賃貸物件の人気設備の最新ランキング発表!沖縄特有のニーズを汲み取る
不動産投資で利回りを安定させるためには、入居率と賃料を維持することが重要です。
そのためには、必要度・人気度が高い設備が欠かせません。
必要度の高い設備をしっかり備えることで、入居率と賃料の低下を防ぐことができます。
そして、付加価値の高い設備を導入することで、入居率と賃料の向上を図ることができます。
そこで本稿では、全国的な人気設備と沖縄での人気設備を対比し、沖縄不動産だからこそ価値の高い設備について解説していきます。
目次
全国レベルで見る人気設備
先日、『入居者に人気の設備ランキング』の2019年版が発表されました。
これは、全国賃貸住宅新聞が毎年発表しているランキングです。
管理会社にヒアリングすることで作られているため、全国的に入居者が求める設備を知ることができ、不動産投資家にとって大いに参考になります。
全国賃貸住宅新聞では、このランキングを
- 入居率に響く設備(その設備がなければ入居者に敬遠される設備)
- 付加価値が高い設備(その設備があることで入居率を高められる可能性がある設備)
に大別しています。
2019年版の結果をまとめると、以下の通りです(単身者向け物件の設備)。
入居率に響く設備 | 付加価値が高い設備 | |
1位 | 室内洗濯機置き場 | インターネット無料 |
2位 | TVモニター付きインターホン | オートロック |
3位 | インターネット無料 | 宅配ボックス |
4位 | 独立洗面台 | 浴室乾燥機 |
5位 | 洗浄機能付き便座 | ホームセキュリティ |
6位 | 備え付け照明 | 独立洗面台 |
7位 | オートロック | 24時間利用可能ごみ置き場 |
8位 | 宅配ボックス | ウォークインクローゼット |
9位 | BSCSアンテナ | ガレージ |
10位 | 暖房便座 | 追い炊き機能 |
優先的に導入すべき設備
まず、安定した賃貸経営のためには、入居率に響く設備を備えていない物件では、それを優先的に導入するのが望ましいでしょう。
例えば、1位の室内洗濯機置き場ですが、これは備えていない(ベランダなど室外に洗濯機を設置するタイプの物件)が少数派です。
入居者の多くが「当然の設備」と考えているため、競争力を損なわないために重要な設備と言えるでしょう。
また、 全国的にセキュリティ性の高さが求められるようになっている昨今、TVモニター付きインターホンの需要も高いです。
TVモニター付きインターホンは、まだまだ標準設備とは言えませんが、特に単身の女性からのニーズが高く、徐々に「欠かせない設備」になってきているようです。
オートロックにも同様のことが言えます。
導入して損のない設備
また、ランキングを見ると、入居率に響く設備と、付加価値が高い設備の両方にランクインしている設備も多いです。
そのような設備も、優先的に導入すべき設備と言えるでしょう。
例えば、 インターネット無料設備を備えていない物件は競争力を大きく欠く可能性があり、なおかつインターネット無料設備を備えることで付加価値も期待できることとなります。
この場合、入居率の低下を防ぐためにはインターネット無料設備が欠かせない設備であり、同時に入居率の上昇を期待することもできる、すなわち「導入すべきであり、導入して損のない設備」と言えます。
同じく、宅配ボックスなども価値の高い設備です。
現在、 宅配ボックスは標準設備とは言えませんが、社会的なニーズは急速に高まっています。
これは、
- 共働き世帯が増えたことで宅配便の受け取りが難しくなっていること
- インターネットショッピングの普及によって宅配便の取扱個数が急増しており、運送業者の負担や人材不足が深刻化していること
などによります。
これを受けて、政府も宅配ボックスの普及を後押ししています。
したがって、宅配ボックスを備えていないことで入居率の低下を招くケースも徐々に増えつつあり、なおかつ宅配ボックスが高い付加価値をもたらすことも多いです。
そのため、これも「導入すべきであり、導入して損のない設備」と言えます。
必要と人気から考える
以上のように、設備の必要度と人気度を踏まえて考えると、賃貸経営を円滑に進めるためには、
- 入居率に響く設備のうち、例えば上位3位の「必要不可欠な設備」を備えていない物件では、積極的に導入していく
- 入居率に響く設備のうち、例えば4位以下の「必要度が高い設備」を備えていない物件では、同時に付加価値が高い設備を優先的に導入していく
- 必要度がそれほど高くないものの、付加価値が高い設備については、周辺エリアで競争力を高める必要が生じた場合や、賃料アップなどの明確な目的があり、効果が期待できる場合に限って導入を検討する
といった流れで進めるのが好ましいでしょう。
沖縄不動産ではどうか?
上記の通り、人気設備ランキングは賃貸経営の参考になります。
これによってニーズの動向を把握し、設備に投資するならば、少なくとも的外れな設備投資に踏み切るリスクはかなり低くなります。
これが、入居率や賃料の維持・向上につながります。
ただし、全国賃貸住宅新聞のランキングには、ひとつ欠点があります。
それは、このランキングはあくまでも全国的に必要度や人気度が高い設備のランキングであって、特定の地域のランキングではないことです。
つまり、このランキングを参考にすることで、大きな失敗を防ぎ、成功の確率を高められるものの、 地域の特性によって求められる設備が異なる場合には、的外れな投資になる可能性があるのです。
そこで、全国賃貸住宅新聞のランキングから全国的な人気動向を把握すると同時に、沖縄の特性を考え、沖縄不動産での人気動向を把握し、
- 全国的な動向と一致する設備を優先的に導入する
- 全国的には必要度・人気度が低くとも、沖縄での必要度・人気度が高い設備は積極的に導入する
- 全国的には必要度・人気度が高くとも、沖縄での必要度・人気度が低い設備は後回しにする
などの工夫が必要となります。
沖縄不動産の設備のニーズ
沖縄不動産の設備のニーズを知るために、おきぎん経済研究所が毎年発表している『おきぎん賃料動向ネットワーク調査』が参考になります。
この調査は、全国賃貸住宅新聞の人気設備ランキングが
「入居率に響く設備」と「付加価値が高い設備」を調査しているのとは異なり、
「入居率に響く設備(無いと物件の人気が下がる設備)」のみを調査しています。
しかしながら、この調査結果を見ることによって、 沖縄不動産で最低限求められる設備を知ることができ、大変参考になります。
また、調査年度をさかのぼって知ることによって、沖縄不動産における設備ニーズの変遷も知ることができ、そこから沖縄不動産業界の変化を見るのにも役立ちます。
最新のデータである2018年の調査結果と、前年にあたる2017年の調査結果をまとめると、以下のようになります。
設備 | 2017年 | 2018年 | ||
回答数 | シェア | 回答数 | シェア | |
バス・トイレ別 | 16 | 17.6% | 11 | 17.2% |
駐車場2台 | 13 | 14.3% | 8 | 12.5% |
エアコン | 12 | 13.2% | 11 | 17.2% |
室内洗濯場 | 11 | 12.1% | 7 | 10.9% |
インターネット対応 | 11 | 12.1% | 11 | 17.2% |
駐車場1台 | 7 | 7.7% | 8 | 12.5% |
ペット可 | 7 | 7.7% | 2 | 3.1% |
宅配ボックス | 5 | 5.5% | 0 | 0.0% |
オートロック | 4 | 4.4% | 3 | 4.7% |
収納 | 2 | 2.2% | 1 | 1.6% |
ガス乾燥機 | 2 | 2.2% | 1 | 1.6% |
エレベーター | 1 | 1.1% | 1 | 1.6% |
合計 | 91 | 100% | 64 | 100% |
バス・トイレ別
沖縄不動産では、2017年と2017年の両年において、バス・トイレ別の設備が首位となっています。
全国的な設備ニーズではランク外であったことと比べて、顕著な違いと言えるでしょう。
全国的にも、バス・トイレ別という設備はニーズが高いです。
もっとも、全国ランキングではランクインしていません。
その理由として、
- 全国賃貸住宅新聞では、バス・トイレ別を設備として認識していない
- 全国的には、バス・トイレ別がそれほど重要ではない
という理由が考えられます。
1についてですが、バス・トイレ別を「設備」と考えるのではなく、
「風呂とトイレが分離している」という間取りの一部と考え、ランキングから除外している可能性があります。
ただし2のように、バス・トイレが別でなくとも、入居率にそれほど影響を与えないこともあります。
例えば、学生や外国人など、設備・間取りの充実よりも賃料の安さを重視する層をターゲットとする賃貸経営では、ユニットバスでも何ら問題ないことが多いです。
そのようなケースでは、バス・トイレ別の付加価値はあまり期待できません。
したがって、全国的なニーズで考えるならば、ユニットバス形式の物件が、
バス・トイレ別の物件よりも大きく劣るとは限らず、
「ユニットバスの物件でも、十分な賃貸需要が見込める」と考えるベテラン投資家は少なくありません。
一方、こと沖縄においては、バス・トイレ別であることが強く求められるようです。
実際、沖縄で賃貸物件を探している人の多くが、希望条件としてバス・トイレ別に真っ先に挙げることが多いとされています。
また、沖縄不動産では、ユニットバスの物件に対するバス・トイレ別の物件の割合が年々高まっており、徐々に標準設備になりつつあります。
今後、バス・トイレ別であることの重要性が高まってくるでしょう。
インターネット対応・エアコン
2018年の調査結果では、インターネット対応とエアコンの回答数が、バス・トイレ別と同じ11件となっています。
この結果から、沖縄不動産ではインターネット対応とエアコンの設備が重要であり、この設備を欠くことで入居率に悪影響を与える可能性が高いです。
インターネット対応は、全国的に見ても人気が高く、入居率や入居者満足度を向上させる付加価値も期待できます。
これは、スマホが普及してきたことが理由です。
誰もがスマホを利用している今、インターネット環境が欠かせないものとなりました。
インターネット回線を入居者自身で導入するのは手間もお金もかかるため、ネット環境がない物件が敬遠されるようになってきています。
今後も、インターネットを活用した技術は進歩していき、日常生活での重要性は高まっていくと考えられるため、沖縄不動産でも必要不可欠な設備と考えた方が良いでしょう。
なお、沖縄におけるエアコンの必要性は言うを俟ちません。
高温多湿の沖縄でエアコンがなければ、入居率が大きく低下します。
駐車場
次に、沖縄不動産は全国の不動産と比べて、駐車場のニーズが極めて高いという特徴があります。
沖縄には鉄道網がなく、ゆいレールがごく一部を運行しているだけです。
このため、沖縄では自家用車やバスなどが主要な交通手段となり、
単身者世帯の多くで1台の自家用車を所有しているのはもちろんのこと、
家族世帯では2台以上の自家用車を所有しているのが普通です。
このため、沖縄不動産では、単身者世帯では1台分の駐車場、家族世帯では2台分の駐車場が求められます。
必要不可欠であり、入居率を大きく左右する設備と言えます。
これも、全国的な人気設備と大きく異なるところです。
大都市圏では、自家用車を持たずに電車をはじめとする公共交通機関を使う人が多く、駐車場が人気設備にはなりません。
地方都市では自家用車の所有率が高まりますが、物件の近所で有料駐車場を確保できることが多く、これまた人気設備にはなりにくいです。
しかし、沖縄不動産では、自家用車の所有率が極めて高いことから、敷地内に駐車スペースを確保していることが望まれます。
特に、那覇市以外の多くの地域では、家族世帯が多いことから、駐車場2台分の確保が入居の判断基準になっているようです。
もし、敷地内に駐車スペースを確保しておらず、近所に有料駐車場もなければ、入居率が大きく低下する可能性があります。
一部エリアについて
なお、極めて限定的なエリア(わずか2.14㎢)である那覇新都心、エリアの西側を軍事基地や那覇空港が占めている那覇市南部などでは、敷地内に駐車スペースを確保することが難しいことも多いです。
そのようなエリアでも、 モノレール駅から近い立地であれば、敷地内と近所に駐車場がなくても賃貸需要を確保できる可能性が高いです。
モノレール駅から遠ければ、近所に有料駐車場があることが必須条件となります。
その他
調査結果を見ると、以上の他にも沖縄不動産での人気設備が挙げられていますが、どれも回答件数が少なく、2017年と2018年での回答件数の変化も誤差の範囲内でしょう。
いくつか、簡単に見ていきましょう。
ペット可
ペット可であるかどうかについては、 条件設定に属する要素であり、設備とは考えにくいです。
導入にあたってコストがかからず、退去時の原状回復費用を確保するために、敷金をしっかり取ったり、賃料を高めに設定したりすることによって、付加価値が期待できます。
もっとも、現在の沖縄では、多くのエリアで賃貸需要が高く、空室を埋めるためにペット可とする必要はあまりないでしょう。
宅配ボックス
宅配ボックスは、全国賃貸住宅新聞のランキングでは8位であり、 沖縄不動産ではそれほど人気が高いわけではなく、2018年の回答件数は0件となっています。
このことから、全国的にみても、沖縄だけでみても、宅配ボックスがないからといって入居率が大きく下がることはなさそうです。
しかし、既述の通り宅配ボックスのニーズは年々高まっており、全国ランキングで付加価値が高い設備として挙げられています。
したがって、賃貸需要が堅調な現在、沖縄不動産で宅配ボックスを導入する必要はないものの、付加価値戦略としての利用価値はありそうです。
宅配ボックスが普及していない一方、潜在的なニーズは大きいため、宅配ボックスの導入によって入居率が高まったり、賃料がアップしたりすることが期待できます。
特に、 単身者向けの沖縄不動産に投資する場合、仕事などで宅配便の受け取りが難しい入居者が多くなるため、宅配ボックスが強みになると考えられます。
オートロック
オートロックも、回答数が少ない設備です。全国賃貸住宅新聞のランキングでも7位であり、それほど重要ではありません。
しかしながら、付加価値は高いと考えられており、付加価値戦略としてオートロックが役立ちそうです。
沖縄不動産でも、オートロックの導入が付加価値になる可能性があります。
とはいえ、他の都道府県に比べると、期待できる付加価値は小さくなるかもしれません。
というのも、沖縄は治安がそこそこ良いためです。
2018年の侵入盗の発生件数・発生率を調べてみると、47都道府県のうち、沖縄県は発生件数では30位、発生率では35位となっており、比較的少ないことが分かります。
オートロックは、主に侵入盗を防ぐための設備であるため、被害の多い都道府県ほど付加価値は高くなり、
このように考えると、沖縄不動産においては、オートロックの人気と期待できる付加価値は、やや低いと考えるのが妥当でしょう。
まとめ
本稿では、賃貸物件の人気設備について、全国を対象とするデータと、沖縄県だけを対象とするデータと比較しながら見ていきました。
全国的な人気設備は、沖縄不動産でも人気が高いことが多いため、参考にすべきです。
しかし、全国では人気が高いものの沖縄では人気が低い、
あるいはその逆のパターンもあるため、沖縄不動産投資では沖縄特有の事情も踏まえて、物件選びやや設備投資に活かしていくことが重要です。