沖縄都市圏の中心「沖縄市」その不動産投資環境の実態は?

沖縄市は、沖縄県内で第2位の人口を擁しており、沖縄本島中部地域を代表する都市です。このため、 沖縄不動産投資に取り組むにあたって注目しておきたい都市です。

もっとも、現在の沖縄市の状況は、あえて沖縄不動産投資のターゲットとして考えるにはやや問題があります。

なぜならば、沖縄市は人気や家賃の動向において、 他の主要都市に劣ると考えられるためです。

本稿では、 沖縄市の人気や家賃動向を含めた不動産投資環境について、詳しく解説していきます。

 

沖縄市と沖縄都市圏の人口は順調に増加中

 

沖縄市は、沖縄県内で那覇市に次いで人口が多い都市であり、沖縄本島中部の沖縄都市圏(沖縄市・うるま市・嘉手納町・北中城町・読谷村などによって構成される都市圏)の中心都市となっています。

沖縄市には嘉手納基地をはじめ米軍基地があることから、様々な文化が混ざりあったことで、沖縄県内でも特に独特なエリアとされています。

このほか、芸能活動が盛んであること、最もエイサーが盛んであることなども有名です。

 

沖縄都市圏は、沖縄県内でも特に人口の増加が激しい地域とされており、その筆頭である沖縄市の人口も順調に増加を続けています。

他の主要都市と比較してみると、以下のようになっています。

人口 那覇新都心 那覇市 宜野湾市 石垣市 浦添市 名護市 沖縄市 豊見城市 うるま市 宮古島市
2011 17,462 298,631 92,467 48,123 111,463 60,160 135,363 57,957 118,994 54,720
2012 18,048 299,873 93,751 48,199 112,413 60,472 136,330 58,794 119,558 54,784
2013 18,123 303,943 94,062 48,224 113,089 60,768 137,167 59,634 119,857 54,310
2014 18,753 301,259 94,991 48,559 113,453 61,550 137,706 60,609 120,372 54,802
2015 19,077 299,091 95,676 48,662 113,441 61,747 138,010 61,492 120,863 54,476
2016 19,372 307,961 96,442 48,870 113,143 61,887 139,245 62,374 121,319 54,266
2017 19,647 300,417 97,043 48,943 113,421 62,204 140,208 62,669 121,794 54,083
2018 19,791 299,153 97,112 48,946 113,405 62,410 140,295 63,655 122,185 54,135
2011-2018合計増減率 13.34% 0.17% 5.02% 1.71% 1.74% 3.74% 3.64% 9.83% 2.68% -1.07%
2011-2018平均増減率 1.80% 0.02% 0.70% 0.24% 0.25% 0.53% 0.51% 1.35% 0.38% -0.15%

 

急速に発展している那覇新都心、那覇市のベッドタウンとして急速に発展している豊見城市の人口が急増しており、それらに比べて緩やかな増加となっているものの、沖縄市も2011年から2018年までで3.64%の増加となっています。

多くの都道府県あるいは市区町村で人口減少が続いているのですから、 沖縄市の人口は順調に増加していると言えるでしょう。

 

沖縄市の不動産投資環境

 

では、沖縄市の不動産投資環境を見ていきましょう。

沖縄市の不動産投資を考える際には、沖縄市単体でみるだけではなく、 沖縄都市圏全体の動向も意識しながら見ていくのがポイントです。

 

地価は上昇中だが安い

沖縄県全域で地価が上昇傾向にありますが、沖縄市の地価も上昇を続けています。

他の主要都市と比較してみると、以下のようになります。

地価 名護市 うるま市 沖縄市 宜野湾市 浦添市 那覇市新都心 那覇市 豊見城市 石垣市 宮古島市
2009 56,900 43,500 67,700 80,800 100,900 220,000 167,200 75,600 67,800 28,500
2010 55,900 42,600 66,500 80,200 99,400 215,000 163,700 73,500 64,800 27,300
2011 55,300 43,100 65,700 79,800 100,800 214,000 160,500 72,300 62,800 28,600
2012 54,700 42,400 65,000 78,900 100,000 211,666 152,600 71,200 61,000 27,700
2013 54,200 43,900 64,600 79,000 98,300 216,666 153,800 70,300 59,800 27,100
2014 54,000 43,700 65,800 81,900 104,300 222,333 157,900 70,000 59,300 26,800
2015 54,000 43,600 66,100 82,100 105,500 228,000 160,800 70,700 59,700 26,500
2016 53,900 44,200 66,100 80,300 106,900 241,666 165,500 72,000 60,500 26,500
2017 53,900 44,800 68,500 82,500 107,600 258,000 177,100 74,300 61,000 26,400
2018 53,900 46,300 73,000 88,300 115,700 297,666 192,100 79,400 63,300 27,000
2011-2018合計増減率 -5.27% 6.44% 7.83% 9.28% 14.67% 35.30% 14.89% 5.03% -6.64% -5.26%
2011-2018平均増減率 -0.60% 0.70% 0.84% 0.99% 1.53% 3.42% 1.55% 0.55% -0.76% -0.60%

 

沖縄県内の地価は、那覇市をはじめ大きく伸びている地域、沖縄市のようにそれなりに伸びている地域、名護市のように値下がりしている地域に分けられます。

沖縄県全体の地価は10万円/㎡程度ですから、それと比較すれば 73000円/㎡の沖縄市の地価は安いと言えます。

 

家賃は伸び悩む

次に、沖縄市の家賃を見ていきましょう。

沖縄県では、賃貸物件の家賃が上昇を続けており、これが沖縄不動産投資の魅力にもなっています。

しかし沖縄市の家賃は伸び悩んでおり、県平均を下回っています。

1R~1LDK 2DK~2LDK 3DK~3LDK
県平均 沖縄市 乖離率 県平均 沖縄市 乖離率 県平均 沖縄市 乖離率
2009 38,500 39,386 2.3% 51,500 48,513 -5.8% 62,500 57,250 -8.4%
2010 40,300 38,406 -4.7% 51,600 47,111 -8.7% 62,500 56,813 -9.1%
2011 38,800 36,782 -5.2% 51,700 45,289 -12.4% 62,300 56,382 -9.5%
2012 38,900 35,594 -8.5% 50,400 45,007 -10.7% 62,400 56,971 -8.7%
2013 41,100 40,812 -0.7% 53,300 49,409 -7.3% 65,500 56,920 -13.1%
2014 43,800 39,683 -9.4% 53,800 46,752 -13.1% 66,500 55,661 -16.3%
2015 44,200 41,150 -6.9% 54,800 48,608 -11.3% 67,100 58,713 -12.5%
2016 43,200 39,614 -8.3% 53,500 46,385 -13.3% 66,400 55,510 -16.4%
2017 45,900 37,317 -18.7% 56,700 47,912 -15.5% 68,300 54,230 -20.6%
2009-2017合計増減率 19.2% -5.3% 10.1% -1.2% 9.3% -5.3%
2009-2017平均増減率 2.22% -0.67% 1.21% -0.16% 1.12% -0.68%

 

この表のように、沖縄市の不動産はすべての間取りにおいて、 沖縄県の平均的な家賃を下回っています

また、2009年比での家賃も下落しており、沖縄県全域で家賃が上っていることと比べると、投資環境は芳しくありません。

 

沖縄県全体の平均では、家賃は大幅に上昇しています。

これは、特に沖縄本島南部地域における人口増加や地価の上昇、経済成長、賃貸需要の上昇などの影響です。

すでに示した通り、沖縄市でも人口は順調に増加しており、人口が増加すれば賃貸需要も増え、家賃は上がっていくのが普通です。

 

しかし、沖縄市の家賃は伸び悩んでいます。

これは、人口が増加したところで家賃が上昇しない理由、つまり 現状の人口と増加分の人口によって発生する賃貸需要を、十分にカバーできる供給があるということです。

また、 供給が不足するほど需要が増加するだけの人気がないとも言えます。

 

県平均家賃を常に下回っていることからも、県平均と比較してエリアとしての人気が低い、地域の成長率が低いといった状況がわかります。

このため、沖縄市の不動産投資環境は、他の主要都市に比べるとあまり良くないと言えます。

沖縄市に投資するよりも、 家賃が年々順調に上昇しており、稼働率も極めて高い 南部エリアでの投資を検討したほうが良いでしょう。

 

不動産投資環境が良くない理由

 

沖縄市の不動産投資環境があまり良くない原因は、沖縄市の地理にあるでしょう。

まず、沖縄市は沖縄都市圏の中心都市とはいっても、そもそも沖縄都市圏自体がそれほど発展しているとはいえません。

 

沖縄都市圏と那覇都市圏の規模を比較してみると、これがよくわかります。

那覇都市圏 沖縄都市圏
2010 2015 2010 2015
総人口(人) 830525 874,097 277006 327,514
人口増加率 5.2% 18.2%
域内総生産(百万円) 2352800 2,760,300 626400 690,200
経済成長率 17.3% 10.2%

 

やや古い(2010年と2015年の国勢調査)データですが、 那覇都市圏と沖縄都市圏には人口・経済ともに大きな差があります。

沖縄都市圏の人口は大きく伸びているものの、実質的な増加人数ではそれほど変わりません。

本来であれば、人口が大きく上昇している沖縄都市圏が、より大きく経済成長してもおかしくないのですが、人口増加で下回った那覇都市圏のほうが著しく経済成長しています。

 

これは、米軍基地が沖縄都市圏の約3割の面積を占めており、これによって都市活動に活用できる面積が大きく限られること、とりわけリゾート開発などで遅れを取っていることが原因と考えらえます。

このように、那覇都市圏と沖縄都市圏の間には、経済成長や人気において大きな差があるのです。

 

 

入居者目線で考えても、那覇市で働くために、経済発展が目覚ましく人気も高い那覇都市圏内に居住し、高い家賃を支払うことは納得できる人が多いでしょう。

しかし、 沖縄都市圏に居住するならば、それほど高い家賃を払う理由はないと考える人が多いはずです。

これが、 家賃の伸び悩みにつながっているのです。

 

実際に、沖縄県内で最も発展している那覇市周辺の都市、例えば浦添市・豊見城市・宜野湾市といった那覇都市圏に含まれる都市では、家賃が順調に上昇しています。

ところが、那覇都市圏からはずれたとたんに、沖縄市のごとく家賃の伸び悩みに陥るのです。

 

このことから、沖縄県全体の家賃の上昇をけん引しているのは、ほとんどは那覇都市圏の不動産であり、中部以北の都市では、いわゆる沖縄不動産投資の魅力、例えば家賃がぐんぐん上がっていること、将来的に高値で売れる可能性も高いことなどが期待しづらくなっています。

これは、稼働率にも表れています。

名護市 うるま市 沖縄市 宜野湾市 浦添市 那覇新都心 那覇市 豊見城市 石垣市 宮古島市
2009 88.0% 91.0% 95.0% 96.0% 92.0% 97.0% 75.0% 94.0% 87.0% 95.0%
2010 84.3% 88.0% 92.6% 92.1% 93.0% 97.5% 77.0% 92.6% 88.2% 98.0%
2011 89.0% 87.0% 90.0% 92.0% 90.0% 94.0% 82.0% 93.0% 91.0% 98.0%
2012 90.0% 88.0% 88.0% 88.0% 89.0% 96.0% 87.0% 94.0% 94.0% 99.0%
2013 94.0% 93.0% 93.0% 87.0% 88.0% 94.0% 90.0% 92.0% 91.0% 97.0%
2014 93.0% 93.0% 84.0% 92.0% 89.0% 96.0% 92.0% 88.0% 93.0% 98.0%
2015 89.4% 85.5% 82.4% 92.9% 91.0% 97.3% 90.4% 88.7% 93.1% 99.7%
2016 90.0% 87.3% 84.1% 93.4% 92.3% 98.1% 92.9% 90.4% 97.5% 99.8%
2017 94.5% 88.0% 92.0% 94.0% 92.5% 97.5% 97.5% 94.4% 99.5% 99.7%

 

全国的に見れば、沖縄県内全域で高い稼働率になっているのですが、主要都市の平均的な稼働率よりもやや低めになっています。

稼働率が低いとは言えないものの、決して高くもなく、人気や賃貸需要がイマイチであることが分かります。

 

エリアの見極めが大切

流動性重要

 

以上のように、沖縄不動産投資に適しているエリアと比較したとき、沖縄市は色々な問題があると言えます。

もちろん、沖縄市にも賃貸需要はありますし、人口も多く、不動産投資が困難であるとは言い切れません。特に、 市街地開発地区である美原・宮里・山内といった地域の賃貸需要は堅調です。

しかし、嘉間良・安慶田・住吉・越来などの地域では、 道路が狭いことや生活の利便性が悪いことなどから、賃貸需要は低く、家賃の低下も続いています。

 

したがって、沖縄市で興味のある売り物件を見つけたならば、それが 沖縄市のどのエリアにあるのかを良く調べ、現地調査も念入りに行ったうえで、慎重に検討していく必要があるでしょう。

その結果、良いと判断すれば投資するという判断も成り立つと思います。

 

まとめ

沖縄市は、沖縄県内で那覇市に次いで人口の多い都市であり、沖縄都市圏の中心をになっています。人口も順調に増加しています。

しかし、沖縄市のすぐ下には巨大な那覇都市圏があり、 沖縄都市圏は那覇都市圏に比べると人気も経済成長も大きく劣っています

このため、那覇市の各都市では家賃の上昇が続いている一方で、 沖縄市では家賃が伸び悩み、県内平均家賃を下回る結果となっています。

 

沖縄不動産投資に期待できる様々なメリットは、那覇都市圏の主要都市で得られやすく、沖縄市ではそのメリットが薄れる可能性があります。

したがって、沖縄市が不動産投資に適していないとは言えませんが、 沖縄不動産投資のターゲットとしては、やや選びにくいと結論付けることができます。

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