沖縄不動産投資で新築は儲からない!その3つの理由を具体的に調べてみました
不動産投資に取り組む場合、中古物件を購入する方法のほか、土地を取得して賃貸物件を新築する方法があります。
近年の沖縄県では、新築の賃貸物件が増加していることから、新築での投資が良いのかもしれないと考える人もいるでしょう。
しかし、沖縄県は土地が高いこと、建築単価が高いことから新築コストが高くなる傾向があります。
さらに県民所得の低さから、新築でも家賃設定をそれほど高くできません。
本稿では、 沖縄不動産投資における新築の難しさについて、具体的なシミュレーションを用いながら解説していきます。
目次
地価の上昇に伴い新築コストが高くなってしまう
沖縄県での新築を難しくしている大きな原因が、地価の高さにあります。沖縄県の地価は、全国的に見てかなり地価が高く、上昇率も大きいです。
2018年公示地価を見ると、
- 全国平均・・・20万6598円/㎡
- 沖縄県・・・10万5275円/㎡
となっており、全国平均よりは低くなっています。
しかし、全国の地価のランキングを見てみると、
1位 | 東京都 | 102万9358円/m2 |
2位 | 大阪府 | 27万2556円/m2 |
3位 | 神奈川県 | 24万2398円/m2 |
4位 | 京都府 | 21万8541円/m2 |
5位 | 愛知県 | 18万0905円/m2 |
6位 | 兵庫県 | 15万3412円/m2 |
7位 | 埼玉県 | 15万2787円/m2 |
8位 | 福岡県 | 13万9735円/m2 |
9位 | 広島県 | 13万3807円/m2 |
10位 | 千葉県 | 11万9485円/m2 |
11位 | 宮城県 | 11万3278円/m2 |
12位 | 沖縄県 | 10万5275円/m2 |
となっています。
全国ランキングで12位につけていることから、全国的に見た沖縄県の地価の高さが分かります。
新築のためには土地を取得する必要があるため、これによって新築コストが高くなります。
都道府県ごとの地価では、東京都が最も高い102万9358円/㎡となっており、東京都の地価が全国平均を引き上げているため、沖縄県の地価が低く見えるのですが、そうではないことに注意が必要です。
また、沖縄県平均では上記のような価格になっているものの、沖縄県の中でも地価の高いエリアと低いエリアがあります。
不動産投資をするならば、賃貸需要が見込めるエリアを選ぶ必要があり、そのようなエリアでは地価も高くなります。
沖縄県で不動産投資に適している地域は、南部から中部にかけての都市、とりわけ那覇都市圏に含まれる地域ほど、賃貸需要は堅調です。
那覇都市圏の主要都市である那覇市、浦添市を見てみると、
- 那覇市・・・21万5509円/㎡
- 浦添市・・・13万7988円/㎡
となっており、経済規模の大きい都市ほど地価が高いことが分かります。
このような都市で新築を考えるならば、土地の取得単価はより高くなると考えておく必要があります。
駐車スペースが必須
このほか、沖縄不動産は全国平均と比べて駐車場の必要性が極めて高く、駐車場設置率(1世帯あたりの駐車場の数)は、
全国平均・・・93.8%沖縄県・・・136.6%となっています。
さらに、沖縄県の1世帯当たりの自動車普及台数は1.275台となっており、駐車場設置率がそれを上回っていることからも、駐車場の必要性が高いといえます。
このため、沖縄県ではモノレールの駅に近いなどの一部エリアを除き、戸数分の駐車場が必要とされます。
ファミリー向け物件では、戸数当たり2台分の駐車場が求められることも多く、十分な駐車場を備えていない物件は空室リスクが高くなります。
実際に、那覇市南部では土地の少なさから駐車場の確保が難しく、駐車場が足りていない家族世帯が隣接する豊見城市へと流出するケースがしばしば見られます。
したがって、新築にあたって土地を取得する際には、 駐車スペースとして広めの土地を取得する必要があり、これも新築コストを押し上げています。
もちろん建築単価も上昇している
沖縄県は、建築単価も高いです。というのも、沖縄県では台風やシロアリの被害が起きやすいことから、ほとんどの物件が鉄筋コンクリート造だからです。
このため、例えば
「2階建て、25㎡の1K8戸」といった新築アパートであれば、木造建築が最も一般的ですが、 沖縄県では鉄筋コンクリート造になるのが普通であり、これが建築単価の高さにつながっています。
また、離島であることから建築資材の運搬コストが高くなること、元々職人と建築業者が少なく人件費がかかることなどからも、建築コストが高いのです。
近年は不動産市場が盛り上がっていることから、これが資材と人件費をさらに押し上げる要因となっており、2017年の沖縄タイムスの記事によれば、2016年の建築単価は、
- 全国平均・・・19万7000円/㎡
- 沖縄県・・・21万1000円/㎡
となっており、沖縄県が全国平均を上回っています。
なお、琉球新報の2018年の記事では、2017年度の鉄筋コンクリート造の建築単価が発表されており、それによれば23万8600円/㎡まで上昇していることが分かっています。
このような建築単価の上昇も、新築コストを高める原因となっています。
具体的なシミュレーション
以上のように、沖縄は新築コストがかなり高くなります。
新築不動産投資に強みのある人、例えば多くの新築不動産を手掛けて実績を残してきた人や、立地の良い土地を相続などで手に入れた人などでなければ、沖縄県での新築不動産投資はかなり難易度が高くなります。
沖縄で活動する不動産投資家の中には、新築で成功している人もしばしば見られますが、そのような投資家が新築に取り組んだのは何年も前というケースがほとんどです。
土地も手に入れやすく、それなりの利回りを確保しやすい時期に新築し、その後に沖縄不動産投資が盛り上がったことによって、一気に軌道に乗せているのです。
このようなケースであれば、新築コストも今よりずっと安かったでしょうし、融資を引き出すことも容易だったと思います。
これから沖縄で新築するならば、新築コストは高く、融資もかなり厳しくなることを知っておく必要があります。
では、実際に沖縄県で新築を検討した場合、採算をとるのがどれくらい難しいかということを、具体的なシミュレーションによってみていきたいと思います。
【条件】
新築するにあたって、条件は以下のように設定します(ややざっくりとした条件で見ていきます)。
- 土地面積:200㎡・地価:21万5509円/㎡(那覇市の平均的な地価)
- 施工床面積:300㎡(居住スペースと共有スペースその他)
- 建築単価:23万8600円/㎡・構造:鉄筋コンクリート造、2階建て
- 間取り:25㎡の1K・全戸数:8戸
- 土地取得費用:4310万1800円
- 建築費用:7158万円
- 計:1億1468万1800円
- 月額家賃:5万7000円(2017年の新築1R~1LDKの那覇市平均)
- 利回り:4.8%(年間賃料547万2000円)
新築物件であれば、中古物件に比べて高めの家賃を設定できますし、稼働率も高いでしょう。
しかし、 新築コストが高くなりすぎるため、利回りが5%を下回っていることから、収益性が低くなります。
また、融資を受けるならば、頭金が3割程度は必要になるでしょう。
この場合、3440万円程度の頭金が必要になるため、この時点でかなりハードルが高くなってしまいます。
仮に融資を受けたとして、借入総額8000万円、借入期間30年、借入金利2%であれば、この新築の収益性は、以下の通りになります。
1~10年目は入居率も高く、設備が新しいため経費もあまりかからないため、経費率10%を見込むと、 税引前キャッシュフローで年間135万円が手元に残ります。
しかし、10年目を越えてから、とりわけ15年目前後で大規模修繕の必要も生じるため、経費率20%を見込み、さらに11年目からやや家賃が低下することを見込むと、11~20年目の税引前キャッシュフローは年間約67万円に減ります。
21年目以降、さらに家賃がいくらか低下し、設備の老朽化に伴う修繕費、デザイン性や機能性の陳腐化に伴う空室対策の影響なども織り込み、経費率が30%まで高くなることを想定すれば、年間の税引前キャッシュフローは約3万円まで低下してしまいます。
このように、借入総額の大きさに対する利回りの低さによって、築年数が浅く経費率が低いうちは問題ないとしても、年々経営が苦しくなり、満足のいく家賃収入が得られにくくなります。
このような収益性の問題から、そもそも金融機関が融資してくれない可能性も高いです。
収支シミュレーションでは、なんとか黒字を維持して完済にこぎつけることができますが、このシミュレーションには想定外の支出増は織り込まれていません。
例えば、この物件では 金利の上昇リスクに耐えられません。
金利が1%上昇すれば、1~10年目の税引前キャッシュフローは年間84万円、11~20年目までの税引前キャッシュフローは16万円、21年目以降は48万円の赤字に陥ります。
金融機関が収益性を評価する際には、借入期間中に金利が2%程度上昇した場合にも耐えられるだけの収益性がなければ、融資しないのが普通です。
したがって、この物件の新築コストを融資によって調達しようとしても、融資を受けられない可能性が高いです。
まとめ
もし、頭金を3500万円程度も用意できる資金力があるならば、それを使って中古アパートに投資したほうが、高い収益性を期待できます。
最近の沖縄不動産市場では、中古物件の価格も上がってきています。
これは、 中古物件の収益性が高くなっているため、高値で取引されるようになっているのです。
それでも、中古物件は新築するよりも確実に安く取得することができます。このため、新築よりも高い表面利回りが期待できます。
さらに、最近の沖縄不動産では、 中古物件でも高い稼働率を誇っており、那覇市の平均稼働率は97.5%にもなります。新築物件と中古物件の家賃のギャップもそれほど大きくはありません。
当然、 金融機関からの融資も引き出しやすくなるでしょう。
このように、土地の取得費用や建築費用にコストがかかりすぎ、収益性が低くなる新築物件よりも、中古物件のほうが沖縄県では投資に適しているのです。