沖縄の不動産の利回りが低い3つの理由。金利上昇リスクには耐えられる?
当サイトの記事では何度かお伝えしてきたことですが、多くの魅力がある沖縄不動産投資の中でも、特にデメリットとして挙げられるのは「利回りの低さ」です。
利回りが低ければ、収益性を悪化させる要因を吸収できる余裕に乏しく、金利が上昇してローンの返済額が増えてしまうことになれば、不動産投資に失敗するリスクが高まります。
そこで本稿では、 利回りが低い沖縄不動産投資でも金利上昇リスクに備える考え方について解説していきます。
目次
沖縄の不動産の利回りが低い3つの理由
金利上昇リスクを考えることに先立って、まずは沖縄不動産投資で利回りが低い理由を知る必要があります。
これを理解することにより、 なぜ利回りが低いのか、今後はどうなっていくのか、金利の影響を吸収できるかといったこともわかるためです。
沖縄不動産の利回りが低い原因には、以下のようなものが挙げられます。
利回りが低い理由その1:県民の所得の低さ
沖縄県の県民所得は全国最下位です。所得が低いということは、 稼ぎの中から家賃に充てられる金額が少ないということでもあります。
このため、沖縄県の賃貸物件では家賃設定を高くすることが難しく、これが沖縄不動産投資における元々の利回りの低さにつながっています。
確かに、沖縄県の経済成長率は全国的に見ても高く、県民所得は徐々に伸びています。
しかし、もともと県内総生産と県民所得が非常に低いため、経済成長率が高かったとしても、県民の生活への直接的な影響はまだまだ小さいです。
例えば、経済成長によって県民所得が1%増えた場合、県民所得が最も高い東京都と、最も低い沖縄県では、増加率は同じでも増加額は大きく異なります。
2015年のデータで言えば、東京都の県民所得は537万8000円ですから、1%の増加では5万3780円の増加となります。
一方、沖縄県の県民所得は216万6000円ですから、1%の増加では2万1660円となり、約2.5倍の差があることが分かります。
したがって、沖縄県が経済成長を続けていることは、不動産投資にも長期的に良い影響を与えると考えられますが、短期間では大きな効果は見込めず、むしろもともとの所得の低さが家賃に反映され、利回りは低めに推移しています。
利回りが低い理由その2:地価の上昇
沖縄県では、不動産投資の人気やリゾート開発の影響によって、地価が大幅に高まっています。
平成30年公示地価の前年度比較では、全国平均の上昇率が1.2%であったのに対し、沖縄県は全用途平均で9.3%の上昇となっています。
地価が上昇すれば、物件の取得価格は上がります。
これは、新築した場合であれば、土地の取得コストが高くなり、それが販売価格に反映されるからです。
中古物件でも、物件の価値は「土地+建物」で評価することから、売値が高くなります。
地価の上昇によって物件取得価格が高くなれば、利回りは相対的に低くなります。
利回りが低い理由その3:家賃の上昇
次に、家賃が上昇していることも理由と考えてよいでしょう。
家賃が上昇すれば利回りも高くなるため、利回りが低くなるとは思えないかもしれません。
しかし、 高い家賃が取れる、収益性の高い物件であれば、売り手は売値で売りたい、買い手は高く買っても良いと考えるため、価格が上昇するのが普通です。
このように、収益性をもとに売値を決めることよって、高い価格で取引される傾向が強くなります。
物件価格の上昇分を家賃に転嫁することができれば、利回りを維持することも可能です。
しかし、近年の沖縄では、家賃が順調に増加しているものの、 物件価格はそれを上回るペースで上昇しています。
例えば、元々3000万円だった物件が、5年後には5000万円で取引されたというケースがありますが、これなどが良い例でしょう。
この3000万円の物件において、年間300万円の利益が得られていたとすれば、この物件の表面利回りは10%です。
直近の5年間では、沖縄県の単身者向け物件の家賃が、毎年2.8%のペースで上昇しています。
これをそのまま適用すれば、元々の年間家賃300万円は5年間で約365万円へと上がっていることになりますが、表面利回りでは7.3%へと落ちています。
このように、家賃の上昇によって 物件価格が高くなったことにより、表面利回りが下がるのです。
楽観視は禁物!利回りの低下をどう考えるかが重要
以上のような理由から、沖縄不動産投資の利回りは低くなっています。
もっとも、購入後に利回りが低めになっていたとしても、賃貸経営を続けていくうちに、家賃や地価が上昇していき、利回りが徐々に高くなったり、高値で売却したりすることで、投資期間のトータルリターンは満足のいくものになるかもしれません。
とはいえ、購入前のシミュレーションというものは、購入後に地価や家賃の低下、空室率の状況など、色々な要素が悪化した場合を想定し、それでもなお採算が取れることを確認するために行うべきです。
購入後に地価や家賃が上昇したり、満室が続いたり、色々な要素がすべて問題なく回っていくことを想定するものではありませんし、そのようなシミュレーションでは採算がとれて当たり前です。それは、 単なる希望的観測です。
近年の沖縄不動産投資を調査すれば、今後もその傾向が期待できるものの、楽観視は禁物なのです。
したがって、基本的に低めの利回りになることを受け入れ、収益性をシビアにチェックしたうえで、購入を検討していくべきです。
それでこそ、金利が上昇した場合に赤字になるリスクを大幅に下げることができます。
では、収益性をシビアにチェックした場合に許容できるギリギリの利回りはどれくらいかと言えば、 表面利回り6%のラインと考えるべきです。
金利が上昇するとどうなる?収支シミュレーション
表面利回りを6%以上の水準に保っていれば、よほど悪い状況になっても、少なくとも赤字にはならず、賃貸経営そのものが破綻する可能性が低いと考えられます。
もちろん、本稿の主題である金利上昇リスクもカバーすることができます。
表面利回り6%の安全性は、具体的なシミュレーションをすれば分かります。
【表面利回り6%の収支シミュレーション】
ここでは、以下のように条件を設定します。
- 物件価格:1000万円(中古区分マンション)
- 頭金:3割
- 借入総額:700万円
- 返済期間:25年
- 借入金利:2%
- 年間家賃収入:60万円
- 年間の経費率:20%
- 10年後に売却を想定
この場合、10年間の収支シミュレーションは以下のようになります。なお、家賃の増減は見込んでいません。
期間 | 年間家賃 | 支出 | 経費率 | 収支 | ローン返済 | 返済余裕率 | 税引前CF |
1年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
2年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
3年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
4年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
5年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
6年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
7年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
8年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
9年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
10年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 358,543 | 1.34 | 121,457 |
この表の通り、危なげなく、安定した収益が得られることが分かります。
もちろん、今後も沖縄不動産投資の環境が悪化せず、家賃の上昇が続いたならば、収益性は高まっていきます。
ただし、ここではあえてそのパターンは検証しません。
金利はゆるやかに上昇していくものである
では、表面利回り6%を維持していれば、本当に金利上昇リスクに耐えられるのでしょうか。
確かに、金利が上昇すれば支払利息は多くなるため、収益性は圧迫されてしまいます。
借入総額が大きければ、金利上昇による損失は馬鹿になりません。
しかし、金利の上昇は緩やかに推移するものです。
そうだと言い切れるのは、 金利を長期的に、緩やかに上昇させるために、金利水準を安定させることは 国策だからです。
そもそも、なぜ金利が変動するのかと言えば、ローン金利は、日本政府が毎月発行している、新発10年国債の金利に連動しているためです。
長期的には、この10年国債の金利は上昇していくと考えられるため、それに連動するローン金利も上昇していくと考えるのが妥当です。
2019年3月27日現在、10年国債の利回りは-0.056%であり、過去10年間において最も高い利回りになったのは2009年6月11日の1.549%です。
政府が国策としている「長期にわたる緩やかな上昇」とは、 過去10年間のうち最も高い金利水準に近づきすぎることなく、10年間の最低の金利と最高の金利のレンジ内で上昇していくことです。
もし、最高の金利を超過すれば、それは「金利が急激に上昇している」と考えます。
そうならないためにも、政府は短期金融市場に資金を大量投入するなどして、金利の上昇を抑えます。
だからこそ、 金利は緩やかに上昇するものであり、急激な金利上昇によって不動産投資が破綻するとは考えにくいのです。
現実的に、10年以内に上昇する可能性がある金利の幅を考えると、よく上がっても1%程度といったところでしょう。
実際、アパートローンの審査をする金融機関が、対象となる物件の収益性を見る際には、一般的な借入条件で収支に問題がないのはもちろんのこと、金利が10年につき1%上昇した場合の収支はどうか、といった観点でもチェックします。
25年くらいの融資期間になることが多いため、当初の金利設定が2%であれば、4%まで上昇しても収支に問題がないか、問題がなければ貸し倒れの危険性は低いから融資できる、と考えるのです。
ゆるやかに上昇していくよう、政府が金利を操作しているのですから、 借入金利が今後10年以内に1.549%を超えるような事態にはならないでしょう。
基本的には、沖縄不動産投資で収支を考える際にも、同じ考え方をすれば問題ありません。
金利上昇時のシミュレーション
現在のアパートローンの借入金利は2~3%といったところですが、2%で借入れた場合、10年国債より約2.5%高い水準で借りていることになります。
このような差がある中で、基本的には差が縮まることはなく、一定の差を保って変動していきます。
では、表面利回り6%で沖縄不動産に投資したとき、金利の上昇が収益に与える影響を具体的に見てみましょう。
上記のシミュレーションと同様の条件で、借入金利だけを1%上昇させ、金利3%の条件でシミュレーションしてみると、以下のようになります。
【金利が3%に上昇した場合】
期間 | 年間家賃 | 支出 | 経費率 | 収支 | ローン返済 | 返済余裕率 | 税引前CF |
1年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
2年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
3年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
4年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
5年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
6年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
7年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
8年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
9年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
10年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 401,995 | 1.19 | 78,005 |
この通り、金利が1%上昇した場合にも、問題なく収支を確保することができます。
一応、最悪のパターン、つまり10年国債の金利が直近の10年間で最も高い金利である1.549%まで上昇し、借入金利が2%から4.549%に上昇した場合についても見てみましょう。
【金利が4.549%に上昇した場合】
期間 | 年間家賃 | 支出 | 経費率 | 収支 | ローン返済 | 返済余裕率 | 税引前CF |
1年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
2年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
3年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
4年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
5年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
6年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
7年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
8年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
9年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
10年目 | 600,000 | 120,000 | 20.00% | 480,000 | 474,457 | 1.01 | 5,543 |
このような最悪のケースを考えても、ギリギリではあるものの、このように赤字にはなっていないことが分かるでしょう。
かなりシビアなシミュレーションをしても、表面利回り6%をキープしていれば金利上昇リスクには耐えることができるのです。
金利が急上昇すれば不動産投資どころではない
ここまで読んで、「でも、金利が3%、4%と上がっていくことがないとは言い切れないのでは?」という疑問を抱く人もいるでしょう。
結論から言えば、その可能性もゼロではありませんが、ほぼゼロです。
なぜならば、そのように金利が急上昇してしまえば、 日本の金融システムがパニックに陥ってしまうからです。
金利が上昇すれば、国債価格は下落します。
日本の国債は、9割以上を国内の金融機関などが保有しているため、金利の急上昇によって国債価格が急落すれば、金融機関は多額の評価損を出すことになります。
金融機関の会計や日本国債の資産評価は特殊ですから、国債の評価損だけで、金融機関がパニックになるとは限りません。
それ以上に問題なのが、 金利の上昇による個人や企業への影響です。
特に住宅ローンやアパートローンなど、多額の融資を受けている個人は、金利が急激に上昇すれば、ローンの返済ができなくなります。
上記のシミュレーションでは、2.549%の上昇でギリギリ返済可能でしたが、これ以上に金利が上昇すれば、賃貸経営は破綻します。
そのようなことになってしまえば、沖縄不動産に限らず、全国の不動産において、返済困難な投資家が続出します。
金融機関の不良債権が一気に増え、大パニックに陥ることは必至です。
金利の操縦に失敗した政府が、これを放置することはできません。このようなパニックになれば、 返済期間の延長や金利の減免などの対策を施すはずです。
以上のことから、利回りの低い沖縄不動産でも、表面利回り6%を維持していれば、金利上昇リスクに対処することができます。
もちろん、基本的にはこれ以上に、高ければ高いほどリスクにも耐えられ、多くのリターンが得られます。
逆に言えば、利回りの低い沖縄不動産だからこそ、金利上昇リスクが心配な人ほど、表面利回り6%のラインは必ず守らなければなりません。
利回りが低くなりがちな沖縄不動産投資では、この点はシビアに考えるようにしましょう。
まとめ
物件取得価格が高くなっているため、沖縄不動産投資の利回りは徐々に下がってきています。
このため、多くはない収益の中で、いかに安定した運用をしていくかが重要となります。
当然ながら、金利上昇リスクもしっかりと考慮する必要があります。
金利の上昇を厳しめに設定してみて、赤字にならないことを確認しなければなりません。
少なくとも、 表面利回り6%をキープできるようでなければ、うまくいかないと考えてください。
将来的に期待できる沖縄で投資するのですから、長期的に大きな利益を得るべく、時間を味方につけた長期投資をするべきです。
ならば、長期にわたる投資期間中に金利が上昇することも想定しておくことが大切です。