知らなきゃ大赤字に…沖縄不動産投資の正しい損益分岐点の考え方と求め方

 

近年、沖縄県の不動産価格が上昇しています。

琉球新報のある記事でも、5年間で3000万円から5000万円に値上がりした物件の話が出ていましたが、これは誇張でもなんでもなく、実際にそれくらい値上がりしています。

これにより、沖縄の不動産では、一般的な不動産に比べて利回りが低めになっています。

したがって、収支シミュレーションにおける損益分岐点の考え方も、より正確性が求められるようになっています。

本稿では、縄不動産投資の損益分岐点の正しい考え方について、解説していきます。

 

沖縄不動産の価格は上昇中だが悪いシナリオも想定すべき

 

近年、沖縄不動産が大きく値上がりしています。

なぜ値上がりしているのかと言えば、 沖縄不動産に人気が集まっているからです。

細かいことを言えば、 地価が上昇していること、賃料が上昇していることなども要因でしょうが、それらもすべては人気によって上昇している部分が大きいのですから、やはり根本には人気の高まりがあります。

 

沖縄県は、人口が減少している日本の中で、 長期的に人口が増加していく数少ないエリアです。

また、経済成長でも全国一といってよい上昇率を維持しています。

このため、今後ますます地価や賃料が値上がりしていくこと、安定した賃料収入が期待できることなどから、人気が高まっているのです。

 

だからこそ、築年数が5年間プラスされ、建物の価値は5年分だけ必ず目減りしている物件が、5年前より高く売れることにもなります。

しかし、逆に考えると、 人気が落ちたときが怖い環境でもあります。

人気が薄れてしまう、あるいは人気によって発生する需要以上に供給されてしまうなどの場合、期待していた結果が得られなくなるかもしれません。

 

 

近年の沖縄の動向を見ていると、当分問題ないように思えますが、土地の上昇率や県外資本の流入ペースから考えると、沖縄不動産投資の投機性が高まっているのも事実です。

不動産投資では悪いシナリオも想定したうえで、少なくとも損失にならないことを確認し、堅実な資産形成を目指すべきです。

沖縄不動産価格だからこそ、より堅実な姿勢で取り組むことが重要となります。

堅実な投資を考えるとき、 損益分岐点を正しく把握しておくことが役に立ちます

 

家賃収入で満足してはNG!損益分岐点の正しい考え方

 

損益分岐点とは、損益の分岐点、つまり収入と支出がプラスマイナスゼロになり、少なくとも損はしない地点のことです。

仕入れに50円、もろもろの経費に50円かかっていれば、プラスマイナスゼロとなるための販売価格は100円です。この場合には「100円」が損益分岐点となります。

 

不動産投資でも、ほとんど同じように考えます。

あらかじめ収支シミュレーションをしておき、年間のキャッシュフローはこれくらい、○年後のローン残債はこれくらい、だったらこれくらいで売却すれば損はしない、というように考えるのです。

したがって、不動産投資における損益分岐点は、対象とする時点において、 「いくら以下で売却したら損益がゼロになるか?」と考えます。

 

不動産投資では、損益分岐点をあまり把握しないまま投資してしまう人もいます。

家賃収入を得ることばかりを考えるため、 「いくらで売却すべきか」という発想がないのです。

売却しても損にならない価格、損になる価格の基準が分からないのですから、これでは投資期間中のシナリオを考えたり、未来予想図を描いたりしながら、リスクを抑えることもできません。

 

とりわけ、沖縄不動産市場の変化はスピーディであり、確保できる利回りも低めになるため、変化に対応していくために損益分岐点を見据えることが欠かせません。

しかし、不動産投資の損益分岐点の考え方は、それほど難しいものではありません。

 

理想はキャピタルゲインも得られること

損益分岐点の考え方には、間違えられやすい考え方も含めていくつかあります。以下のような条件を想定してみていきましょう。

  • 物件価格:5000万円(諸経費は7%、350万円)
  • 借入総額:3500万円(頭金3割)
  • 借入期間:25年
  • 借入金利:2%
  • 年間賃料収入:350万円(表面利回り7%)
  • 年間の経費率:20%

※家賃の変動は考慮せず、10年後に売却すると仮定。

 

この条件でシミュレーションすると、

  • 年間のローン返済額:179万2715円
  • 年間のキャッシュフロー:100万7285円
  • 10年経過時点でのローン残債:2303万5072円

となります。

 

沖縄県では地価や物件価格、家賃などが上昇を続けていることから、損をするはずがないと考え、損益分岐点も甘く考える人もいます。

購入価格よりも高く売れて、キャピタルゲインが得られて当然と考えるのです。

 

もし、そのようにうまくいって6000万円で売却できた場合、1000万円のキャピタルゲインが得られます。この時、最終的な損益は以下の通りです(譲渡所得税は考慮せず)。

 

投資資金 諸経費 年間CF 合計CF ローン残債 売却価格 最終損益
15,000,000 3,500,000 1,007,285 10,072,850 23,035,072 60,000,000 28,537,778

 

もちろん、このような結果になるに越したことはありませんが、今後のことは分かりません。

キャピタルゲインが得られた場合に、「こんなに利益が出る」と考える一方で、キャピタルゲインが得られなかった場合も考えておく必要があります。

 

次善は「売却価格=購入価格」

キャピタルゲインが得られないことを想定して、売却価格と購入価格がイコールの状態を損益分岐点と考える人もいるでしょう。つまり、5000万円で売れると考える場合です。

この場合の最終損益は、

投資資金 諸経費 年間CF 合計CF ローン残債 売却価格 最終損益
15,000,000 3,500,000 1,007,285 10,072,850 23,035,072 50,000,000 18,537,778

となり、これもたっぷり利益が残ることが分かります。

 

しかし、これも間違っています。購入価格を下回ると売却損が出るため、これを損益分岐点に設定する人もいるのですが、 この考え方では賃料収入が考慮されていません

上記シミュレーションからもわかる通り、売却損益がプラスマイナスゼロでも、最終損益はしっかりとプラスになっています。

これはインカムゲインが得られているからです。

したがって、正しい損益分岐点とは言えません。

 

甘い考えはNG!現状をイレギュラーととらえるべき理由

近年の沖縄は特殊ですから、「少なくとも、購入価格と同じくらいで売れるだろう」と考える人もいるでしょうが、それは甘い考えです。

本来ならば、10年間の賃貸経営によって、建物の価値は10年分目減りしているのですから、売却価格は購入価格よりも安くなるのが普通です。

沖縄県で築年数を問わず値上がりしているのは、地価や家賃や収益性が上昇しているからであり、 イレギュラーだと考えるべきです。

 

 

投機性が高まっている沖縄では、地価の上昇が急に緩やかになったり、下落したりする可能性もあります。

地価の適正価格を把握するのは困難であり、まだまだ上がるかもしれませんし、下落するかもしれません。

人口増加が続くのはほぼ確実でしょうが、供給過剰になってしまえば稼働率も賃料も下がります。

 

そうなれば、物件の売却価格も下がります。

不動産価格が高くなっているところで買っているならば、おそらく売却価格が購入価格を下回ることになるでしょう。

悪い状況でも損が出ないことを確認するためには、 売却損が出ているところで損益分岐点を考える必要があります

 

真の損益分岐点は?

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真の損益分岐点を設定するには、売却損が出ているケースを想定する必要があります。

しかし、売却価格が購入価格を下回るとはいっても、少し下回る、大きく下回るなど色々あるわけで、どれくらい下回ったところを損益分岐点とするのでしょうか。

 

損益分岐点の設定には、

  • 売却価格=ローンの残債
  • 売却価格+投資期間中のキャッシュフロー総額-ローンの残債=自己資金

の二通りがあります。

 

「売却価格=ローンの残債」の考えでは大きな赤字になってしまう

損益分岐点の考え方として多いのが、「売却価格=ローンの残債」と考えるものです。

実際に不動産を購入する際にも、売主が設定している売却価格の根拠として、「この価格でなければ、ローンの残債を支払えないから」という場合が少なくありません。

それ以下の金額ではローンの残債を支払うことができず、売却もできなくなるため、最低でもこの金額と考えるのです。

 

この場合には、10年経過時点での残債2303万5072円を損益分岐点と考え、売却価格とするのですが、以下のように大きな赤字になってしまいます。

投資資金 諸経費 年間CF 合計CF ローン残債 売却価格 最終損益
15,000,000 3,500,000 1,007,285 10,072,850 23,035,072 23,035,072 -8,427,150

2303万5072円で売却すると、10年間のキャッシュフロー1007万2850円を全て手元に残していても、最終的には赤字です。

最初の段階で頭金と諸経費として1850万円を支払っているため、差し引き1346万3575円の損失となります。

 

「売却価格=ローンの残債」では成り立たない理由

では、明らかなマイナスであるにもかかわらず、なぜこれを損益分岐点とする考え方があるのでしょうか。

これは、沖縄県のような低い利回りではなく、やや高めの利回りを想定しているからです。このように考えるならば、最悪の場合にはローン残債を損益分岐点とする考え方も成り立ちます。

 

例えば、同じ条件の物件を、表面利回りだけ10%として考えてみると、以下のようになります。

投資資金 諸経費 年間CF 合計CF ローン残債 売却価格 最終損益
15,000,000 3,500,000 2,207,285 22,072,850 23,035,072 23,035,072 3,572,850

 

このように、沖縄以外の一般的なエリアでの不動産投資ならば、表面利回りは高めに見積もることができ、実際に赤字にもなりません。

しかし、沖縄不動産投資では利回りが低めになる傾向があるため、当初の自己資金をカバーすることができず赤字になります。

沖縄不動産投資の利回りを前提とすれば、売却価格=ローンの残債という考え方は成り立たないことに注意してください。

 

売却価格+投資期間中のキャッシュフロー総額-ローンの残債=自己資金

そこで、損益分岐点を正しく設定するためには、その投資全体で最終損益を考える必要があります。

つまり、購入時の自己資金、運用中の賃料収入、売却時の売却損の全てを考慮し、キャッシュフロー総額がプラスマイナスゼロになるポイントを、損益分岐点とするのです。

 

この例では、自己資金として頭金1500万円、諸経費350万円を支払っており、この合計は1850万円となります。したがって、全投資期間における損益の結果として、最終的に1850万円が残っていれば、これが本当の意味での「プラスマイナスゼロ」であると言えます。

したがって、真の損益分岐点を捉えるためには、以下の計算式で売却価格を計算します。

売却価格-2303万5072円(ローン残債)+1007万2850円(10年間でのキャッシュフロー総額)=1850万円(頭金+諸経費)

 

この計算により、3146万2222円で売却すればよいことが分かります。この価格を損益分岐点とすることにより、

投資資金 諸経費 年間CF 合計CF ローン残債 売却価格 最終損益
15,000,000 3,500,000 1,007,285 10,072,850 23,035,072 31,462,222 0

となります。最終的に手元には1850万円が残り、本当のプラスマイナスゼロの結果となります。

不動産投資の損益分岐点、物件の売却価格はこのように考えるのです。

 

沖縄不動産投資だからこそシビアに

 

沖縄不動産投資は、他の都道府県での不動産投資とは環境が異なります。

県民所得が低いことによって、高めの家賃を設定することはできず、家賃は低めになっています。

人口増加に伴う賃貸需要の高まり、地価の上昇など、複数の要素によって家賃は上がっていますが、 それを上回るスピードで物件価格が上昇しているため、利回りはより低くなると考えるべきです。

利回りが低くならざるを得ないほど人気が高いとも言えますし、今後も人口増加や経済成長は続く可能性が高いため、利回りが低くとも安定した収益が期待でき、売却時に高く売れる可能性もあり、沖縄不動産投資が魅力的であることは間違いありません。

 

しかし、それを過信するのは禁物です。

家賃や地価の上昇率は 県民所得の上昇率や経済成長率を大きく上回っており、地元民や地元資本が置いてきぼりになっている傾向も見られます。不動産市場の過熱を指摘する声もあります。

今のような上昇がいつまでも続くとは思えませんし、どこかで上昇が一服するでしょう。いつまでも上昇するかのように錯覚し、損益分岐点を考慮しなければリスクが高まります。

このような沖縄不動産投資の環境や特殊性をしっかりと認識し、損益分岐点も正しく設定しておけば、安定感のある不動産投資、損をしない不動産投資ができるでしょう。

 

まとめ

沖縄不動産投資は、沖縄県の人口や経済の将来的な予測から、安定した収益を得られる可能性が高く、それが最大の魅力と言えます。

しかし、一般的な不動産投資と比べて、利回りが低めであることは否めません。

平常時の安定性と、異常時の抵抗力は別の性質です。現在の投資環境や将来予測では安定性が高くとも、突発的な変化が起こった場合、利回りが低く抵抗力が弱い沖縄不動産では、苦戦を強いられることになります。

だからこそ、高い安定性というメリットを最大限に享受するためにも、物件の選定や収支シミュレーション、シミュレーションの際の損益分岐点の設定などを正しく、慎重に行うよう心がけてください、

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