一般の不動産投資vs軍用地投資。相続税対策に効果的なのはどっち?
不動産投資に興味を持つ人の中には、投資によって得られるリターンだけではなく、相続税対策も目的にしていることが多いです。
居住用・事業用の賃貸物件やコインパーキング、貸倉庫などの不動産投資は、相続税対策の効果があるのです。
不動産投資の一種である軍用地投資についても、同じようなイメージを持っている人が多いと思います。
しかし、軍用地投資の相続税対策効果は、一般の不動産投資をはるかにしのぎます。
本稿では、一般の不動産投資と比較しながら、軍用地投資の節税メリットを解説していきます。
目次
軍用地の相続税対策効果
軍用地投資のメリットとして、主にローリスク・ミドルリターンである点が挙げられます。
しかし、軍用地投資のメリットはこれだけではありません。
軍用地投資には、相続税対策の効果が非常に大きいというメリットがあるのです。
一般の不動産と軍用地の違い
軍用地投資に限らず、軍用地投資は相続税対策に効果的とされています。
これは、遺産を評価して相続税額を算定するにあたって、現金ならば100%の評価がなされるのに対し、不動産は固定資産税評価額に路線価を掛けて算定することから、 市場価格の8割程度まで圧縮できるためです。
例えば、5000万円の現金を相続するならば、相続税評価額は5000万円ですが、この5000万円を不動産に投資した場合、相続税評価額を4000万円程度に圧縮できる可能性があります。
このことから、不動産投資が相続税対策に有効とされているのですが、 軍用地投資の節税効果は一般の不動産投資をはるかに上回ります。
上記の通り、一般の不動産の相続税評価では、単純に固定資産税評価額に路線価を掛けて評価します。
一方、軍用地の相続税評価では、固定資産税評価額に国税庁が定める評価倍率を掛けて算出します。
軍用地は一般の不動産よりも固定資産税評価額が低く設定されています。
これだけでも、軍用地の相続税評価額は低く抑えられています。
相続税法の特例に該当
さらに、固定資産税評価額が低いことに加えて、軍用地は相続税法の特例に該当することからも、相続税評価額が大きく減少します。
軍用地は一般の不動産とは異なり、米軍基地や自衛隊基地として利用されていることから、土地の所有者が自由に使用できません。
相続したところで活用することはできず、他の資産よりも活用性に劣ります。
相続税法では、第23条の「地上権及び永小作権の評価」によって、活用できない土地の評価を、残存期間に応じて5~90%減額するよう規定しています。
地上権とは、他人の土地を使用する権利のことです。
軍用地であれば、政府は軍用地主と賃貸借契約を結び、契約によって得た地上権によって、基地用地として利用しています。
返還された軍用地、あるいは返還を予定されている軍用地には、政府と軍用地主の間で交わされる賃貸借契約に残存期間が発生するため、その残存期間に応じて減額されます。
しかし、多くの軍用地は返還が予定されておらず、20年ごとに賃貸借契約を更新する仕組みになっています。
このような軍用地は、 「残存期間の定めのない地上権」が設定されていることとなり、 評価額が40%減額されます。
相続税評価額のシミュレーション
具体的にシミュレーションしてみましょう。
例えば、嘉手納飛行場の軍用地を5000万円で購入し、固定資産税評価額が1000万円であったとします。
嘉手納飛行場の地目は宅地・田・畑・山林・原野・池沼・雑種地のいずれかであり、国税庁が定める評価倍率は宅地が3.0倍、それ以外は3.1倍に設定されています。
このため、地目が宅地の雑種地の嘉手納飛行場を購入したならば、相続税評価額は、
1000万円(固定資産税評価額)×3.0倍(評価倍率)×60%(相続税法第23条による減額)=1800万円
となります。
購入価格にあたる5000万円を現金で相続すれば、相続税評価額は5000万円のままです。
これを、一般の不動産に投資すれば、相続税評価額は8割程度に減額され、4000万円程度となります。
ところが、軍用地に投資すれば、相続税評価額は3割程度まで圧縮することができます。
上記の例でも、相続税評価額は5000万円から1800万円へと36%に圧縮されたことが分かります。
このように、軍用地投資は相続税対策に非常に役立つのです。
相続税法改正から考える
以上のように、相続税対策の観点から考えると、あらゆる資産の中でも軍用地が特に優れていることが分かるでしょう。
近年、軍用地投資の人気が高まっていますが、とりわけ富裕層からの人気が高まっている理由はここにあります。
富裕層が、単に資産を運用したいだけであれば、資金力を背景として、様々な対象への投資が考えられます。
それでも、あえて軍用地投資が選ばれる理由は、 多額の相続に備えるためなのです。
相続税法の改正内容
特に、2015年1月に相続税法が大幅に改正されてからというもの、軍用地投資の人気に拍車がかかった印象があります。
2015年1月の改正では、相続税の基礎控除が大幅に縮小されています。
改正以前の基礎控除は、
5000万円+(1000万円×法定相続人数)
でしたが、改正以降は
3000万円+(600万円×法定相続人数)
となったのです。
これにより、相続税の対象者が一気に増加しました。
例えば、法定相続人が3人の場合、改正以前の基礎控除は、
5000万円+(1000万円×3人)=8000万円
となり、相続税評価額が8000万円までは非課税となっていました。
しかし、改正以降の基礎控除は、
3000万円+(600万円×3人)=4800万円
となるため、相続税評価額が8000万円の場合には、基礎控除4800万円でカバーできない3200万円が課税対象となります。
もし、8000万円を現金で遺している場合には、3200万円が課税となります。
現在、相続における遺留分(法定相続人に最低限保証される取り分)は、配偶者が1/4、子供が1/8と定められています。
基礎控除の後の3200万円を、法定相続人である妻と子2人で遺留分を守りつつ分けると、妻は1600万円、子はそれぞれ800万円といった形になります。
相続税率は相続による取得金額によって異なります。
子は取得金額1000万円以下であるため10%、妻は取得金額1000万円超3000万円以下であるため15%(控除額50万円)に該当します。
したがって、相続人に課せられる課税額の総額は、
- 【妻】1600万円×15%-50万円=190万円
- 【子】800万円×10%=80万円
- 【総額】190万円+80万円+80万円=360万円
となります。
そして、各相続人に課せられる相続税額は、
- 【妻】360万円×1/2-配偶者の税額軽減措置=0円
※配偶者が相続人となる場合には、1億6000万円を上限として軽減措置を受けられる。
- 【子】360万円×1/4=90万円
- 【総額】0万円+90万円+90万円=180万円
となります。
一般の不動産投資で対策する場合
上記の例は、8000万円を現金で相続した場合です。
この8000万円を一般の不動産に投資し、相続税評価額を8割の6400万円に圧縮すれば、基礎控除を除いた課税遺産総額は1600万円となります。
遺留分に応じて相続すれば、妻は800万円、子は400万円を相続するため、課税総額は120万円となり、
各相続人の相続税額は、
- 【妻】120万円×1/2-配偶者の税額軽減措置=0円
- 【子】120万円×1/4=30万円
となり、相続税額は全体で60万円となります。
現金で相続する場合に比べて、現金から一般の不動産に置き換えて相続すれば、相続税額は小さくなることが分かります。
軍用地投資で相続税を大きく減らせる
しかし、現金から一般の不動産に置き換えても、やはり相続税は発生しています。
基礎控除の範囲内に収めることができない以上、相続税は発生するのです。
では、遺産となる8000万円の現金を、軍用地に置き換えたらどうでしょうか。
購入価格8000万円、固定資産税評価額1600万円、評価倍率3倍、地上権の残存期間に定めがない軍用地であれば、相続税評価額は、
1600万円×3×60%=2880万円
となります。
法定相続人が3人であれば、基礎控除4800万円の範囲内に収まるため、相続税は課せられません。
節税効果は軍用地投資の圧勝
以上のように比較すれば、軍用地投資の節税効果は、一般の不動産投資をはるかに上回ることが良く分かります。
相続税評価額が3割程度に圧縮される軍用地を、法定相続人3人で分ける場合、1億6000万円までの軍用地であれば非課税となります。
これに対して、相続税評価額が8割程度に圧縮される一般の不動産投資を、法定相続人3人で分ける場合には、6000万円までの物件が非課税となります。
相続税対策から考えると、軍用地投資は一般の不動産投資に比べて、3倍近くの効果があるのです。
現在、多くの資産を持っている人にとって、軍用地投資のメリットは非常に大きいといえるでしょう。
また、これから軍用地投資を始める人の中には、長期投資によって多くの財産を築くことを目指している人も多いはずです。
そのような人が、多くの遺産を遺すにあたって、軍用地が絶大な効果を発揮します。
数億円、数十億円という多額の相続に備えるために、軍用地に投資することで相続税評価額を最大3割程度にまで圧縮できれば、1億円ならば3000万円、10億円ならば3億円まで相続税評価額を下げることができます。
当然、相続税額も大幅に減らすことができ、遺族により多くの遺産を遺すことができます。
試しに、10億円の遺産を、配偶者1人が1/2の相続、子供2人がそれぞれ1/4を相続するケースを考えてみましょう。
現金あるいは一般の不動産で相続するならば、相続税額は
- 10億円を現金で相続した場合:2億1900万円
- 時価10億円、相続税評価額8億円の一般不動産で相続した場合:1億3120万円
となります。
一方、相続税評価額が3割となる軍用地で相続したならば、 相続税額は子1人当たり1850万円、相続人全体で3700万円にまで圧縮されます。
このように試算すれば、遺産が大きくなればなるほど、軍用地の節税メリットは大きくなっていくことが分かります。
「子孫のために美田を残さず」と考え、遺産を遺さないように考えている人であれば、軍用地の節税メリットはそれほど大きくはないでしょう。
しかし、ほとんどの人は遺産を遺そうと考えているはずですから、相続税対策も含めて、計画的に運用していくことが大切です。
このとき、軍用地投資が非常に役立ちます。是非、相続税対策に軍用地投資を活用していきましょう。
まとめ
相続税対策には、様々な方法があり、不動産投資はその代表的なものです。
なかには、賃貸物件を購入あるいは新築するものの、賃料収入は主たる目的ではなく、相続税対策を最大の目的にしている人もいるほどです。
しかし、相続税対策に励むならば、同じ不動産投資でも、軍用地投資のほうが優れています。一般の不動産投資では及びもつかないほど大きな節税効果があるのです。
相続税対策を見据えて投資するならば、ポートフォリオに軍用地を組み込むことを検討してみてください。