沖縄不動産で鉄筋コンクリート造が多い背景と2つの合理的な理由

沖縄県の不動産の構造は、大部分を鉄筋コンクリート造が占めています。このため、沖縄不動産投資でも鉄筋コンクリート造の物件に投資することとなります。

しかし、鉄筋コンクリート造の物件が多いとはいえ、どれくらい多いのか、なぜ多いのか、あまり理解していない人もいるのではないでしょうか。

このような情報を知ることによって、 沖縄不動産の特殊な部分を正しく把握し、投資に活かしてくことができます。

 

沖縄不動産は鉄筋コンクリート造ばかり

沖縄不動産投資の特徴は色々あるのですが、そのひとつに「利回りが低めである」という特徴があります。
では、なぜ利回りが低めであるかと言えば、 物件の取得単価が高いからです。

さらに、物件の取得単価が高い理由は、地価が高いこと、建築資材のコストが高いこと、職人不足であるこそ、そして 「鉄筋コンクリート造の物件が非常に多いこと」が理由となっています。

 

一般的に不動産と言えば、鉄筋コンクリート造の物件もあれば、木造の物件もあり、構造が一種類に偏っていることはありません。

しかし沖縄県では、ほとんどの物件が鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造を含む)となっており、県外の人が驚くところでもあります。

実際に、総務省統計局が発表しているデータを見ても、木造と鉄筋コンクリート造の比率は5:94(残る1%は「その他」)となっており、圧倒的に鉄筋コンクリート造が多くなっています。

したがって、沖縄不動産投資で購入する物件の構造も、鉄筋コンクリート造となります。

 

沖縄で鉄筋コンクリート造が多い理由

沖縄不動産が鉄筋コンクリート造ばかりと言われても、ピンとこない人もいると思います。沖縄の住宅の典型的なイメージと言えば、赤レンガの屋根にシーサーを据えた、平屋の木造住宅というイメージが強いからです。

しかし、このような木造物件は伝統的な物件であり、沖縄のどこにでもあるものではありません。探せば見つかるでしょうが、地元でも「沖縄の伝統的な古民家」として認識されており、 一般的な沖縄の住宅ではないのです。

このような木造住宅が見られなくなった背景には、 太平洋戦争の影響があります。

 

太平洋戦争における沖縄戦は熾烈を極め、米軍も甚大な被害を受けました。徹底した持久戦術をとる日本軍に対し、損害の増大を恐れた米軍は、やがて火力頼みの戦術を使うようになりました。有名なのが1944年10月10日の十・十空襲であり、これによって那覇市街の90%が焼失する被害を受けています。

日本軍の持久戦に応える唯一の方法として、米軍は火力によって沖縄を徹底的に蹂躙したわけですが、その一環として、侵攻にあたっては火炎放射器で一面を焼き尽くしていきました。

このような壊滅的な被害を受けた沖縄では、伝統的な木造住宅のほとんどが焼失してしまいました。また、山林も焼き尽くされたため、木材が手に入らなくなり、木造住宅を再建築することも困難となりました。

戦後、米軍の統治がなされたことで、日本から木材を提供して木造住宅を建築したり、政府が植林して山林を再生したりすることもできませんでした。そこで、米軍は現地住民に規格住宅を提供しました。規格住宅とは、定められた骨組みを工場で生産し、そこへ茅などの材料を使って仕上げる住宅です。

 

沖縄の現地住民たちは、ともかく住む場所を確保するため、米軍の提供する規格住宅を使うようになりました。

もちろん、かつての木造住宅とは全く異なる構造であり、これが木造住宅の代替となり、木造住宅が建築される機会はほとんどなくなってしまったことで、沖縄に根付いていた木造建築技術は失われていきました。

その後、 米軍基地内にコンクリート造の物件が建てられたことをきっかけに、民間でもコンクリート技術が使われるようになりました。このような流れによって、沖縄ではコンクリート造が普及していったのです。

 

もちろん、沖縄の伝統的な木造建築を守ろうとした建築家もいました。しかし、1949年7月3日、沖縄を襲ったグロリア台風によって、そのような動きも完全にへし折られてしましました。

グロリア台風は、瞬間最大風速64.5m/sの非常に強力な台風であり、住宅の全半壊は3万929戸という甚大な被害をもたらしました。瞬間最大風速が60ⅿ/sもあれば、軽自動車が吹き飛ばされたり、信号がゆがんだりするのですから、戦後間もない沖縄での被害は相当なものだったでしょう。

おそらく、グロリア台風の被害を受けた沖縄県では、「木造の物件が大きな被害を受け、コンクリート造の物件ではそれほど被害を受けなかった」のでしょう。それ以降、 木造はほとんど利用されなくなりました

 

当サイトの他の記事では、沖縄不動産のほとんどが鉄筋コンクリート造である理由について、台風やシロアリの被害に強いからだと解説しています。確かにそのようなメリットがあるのですが、鉄筋コンクリート造が多い理由を歴史的にさかのぼれば、以上のような流れがあるのです。

悲惨な歴史の中でコンクリート造が浸透していき、結果的にこれが台風やシロアリの被害にも強かったことによって、さらにコンクリート造の普及に拍車がかかったというのが実際のところです。

 

理由その1:鉄筋コンクリート造は台風に強い

このような歴史的背景を見てみると、沖縄で鉄筋コンクリート造の物件が多いことがよくわかるでしょう。

これが、台風の多い沖縄で良い影響をもたらしていることは間違いありません。沖縄では台風被害を毎年必ず受けますし、台風の勢いがある程度衰えてから上陸する本州の台風に比べれば、沖縄での台風はかなり勢いが強いです。

しかし、そのような勢いの強い台風が毎年いくつも上陸していながら、沖縄が台風によって大変な被害を受けているといった情報は、不思議と聞きません。
むしろ、勢いが弱いはずの本州のほうが、被害を受けている印象さえあります。

 

それも全て、沖縄の物件のほとんどが鉄筋コンクリート造だからです。木造物件ならばまだしも、台風によって鉄筋コンクリート造の物件を吹き飛ばされてしまうことは絶対にありません。

鉄筋コンクリート造の物件でも、台風によって地盤が緩んだり、土砂崩れが起きたりすることで、被害を受けるケースがあります。しかし、木造に比べて鉄筋コンクリート造のほうが、圧倒的に被害が小さくてすむことは間違いないのです。

 

理由その2:シロアリにも強い

 

これに加えて、高温多湿の沖縄県では、木造住宅ではシロアリ被害が懸念されます。

日本で一般的にみられるシロアリといえば、ヤマトシロアリとイエシロアリの2種類なのですが、沖縄を含む南西諸島では10種類以上のシロアリが分布しています。

シロアリの食物はセルロースですから、木造住宅は家全体が食べ物のようなもので、大きな被害をもたらします。

しかし、鉄筋コンクリート造であれば、シロアリ被害にも耐えることができます。これも、沖縄で鉄筋コンクリート造が好都合な理由となっています。

 

 

まとめ

本稿では、沖縄県で鉄筋コンクリート造の不動産がどれくらい多いか、またなぜ多いのかについて、詳しく解説していきました。

しかし、台風やシロアリに強いというメリットばかりではありません。沖縄は雨量が多く、高温多湿であるため、鉄筋コンクリート造の物件では 湿気によるカビが問題になることもあるのです。

沖縄不動産投資では、高確率で鉄筋コンクリート造の物件に投資することになります。

だからこそ、鉄筋コンクリート造が多い理由を知り、鉄筋コンクリート造とうまく付き合っていくことを考えることによって、不動産投資の成果を高めることもできるのです。

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