沖縄観光ビジネスで起業が成功しやすい大きな理由は資金繰りにあった!
起業は、一般的にリスクが高いとされ、日本では敬遠されがちです。
しかし、沖縄観光ビジネスでの起業を志している人は、リスクを過大視することなく、自信をもって起業すべきです。
なぜならば、 沖縄観光ビジネスが起業に適した業種であり、他の業種よりも成功の可能性が高いからです。
では、具体的にどのような理由によって、起業に成功しやすいのでしょうか。
起業へのメリットは様々ですが、本稿では起業後の実際の経営に深くかかわる 「資金繰り」の観点から、沖縄観光ビジネスの強みを解説していきます。
目次
起業には失敗とリスクがつきもの
これから沖縄観光ビジネスでの起業を考えている人の多くが、起業に不安を抱いていることでしょう。
これまで起業の経験がない人であればなおさらです。
不安の最大の理由は、 起業には失敗のリスクがつきものだからです。
一般的な中小企業の生存率からも、起業の難しさは明らかです。
起業した会社のうち、5年後に存続している会社の割合はわずか14.8%に過ぎません。
さらに、10年後に存続している会社は6.3%、20年後では0.4%となっており、経営の難しさが良く分かります。
当然ながら、これから沖縄で起業する人は、ライフプランに合わせて、長期的に取り組もうと考えているはずです。
そのためには、起業の本質をよく知り、成功へと導く必要があります。
経営にはサイクルがあります。起業してから事業を軌道に乗せるまでの時期を 「創業期」といいます。
その後、事業が拡大していく「成長期」に入り、やがて安定の時期である 「成熟期」に至り、最終的には環境の変化などによって「衰退期」を迎えます。
4つのサイクルの中でも、 創業期は最も困難が多い時期です。
何しろ、上記の通り、5年以内に倒産する会社は全体の約8割にのぼるのです。
見方を変えると、 事業を軌道に乗せることができれば倒産リスクは大きく下がるともいえます。
沖縄観光ビジネスでの起業においても、5年、10年と生き残っていくためには、まずは創業期を生き抜く必要があります。
創業期に最も困難な3つのこと
では、なぜほとんどの会社が創業期に倒産してしまうのでしょうか。
創業を困難にする要素はいくつか挙げられます。その中でも 最大の難関は、資金繰りの難しさでしょう。
創業時は、とにかく資金繰りが厳しくなります。これは、
- 経営歴が短いため、会社の収益力を裏付ける実績が乏しく、金融機関から融資を受けるのが難しい
- ゼロから顧客を開拓していかなければならず、売上が安定しない
- 信用の低さから、顧客との取引条件が悪くなる傾向があり、資金の循環が悪くなりがちである
といった理由によるものです。
資金不足に陥りやすい
起業時には、自分で準備していた資金が頼りです。
しかし、多くのビジネスでは多くの先行投資が必要となるため、自己資金だけでは足りないことも多いです。
その場合、金融機関から融資を受ける必要があります。
民間の金融機関からの融資はほとんど期待できないため、公的な金融機関(主に日本政策金融公庫。沖縄であれば沖縄振興開発金融公庫)から融資を受けることができます。
とはいえ、公的金融機関からの融資は営利目的ではないため、民間の金融機関とは異なり融通が利きません。
民間の金融機関は、融資することで利息収入を得ているため、信用や実績さえあれば必要に応じて融資してくれます。
しかし、公庫はそのような柔軟性に乏しく、起業後に手元資金が乏しくなったからといって、簡単に融資を受けられるものではありません。
このため、起業後しばらくの間は、事業によって得られた利益の中から資金繰りを回していく必要があります。
当然、資金不足に陥る危険性も高いです。
業績が安定しない
しかし、競争が激しい業種であればあるほど、新規顧客の開拓は困難です。
多くの業種では、新規顧客の開拓が難航します。
会社から会社へと販売するビジネスでは、販売先の会社が既に取引先を持っているため、そこへ 信用のない自社が食い込んでいくのは容易ではありません。
会社から個人へと販売するビジネスでも、販売先の個人は普段から使い慣れた物品やサービスを継続して購入するケースが多いため、新規顧客開拓は難しい場合が多いです。
起業する業界がすでに成熟しきっており、 拡大の見込みが少ない場合には、顧客が新たに増えず、既存の顧客を取り込んでいく苦労が伴います。
市場が縮小していく斜陽産業であればなおさらで、顧客が減少していく中での新規開拓はかなり困難でしょう。
さらに、レッドオーシャンと言われる業種で起業すれば、安定的な業績は期待しづらいでしょう。
赤字になることも多く、やがて手元資金が尽きて、資金繰りがショートすることが多いです。
観光業は沖縄の主要産業であり、多くの会社があることから、レッドオーシャンと言われています。
新規顧客の開拓がうまくいかなければ、起業は失敗します。
すでに書いた通り、起業後の一定期間は融資を受けることが難しく、売上によって資金繰りをやりくりしなければなりません。
集客できなければ売上も得られず、支出が上回って赤字になります。
この期間が長引けば、資金繰りはショートし、起業は失敗に終わります。
取引条件が資金繰りを圧迫する
うまく顧客を開拓できたとしても、それが資金繰りを圧迫することが珍しくありません。
起業したての会社は、業歴が浅く信用に乏しいため、顧客との取引条件が厳しくなる傾向があり、これが資金繰りに悪影響となるのです。
例えば、
- 仕入費用など、自社から取引先への支払い期日が短く設定される(信用が乏しいため、取引先が短期間での回収を望む)
- 商品代金など、取引先から自社への支払い期日が長く設定される(売り込む側としての立場の弱さから、取引先の要求をのまざるを得ない)
といった取引になることが少なくありません。
このような条件での取引は、資金繰りに大きな負担となります。
なぜならば、取引先への支払い期日が短く、取引先からの支払い期日が長ければ、手元資金が入ってくるペースよりも出ていくペースのほうが早くなるためです。
沖縄観光ビジネスは資金繰りがラク!
以上のような理由から、創業期の資金繰りは非常に厳しいものとなります。
手元資金が枯渇し、成長期に入る前に立ち行かなくなるケースが非常に多いのです。
しかし、沖縄観光ビジネスは他の業種に比べて資金繰りがラクです。
起業後最大の障害である資金繰りに強みがあるとなれば、他の業種よりも起業で成功しやすいことは明らかです。
起業後の資金繰りの難しさは上記の通りですが、それぞれの厳しさを沖縄観光ビジネスに当てはめてみると、資金繰りがラクである理由が分かります。
- すなわち、沖縄観光ビジネス(特に体験型ビジネスの場合)の起業では、・固定費と変動費の負担が軽い
- 先行投資が少なく、小資本で始められる
- 顧客開拓が容易である
- 売上の回収が容易である
ということが挙げられます。
これらについて、以下で具体的に見ていきましょう。
固定費・変動費の負担が軽い
第一に、沖縄観光ビジネスにおいては、固定費・変動費ともに負担が軽いです。
固定費
固定費の最たるものは店舗家賃です。
近年では、沖縄不動産市場はバブル状態にあり、土地・建物ともに急カーブを描いて上昇しています。
それでも、沖縄の経済規模は大きくなく、 全国平均と比べると、賃料相場は未だ低い水準にあります。
このため、起業にあたって店舗や事務所を構える際の賃料を決して高くありません。
経営に伴う支出の中でも、固定費の負担は大きく、とりわけ賃料が占める割合は大きいものですが、 沖縄ではこれが安いため固定費をかなり抑えることができます。
また、ダイビングやトレッキングなどのツアーを企画運営する、体験型ビジネスを手掛ける場合には、店舗を構える必要もありません。
この場合、固定費のうち賃料が不要となり、それに連動して光熱費も不要となります。
賃料・光熱費のほかに、人件費や宣伝広告費なども固定費に含まれますが、これらの負担も小さいです。
起業後、順調に軌道に乗り、事業規模を拡大していくならば、人件費の負担も大きくなっていきます。
業種によっては、起業と同時に従業員を雇うこともあり、資金繰りの負担になります。
しかし、体験型ビジネスをはじめとする沖縄観光ビジネスでは、起業後しばらくは自分ひとりでやっていけるものも多く、 人件費の負担を抑えることができます。
沖縄で起業するビジネスのほとんどは観光ビジネスであり、集客が業績を大きく左右するため、宣伝広告費の負担は避けられません。
それでも、宣伝活動の大部分は大手旅行情報誌を利用し、広告費は高くても70万円が相場ですから、決して重すぎる負担ではありません。
変動費
また、変動費もそれほどかかりません。
主な変動費には、仕入費用、消耗品費用、車両維持費用などの変動費が必要となりますが、他のビジネスに比べれば負担は軽いです。
沖縄ビジネスの中でも観光ビジネス、特にダイビングやトレッキングといったツアーなどの体験型ビジネスであれば、海や山などの自然が商品となるため、 仕入費用がかかりません。
消耗品費用は、創業期は事業規模が小さいため、負担は大きくないでしょう。
体験型ビジネスであれば、無料で貸し出す道具なども必要でしょうから、そのためにのコストがかかります。
しかしこれも、客の増加に合わせて最低限度の数量を徐々に揃えていけば問題なく、やはり負担は軽いです。
ガソリン代に難あり
ただし、沖縄観光ビジネスの変動費では、 車両維持費に注意すべきです。
沖縄は復帰特別措置によってガソリン税が減税されているため、数年前までは全国平均よりガソリン代が安くなっていました。
しかし、2015年に県内の製油所が閉鎖してからはガソリン代が上昇し、2020年現在では全国平均を上回っています。 おおむね全国平均より3~5%高いと考えてください。
体験型ビジネスでは、現地までの移動など日々の業務で頻繁に車両を使うため、年間でのガソリン代はそれなりに大きな負担になります。
他の変動費が安いため、ガソリン代の高さは十分にカバーできますが、ぜひ知っておきたいポイントです。
先行投資があまりいらない
次に、沖縄観光ビジネスでは先行投資があまりかかりません。
起業に伴う先行投資は業種によって異なりますが、例えば飲食店ならば店舗の改装費用や調理設備の導入などが必要であり、他の多くの業種でも設備を導入するため、先行投資が大きくなりやすいです。
しかし、沖縄観光ビジネスは違います。
特に、体験型ビジネスを手掛けるならば、無店舗での営業も十分に可能であり、揃えるべき機材なども限られています。
沖縄の体験型ビジネスでも、集客のための宣伝広告費、送迎その他のための車両購入費用などの先行投資が必要ですが、逆に言えば先行投資はこれくらいのものです。
体験型ビジネスでは集客が命ですから、宣伝広告費は惜しむべきではありません。とはいえ、高くても70万円が相場です。
さらに体験型のツアーでは、道具の運搬や顧客の送迎などのためにハイエースなどの車両を購入します。
ハイエースは人気があるため、中古でも数十万円、ものによっては数百万円で売られており、決して安くはありません。
しかし、 他の業種で必要となる先行投資よりもかなり小さな投資であることに変わりありません。
先行投資が少ないため、創業資金を自己資金だけでまかなえる人もいるでしょうし、融資を受けるとしても少額の借入れになります。
起業後の運転資金も、余裕をもって準備しやすいでしょう。
手元資金が多い状態で起業できれば、事業が軌道に乗らない期間の資金繰りもラクです。
もちろん、精神的にもラクですから、焦ることなく、着実に取り組むことができます。
また、少額の借入れであれば返済の負担も小さく、この点でも資金繰りがラクです。
さらに、小資本で始められるため、起業のハードルは大きく下がることもメリットと言えるでしょう。
顧客開拓が容易である
顧客の新規開拓においても、沖縄観光ビジネスはかなり有利な環境にあります。
まず、沖縄観光業は近年大きく成長しています。2018年には入域観光客数が1000万人を超えており、ハワイを上回ったことで話題となりました。
以下の理由から、今後も沖縄観光業は伸びていくと考えられています。
消費動向の変化
若い世代の消費動向は「モノ」の消費から「コト」の消費へとシフトしており、体験を買いたい、とりわけ旅行にお金を使いたいと考える人が増えています。
これは世界的な傾向であり、国内客・外国人客ともに増加する一つの理由となっており、沖縄観光業にとって追い風になっています。
外国人客が増加していく
次に、外国人客の増加が挙げられます。これは、消費動向の変化よりもずっと影響度が高く、沖縄観光業の未来を明るくしている要素です。
景気に波がある中で、世界経済は長期的に順調な成長を続けています。特に、アジアの成長は目覚ましいです。
2050年におけるGDPの世界順位の予測(上位30位)を見てみると、1位は中国、4位はインドネシア、17位は韓国、 20位はフィリピン、21位はタイ、22位はベトナム、23位はバングラデシュ、24位はマレーシアというように、東アジアの国々が名を連ねています。
ちなみに、上記8ヵ国の2050年予測GDPを合算すると約95兆米ドル(日本円で約1京円)となり、2020年のアメリカのGDPの5倍に相当します。
2050年の東アジアの人々は、2020年現在と比較にならないほど豊かになっているはずです。 豊かになると人は娯楽への支出が増え、海外旅行に行く人も増えます。
東アジア最大のリゾート地は、ハワイに匹敵する沖縄であることは疑いがなく、現在でも東アジアからの観光客はかなり多いです。東アジアの国が豊かになっていくにつれて、東アジアからの観光客はますます増えていくでしょう。
2019年の沖縄の入域観光客数は、外国人客が約300万人、国内客が約700万人でした。日本の人口は減少しているのに対し、東アジアの人口は長期的に増加していくと考えられるため、 やがて外国人客のか数が国内客の数を上回るはずです。
沖縄への観光客数は、長期的に、大幅に伸びていくと考えて間違いないでしょう。当然、観光業の市場規模は拡大していきます。
多くの産業が伸び悩んでいる中、このような傾向は非常に好ましく、起業にもメリットがあります。
初めて沖縄を観光する顧客を取り込んでいく余地がかなりあるため、必ずしも既存の顧客を相手にする必要がないからです。
大手旅行情報誌に広告を出稿すれば、新規顧客開拓は十分に可能です。
他の業種より集客が容易なのは間違いありません。
正しく宣伝すれば、起業後早い段階で集客の成果が出ることも多く、資金繰りを回せるだけの売上が得られ、事業を軌道に乗せやすいのです。
売上の回収が容易である
最後に、売上の回収が容易であることも資金繰りにメリットがあります。
すでに書いた通り、取引条件が資金繰りに与える影響は大きく、取引条件の悪さが原因で破綻する会社も多いです。
また逆に、破綻の危機にある会社が、取引条件の改善をきっかけに立ち直っていくこともあります。
取引条件が原因で資金繰りが悪くなっている会社では、社長が資金調達に奔走せねばならず、社長としての役割を十分に果たせなくなることが多いです。
しかし、取引条件を改善したことで、社長が資金繰りのコントロールに割く労力が大幅に減り、積極的なことに力を注げるようになった結果、経営危機を脱け出せるのです。
つまり、売上の回収が容易となるよう、取引条件を改善することは、資金繰りはもちろん経営全般に大きなメリットがあります。
とはいえ、多くの業種において、取引条件の改善は難航します。
なぜならば、自社にとって回収条件が改善するということは、取引先にとっては支払条件が悪化することであり、簡単には受け入れられないからです。
したがって、単価を下げるなど、取引先にもある程度のメリットを与えなければ取引条件は改善できません。
一方、沖縄観光ビジネスはどうかといえば、そもそも取引条件の改善に悩むことがありません。
商品を売る相手は個人であり、代金はその場で現金で払ってくれるのが普通です。
売上の回収は即日で完了するため、改善の余地がないのです。
他の業種のように、「回収期間を3ヶ月から2ヶ月にできないだろうか」などと策を練る必要もなく、資金繰りはかなりスムーズに回っていきます。
注意を要する場合も
ただし、全ての売上が現金で、即日回収できるわけではありません。
旅行情報誌などを通じて集客したお客さんであれば、その場で代金を支払ってくれるのですが、仲介業者を経て集客するならば、売上の回収に一定期間を要します。
その代表例が、 旅行代理店と提携する場合です。
旅行代理店のパッケージに自社の体験ツアーなどを組み込んでもらうことで、旅行代理店経由で集客できます。
しかし、このようなお客さんは代金を現金で決済するのではなく、旅行代理店のクーポンで決済します。
自社は、月末などの決められたタイミングでクーポンをまとめて清算しますが、多くの旅行代理店では代金の振り込みが2~3ヶ月後になります。
この場合、他の業種と同じように、売上の回収に時間を要します。
経費を支払ってから、売上が入ってくるまでに時間がかかるため、資金繰りも厳しくなる恐れがあります。
したがって、沖縄観光ビジネスで起業する場合にも、直接回収できる集客をメインとすることで、資金繰りがラクになるよう気を付けることが大切です。
まとめ
本稿の解説では、一般的な業種と沖縄観光ビジネス(中でも体験型ビジネス)の資金繰りの特徴を比較しました。
沖縄観光ビジネスは、他の業種よりもかなり資金繰りが回りやすいことが分かったと思います。
また、資金繰りがラクであることから、起業に成功しやすいことも分かっていただけたことでしょう。
もちろん、だからといってずさんな資金繰りでは成り立ちませんが、起業に成功しやすい大きなり理由になっていることは間違いありません。