、不動産投資にとっては非常に良い環境となっています。

那覇市東部に絞って、投資先としての特徴を上げていくと、以下のような特徴が挙げられます。

 

地価が上昇しており新築不動産投資は難しい

まず、那覇新都心は言うに及ばず、それを除く那覇市全域において、地価が大きく上昇しています。

以下の表を見ても、那覇市全体の地価の上昇ぶりがよくわかるでしょう。

地価 名護市 うるま市 沖縄市 宜野湾市 浦添市 那覇市新都心 那覇市 豊見城市 石垣市 宮古島市
2009 56,900 43,500 67,700 80,800 100,900 220,000 167,200 75,600 67,800 28,500
2010 55,900 42,600 66,500 80,200 99,400 215,000 163,700 73,500 64,800 27,300
2011 55,300 43,100 65,700 79,800 100,800 214,000 160,500 72,300 62,800 28,600
2012 54,700 42,400 65,000 78,900 100,000 211,666 152,600 71,200 61,000 27,700
2013 54,200 43,900 64,600 79,000 98,300 216,666 153,800 70,300 59,800 27,100
2014 54,000 43,700 65,800 81,900 104,300 222,333 157,900 70,000 59,300 26,800
2015 54,000 43,600 66,100 82,100 105,500 228,000 160,800 70,700 59,700 26,500
2016 53,900 44,200 66,100 80,300 106,900 241,666 165,500 72,000 60,500 26,500
2017 53,900 44,800 68,500 82,500 107,600 258,000 177,100 74,300 61,000 26,400
2018 53,900 46,300 73,000 88,300 115,700 297,666 192,100 79,400 63,300 27,000
2011-2018合計増減率 -5.27% 6.44% 7.83% 9.28% 14.67% 35.30% 14.89% 5.03% -6.64% -5.26%
2011-2018平均増減率 -0.60% 0.70% 0.84% 0.99% 1.53% 3.42% 1.55% 0.55% -0.76% -0.60%

ただし、那覇市東部の地価は那覇市平均よりも低めとなっています。

那覇市の地価は、那覇市西部の久茂地などがけん引している部分が多く、東部で最も高い壺屋2丁目の土地で23万2000円/㎡、首里池端町の土地で17万9000円/㎡といった塩梅です。

とはいえ、 沖縄県内ではかなり高くなっていることは間違いなく、新築不動産投資は簡単ではありません

 

また、ゆいレールの延伸計画によって駅が新設されるエリアでは、数年前からさかんに投資が行われたことによって、特に上昇率が高くなっています。

もちろん、物件取得単価も年々上昇しているため、あまり高い利回りは期待できないケースが多いです。

人口は横ばいだが那覇市中では最も人口が多い

しかし、不動産投資環境の良しあしは、利回りだけで決まるものではありません。

高利回りでも、収益が安定しなければ投資効率は悪くなります。

しかし、利回りが高いとは言えないエリアでも、安定して着実に利益を得られるならば、それは収益性の高いエリア、投資に適したエリアと言えるのです。

その意味において、那覇市東部の投資環境は決して悪くありません。

なぜならば、以下の表の通り、 那覇市東部は那覇市の中でも最も人口が多いからです。

人口 那覇新都心 那覇市西部 那覇市東部 那覇市南部 宜野湾市 石垣市 浦添市 名護市 沖縄市 豊見城市 うるま市 宮古島市
2011 17,462 70,817 167,513 60,301 92,467 48,123 111,463 60,160 135,363 57,957 118,994 54,720
2012 18,048 71,554 167,849 60,470 93,751 48,199 112,413 60,472 136,330 58,794 119,558 54,784
2013 18,123 71,877 168,053 64,013 94,062 48,224 113,089 60,768 137,167 59,634 119,857 54,310
2014 18,753 71,829 168,274 61,156 94,991 48,559 113,453 61,550 137,706 60,609 120,372 54,802
2015 19,077 71,835 165,877 61,379 95,676 48,662 113,441 61,747 138,010 61,492 120,863 54,476
2016 19,372 71,540 174,711 61,710 96,442 48,870 113,143 61,887 139,245 62,374 121,319 54,266
2017 19,647 71,188 167,150 62,079 97,043 48,943 113,421 62,204 140,208 62,669 121,794 54,083
2018 19,791 70,764 166,485 61,904 97,112 48,946 113,405 62,410 140,295 63,655 122,185 54,135
2011-2018合計増減率 13.34% -0.07% -0.61% 2.66% 5.02% 1.71% 1.74% 3.74% 3.64% 9.83% 2.68% -1.07%
2011-2018平均増減率 1.80% -0.01% -0.09% 0.38% 0.70% 0.24% 0.25% 0.53% 0.51% 1.35% 0.38% -0.15%

 

那覇市は新都心を除く全域で人口が安定推移を見せており、西部が約7万人、南部が約6万人で安定して推移しています。

東部の人口も 横ばいが続いていますが、西部と南部を合わせた人口よりも多い16~17万人で推移しています。

これは、那覇市西部には商業地域が多く、那覇市南部には那覇空港や自衛隊基地があるため、那覇市東部よりも住宅地が少ないためです。

沖縄県全体では人口の増加が続いているため、横ばいの推移にはあまりインパクトがありませんが、減少していないことは評価して良いでしょう。

 

家賃は上昇、単身向け物件が苦戦

人口が横ばいに推移し、家賃も横ばいであれば、取り立てて投資に適しているとは言えません。

しかし那覇市東部の家賃は、以下の表に示す通り、すべての間取りで順調に上昇しています。

1R~1LDK 2DK~2LDK 3DK~3LDK
県平均 那覇市東部 乖離率 県平均 那覇市東部 乖離率 県平均 那覇市東部 乖離率
2009 38,500 38,500 0.0% 51,500 50,985 -1.0% 62,500 64,500 3.2%
2010 40,300 39,897 -1.0% 51,600 51,497 -0.2% 62,500 64,188 2.7%
2011 38,800 38,296 -1.3% 51,700 53,303 3.1% 62,300 65,602 5.3%
2012 38,900 39,211 0.8% 50,400 50,602 0.4% 62,400 67,330 7.9%
2013 41,100 41,511 1.0% 53,300 55,699 4.5% 65,500 71,919 9.8%
2014 43,800 43,493 -0.7% 53,800 57,781 7.4% 66,500 69,027 3.8%
2015 44,200 42,653 -3.5% 54,800 57,814 5.5% 67,100 72,133 7.5%
2016 43,200 43,114 -0.2% 53,500 58,048 8.5% 66,400 73,704 11.0%
2017 45,900 46,910 2.2% 56,700 59,195 4.4% 68,300 73,491 7.6%
2009-2017合計増減率 19.2% 21.8% 10.1% 16.1% 9.3% 13.9%
2009-2017平均増減率 2.22% 2.50% 1.21% 1.88% 1.12% 1.64%

 

この表の「乖離率」とは、沖縄県全体の平均的な家賃と、那覇市東部の家賃との乖離です。

まず、1R~1LDKの単身者向け物件ですが、県平均の家賃に対してマイナスの乖離に陥っていることも多いです。

しかし、 上昇率は申し分なく、賃貸需要はしっかりしていることが分かります。

 

供給過剰に陥っているわけではなく、県平均の伸び率が高かったことに比べて、東部の家賃が追い付かなかったということでしょう。

単身者向けに堅調な需要を誇っています。

また、家族世帯の需要も大きく、これは家族向け物件の家賃がしっかりと上昇していることから分るでしょう。

 

さらに、 東部の真嘉比地域には注目しておくべきでしょう。

この地域は市街地開発地区に含まれており、那覇新都心と同等の位置づけとなっていることから、賃貸需要が大きく伸びています。

気になるのが、首里地区から浦添方面に向けて、特に石嶺近隣に物件が急増していることにより、那覇市東部での競争が高まりつつあることです。

これは、上記でも触れたゆいレールの延伸計画の影響です。

今後、ゆいレールの延伸によって投資環境がどうなっていくか、しっかり見守っていく必要がありそうです。

 

稼働率は高く供給過剰の問題はなし

局所的に問題を抱える那覇市東部ですが、投資環境の良さは稼働率からも分かります。

名護市 うるま市 沖縄市 宜野湾市 浦添市 那覇新都心 那覇市 豊見城市 石垣市 宮古島市
2009 88.0% 91.0% 95.0% 96.0% 92.0% 97.0% 75.0% 94.0% 87.0% 95.0%
2010 84.3% 88.0% 92.6% 92.1% 93.0% 97.5% 77.0% 92.6% 88.2% 98.0%
2011 89.0% 87.0% 90.0% 92.0% 90.0% 94.0% 82.0% 93.0% 91.0% 98.0%
2012 90.0% 88.0% 88.0% 88.0% 89.0% 96.0% 87.0% 94.0% 94.0% 99.0%
2013 94.0% 93.0% 93.0% 87.0% 88.0% 94.0% 90.0% 92.0% 91.0% 97.0%
2014 93.0% 93.0% 84.0% 92.0% 89.0% 96.0% 92.0% 88.0% 93.0% 98.0%
2015 89.4% 85.5% 82.4% 92.9% 91.0% 97.3% 90.4% 88.7% 93.1% 99.7%
2016 90.0% 87.3% 84.1% 93.4% 92.3% 98.1% 92.9% 90.4% 97.5% 99.8%
2017 94.5% 88.0% 92.0% 94.0% 92.5% 97.5% 97.5% 94.4% 99.5% 99.7%

 

那覇市全体のデータになりますが、那覇市の賃貸物件の稼働率は、97.5%という非常に高い数字となっています。

東部で局所的に競争が高まっているとはいえ、これだけ高い稼働率になっているのですから、供給過剰には陥るなどの目立った問題は抱えていないとみてよいでしょう。

しばらくは、家賃の上昇と高い稼働率で推移すると思われます。

 

 

まとめ

 

家賃の上昇が続いていることからもわかる通り、東部を含む那覇市全域での賃貸需要は極めて堅調に推移しており、特に人気の高いエリアでは供給不足となっています。

特に、那覇新都心での供給不足が顕著と言えますが、新都心でカバーできなかった賃貸需要が東部に流れてきていることも十分に考えられます。

したがって、 モノレールの延伸に伴う需給バランスの変化など、気にしておくべき要素はあるものの、今後も 那覇市東部は不動産投資に適した環境と言えるでしょう。

最初のコメントをしよう

必須