沖縄の不動産投資の利回りが低いたった2つ根本的な理由

不動産投資の魅力は、高利回りは期待しにくいものの、それなりの利回りで安定した収益を得られることにあります。

利回りは重要な要素といえるわけですが、沖縄不動産投資は一般的な不動産投資に比べて、利回りが低くなる傾向にあります。

本稿では、沖縄不動産投資の利回りが低くなりがちな理由と、 低い利回りでも投資すべき理由について解説していきます。

沖縄不動産投資の魅力と難点

沖縄県は、不動産投資の対象エリアとしては非常に優れています。

なぜならば、次のような理由があるからです。

  • 出生率が全国1位である
  • 死亡率が全国最下位である
  • 転入超過県の一つである
  • ↑これにより長期的に人口の増加が見込まれている

日本全体での人口は、すでに減少が始まっています。

不動産投資の最大のリスクは空室リスクであり、入居者がいないために賃料が得られず、収益性が下がってしまうリスクがあります。

人口が減少すれば賃貸需要も低下し、空室リスクは増加すると考えられます。

その点、人口が増加している沖縄では、空室リスクを低く抑えることができ、収益の安定性につながります。

不動産投資の最大のリスクをカバーできることによって、沖縄は不動産投資に向いていると言えるのです。

しかし、沖縄不動産投資が全てにおいて優れているわけではありません。

沖縄の不動産投資は、収益は安定しているものの、 一般的な不動産投資よりも利回りが低くなる傾向があるのです。

沖縄不動産投資の利回りが低い理由

では、沖縄不動産投資はなぜ利回りが低いのでしょうか。
それには、沖縄の経済環境の特殊性が理由となっています。

沖縄県の経済環境は、非常に厳しいと言われています。経済的に発展と自立が遅れているのです。

経済の発展が遅れている

沖縄経済の発展が遅れているのは、歴史的な背景が原因です。

沖縄は終戦後、米軍に統治された時代がありました。

当時の日本は、戦後の打ちのめされた状況から脱却すべく奮闘し、経済も目覚ましく発展していたのですが、 沖縄だけは完全にカヤの外だったのです。

昭和47年に本土復帰するまでの27年分、沖縄の発展は確実に後れを取ることになりました。

その後、沖縄振興開発特別措置法などによる国からの支援もあり、急速に発展することとなりましたが、米軍統治下の27年間の遅れを完全に取り戻せたとは言えないでしょう。

実際、沖縄の県民所得は全国最下位であり、他県との経済格差は否定できません。

観光業が発展しており、サービス業が経済を支えているのです。

製造業が非常に少なく、大規模で安定的な雇用が生まれにくいことから、 失業率も高い傾向にあります。

さらに、沖縄県は沖縄本島以外に多数の島々を有し、地域性が多岐にわたることからも、県全体としての経済発展に歩調をそろえていくことが難しくなっています。

経済の自立が遅れている

このほか、沖縄経済は自立においても遅れています。

米軍基地への依存

沖縄には、米軍に統治されていた歴史があり、いまだに米軍基地を構えています。
米軍基地関連の収入は年間2000億円以上にもなっているのです。

観光業が発達したとはいえ、米軍基地関連収入の影響は未だに無視できないものがあります。

言い方を変えれば、 米軍からもたらされる経済的影響なしには沖縄経済は成り立たないということです。

今後も米軍の完全撤退はほぼあり得ないため、基地関連収入にある程度依存した経済が続くでしょう。

これが経済の自立を遅らせる原因となっています。

国の支援への依存

さらに、国からの支援もいまだに続いています。
第二次世界大戦において、米軍の上陸によって、徹底的に蹂躙された悲惨な歴史を抱えています。

沖縄戦は、戦後長らく「国内唯一の地上戦」と言われてきました。

正確には、日本の領土で地上戦が行われた地域は他にもあるのですが、それほど悲惨であったということです。

沖縄戦における日本側の死者・行方不明者は188,136人で、沖縄県外出身の正規兵が65,908人、沖縄出身者が122,228人、そのうち94,000人が民間人であるとされています。

戦争なのですから、軍隊が死者を出すのはある程度仕方ありませんが、民間人も多く巻き込んでおり、さらに米軍の統治に至り、現在まで尾を引いています。

国としては、沖縄戦の被害者や苦難の歴史への補償の意味でも、経済的な支援の必要があります。

平成29年度の沖縄振興予算は3210億円が計上されており、これは平成28年度の沖縄県の一般会計予算7542億円の40%以上にもなります

これまでの累計では、10兆円以上の予算が投入されていることを考えても、沖縄経済が国からの支援なしではやっていけない、自立が遅れている地域だと言えます。

さらに、振興予算の増額を要望する声も非常に大きいものがあります。

沖縄は、米軍統治の歴史があり、現在も米軍との関係が強いです。
国防の要衝となっており、国は振興費を出さざるを得ない状況です。

振興費の存在が、沖縄経済の自立を遅らせていることは疑いがありませんが、今後もこの状況は続くと予想されます。

 

利回りへの影響

上記のように、沖縄は他の都道府県に比べて経済の発展と自立が遅れており、今後も大きな進展を期待することはできません。

では、このことによって、沖縄不動産投資の利回りにはどのような影響が出るのでしょうか。

家賃が低い

上記の通り、沖縄の県民所得は全国最下位です。
つまり、家賃が高い物件を借りることが難しいため、どうしても家賃を低く設定する必要があります。

投資の利回りは、投資元本に対する収益の割合で考えます。

例えば、1000万円の物件に対して年間100万円の賃料があれば、年間利回りは10%となります。

しかし、沖縄の特殊性から家賃を低く設定し、同じく1000万円の物件に対して年間賃料が80万円であれば、年間利回りは8%に低下します。

物件の取得単価も高い

家賃が低くなるだけではなく、沖縄不動産投資では投資元本も大きくなる傾向があります。

まず、沖縄は台風が非常に多く、台風の上陸は年間平均で7回程度にもなります。
また、高温多湿であるためシロアリ被害が起こりやすい環境でもあります。

したがって、沖縄の建物は木造ではなく、台風にもシロアリにも強い鉄筋コンクリート造が普通です。

鉄筋コンクリート造の物件は、建築費が最も高い構造です。

また、沖縄は土地が狭いです。沖縄は160の島から構成されていますが、沖縄本島の面積はその85%です。

さらに、沖縄の全面積のうち、米軍基地が8.23%を占めていることから、これも沖縄の土地を狭くする要因となっています。

土地が狭ければ、土地価格は高くなります。さらに、物件を建築するための資材を沖縄まで運搬するコストもかさみます。

そのほか、上記の通り沖縄経済の主要産業はサービス業であり、建築業の業者数も少ないです。

2014年のデータにおける建築業者数は、全国平均が1万959軒であるのに対し、沖縄県は4290軒となっており、人口10万人当たりの業者数では301.90軒(全国ランク45位)となっています。

  • 土地が高いこと
  • 鉄筋コンクリート造であること
  • 建築資材が高いこと
  • 職人不足であること

このように、あらゆる要素が重なって建築単価が高くなります。

このため、物件を取得するための投資元本は大きくなり、利回りは低下します。

1000万円の物件に対して年間100万円の賃料があれば、年間利回りは10%となります。しかし、投資元本が大きくなり、1200万円の物件に対して年間賃料が100万円となれば、年間利回りは8.33%に低下します。

利回りが低いのは避けられない

以上のように、沖縄不動産投資では家賃を低く設定する必要があり、なおかつ不動産の取得単価が高いという二重のマイナスを抱えています。

家賃が低いだけであれば、不動産の取得単価や経費率を下げることによって、利回りの維持が可能な場合もあります。

また、不動産の取得単価が高いだけならば、付加価値をもたせて家賃をあげるなど、工夫の余地もあるでしょう。

しかし、家賃と取得単価の両面でマイナスを抱えているのですから、どうしても利回りが低くなることは避けられないのです。

沖縄不動産投資の収益性を考える

以上のことから、沖縄で不動産投資に取り組むならば、利回りの低さは覚悟しなければなりません。

対処できるだけ対処しておきながらも、「沖縄の不動産投資では、基本的に利回りが低くなる」と当たり前のようにとらえて、 一般的な不動産投資の利回りを望まずに投資する必要があるのです。

しかし、これを以て沖縄不動産投資のメリットが大きく損なわれるとは言えないでしょう。

そもそも、 不動産投資の大きなメリットは、賃料収入という安定した収益が期待できることにあります。

収益性の真の意味は、「稼ぐ力」であり、収益性の指標は利益額のような実数ではなく、その利益を稼ぐための効率で考えます。

このため、単純な期待利回りだけでは、収益性を判断することはできません。

極端に言えば、取得単価に対する満室の場合の賃料を考えたとき、利回り15%が期待できる物件であっても、空室などによって半分しか入居されなければ、利回りは7.5%におちてしまいます。

一方、取得単価に対する満室の場合の期待利回りが10%の物件であれば、8割の入室で利回りは8%となり、前者の物件を上回るのです。

つまり、一見すると利回りが低いように見えても、安定して運用できる物件であれば、充分に収益性は高いといえるのです。

そして、沖縄不動産投資ではそれが可能です。

利回りが低いように見えても、長期的に人口増加が見込まれる沖縄では、より安定した収益を期待しやすく、不動産投資の収益性は却って高くなると考えられるのです。

もちろん、高い利回りを期待する人にとっては、沖縄不動産投資は向いていないかもしれません。

しかし、そもそも不動産投資の魅力は高利回りではなく、安定した収益性にあるのですから、高利回りで資産を運用したければ、不動産投資ではなくハイリスク・ハイリターンの投資を考えるべきでしょう。

い安定性を期待して不動産投資に取り組むからこそ、沖縄不動産投資は魅力的なのです。

まとめ

投資は、資産を増やすことを目的に取り組むものですから、利回りが重要な要素になることは間違いありません。

沖縄不動産投資は、一般的な不動産投資に比べると利回りが低くなる傾向にあるため、これは明らかなデメリットと言えます。

しかし、利回りが低くとも安定した収益性を期待できるのも、沖縄不動産投資の魅力です。

多少利回りが低くなるデメリットと、長期的な安定性を期待できるメリットを比較すれば、沖縄不動産投資にはデメリットを補って余りあるメリットがあると言ってよいでしょう。

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