円滑な沖縄ビジネスのために配慮すべき事情と避けるべきタブーについて
ビジネスには人脈が必要となりますが、その前提として、現地の人々とのトラブルを避けることが欠かせません。
いくら熱心にビジネス上の人脈づくりに取り組んでも、現地で暮らす人々と良い関係を築けないならば、ビジネスの成功はおぼつかないでしょう。
特に、 沖縄特有の事情やタブーを考慮することが重要です。
この配慮ができなければ、現地の人が大きな不満を抱き、その後の事業継続が困難な事態に追い込まれる危険性があるのです。
本稿では、 沖縄での人脈づくりに欠かせない、避けるべきタブーについて解説していきます。
目次
文句を言わない沖縄人
これから沖縄ビジネスを始めるにあたり、特に県外から移住して取り組む人は、沖縄で人脈を作っていく必要があります。
しかし、ビジネス上の人脈より重要なのは、現地の人と良好な関係を築くことです。
現地の人とトラブルになるようでは、同業者の間でも問題視されてしまうため、ビジネスに活きる人脈も広がることはないのです。
人脈づくりで最も大切なことは、当たり前のことながら、 人間関係を損なう間違いを犯さないことです。
これができていれば、少なくとも現地の人に嫌われるという致命的な失敗を犯さずに済み、いくらでも人脈を広げていくことができます。
そこで、まず知っておきたいことは、「沖縄の人の多くは内向的である」ということです。
沖縄県民の中には、県外の人に対してある種のコンプレックスを抱いていることも多く、思っている以上に内向的になることがあります。
内向的な人と関係を築くためには、相手の言動に表れない真意を汲み取って、 適切な距離感を保つことが重要です。
こちらがビジネスを始めたとき、何らかの間違いを犯したり、近所に迷惑をかけることがあったとしても、現地の人は強くクレームをつけてくることが滅多にありません。
だからといって、現地の人が許しているわけではなく、 不満を感じながら我慢しているだけです。
そのため、沖縄ビジネスに活かせる人脈を築いていく上でも、モラルを大切にするのはもちろんのこと、自分が取り組むビジネスによって起こり得るトラブルを避けるために、現地の事情に配慮するよう心掛けるべきです。
トラブル事例集
では、具体的にどのようなトラブルが起こるのでしょうか。いくつか具体例を見てみましょう。
よくあるトラブル1:迷惑駐車
よくあるトラブルの筆頭は、迷惑駐車です。
沖縄観光ビジネスでは迷惑駐車が起こりやすく、県外の人が起業した場合にトラブルになりやすいのです。
観光ビジネスでは、観光客を相手にします。観光客は、現地のことをよく知りません。
駐車場の位置も把握していません。その上、現地とのかかわりは観光している時だけであるため、配慮に欠けることが多いです。
現地のことを考えずに駐車する観光客にとって、それは一時的なことにすぎませんが、 その地域で生活する現地の人にとっては毎日のことであり、不満が溜まるのも当然です。
よくあるトラブル2:教育への悪影響
沖縄観光ビジネスでは、教育への悪影響が問題視されることも多いです。
沖縄には、子供の教育に熱心な家庭が少なくありません。
このことは、沖縄不動産市場の動向を見ても良く分かります。
沖縄のファミリー層は教育環境への意識が高く、 学区によって賃貸需要がかなり影響されるのです。
このため、手掛けるビジネスが教育への悪影響につながる場合、大きなトラブルにつながる可能性が高いです。
具体的には、
- 小学校の近くでダイビングショップを経営していたところ、その周辺を水着の女性が歩くことが増えた
- 小学校の近くでサーフィンの教室を企画・運営したところ、その周辺でタトゥーを入れた人を頻繁に見るようになった
といったケースがあります。
当然、保護者はそのような悪影響を嫌うため、トラブルになりやすいです。
よくあるトラブル3:その他の交通系トラブル
迷惑駐車や教育への悪影響など、具体的な迷惑行為・悪影響が考えにくい場合でも、車の問題はよく考える必要があります。
沖縄には電車がなく、主な公共交通機関はバスしかありません。
自家用車で移動する人も非常に多く、他の都道府県とは比べ物にならないほどの自動車社会です。
このため、ただでさえ渋滞が大きな問題になっています。
したがって、自分のビジネスが渋滞を引き起こしていれば、現地の人は大きな不満を抱きます。。
交通事情に配慮し得る場合であっても、教育施設の近くはおすすめできません。
まず、 登下校中の児童と観光客の車が事故を起こす危険性があります。
なぜならば、観光客のほとんどはレンタカーで観光先を回るためです。
普段は乗らない車種を運転すれば、感覚の違いから事故を起こしやすくなります。
ペーパードライバーが運転する場合も多く、これも事故の原因となります。
また、児童との事故だけではなく、 送迎バスや保護者の車の妨げになることも多いです。
観光客の多くは観光先の交通事情に無知ですから、一方通行の道路に迷い込むなどのミスも起こりやすく、交通の妨げになりやすいのです。
教育への意識が高い層が多く暮らすエリアでは、このような交通上の問題が大きなトラブルを引き起こしかねません。
沖縄のタブーを弁える
ここまで書いた通り、人間関係における様々なトラブルを避けるためには、沖縄特有の事情を踏まえておく必要があります。
車社会の沖縄であればこそ、交通事情は特に気をつけたい要素なのですが、また別の意味で気をつけるべきタブーがあります。
それは、沖縄の歴史的・民族的タブーを犯さないことです。
歴史的・民族的タブーは、交通事情など習慣的な部分でのタブーに比べて根深い問題であり、より深刻なトラブルになりやすいです。
先日も、麻生財務大臣が「日本は2000年にわたって、一つの民族が栄えてきた稀有な国」といった発言をしたことが大きな問題になりました。
世界中から様々な民族が集まっている国、例えばアメリカなどであれば民族問題を意識しやすいのですが、日本では深刻な民族問題がそれほどないため、民族への意識も低いです。
しかし、 日本にもいくつかの民族があり、デリケートな問題であることは間違いありません。
一般的に、日本人の大部分は大和民族によって構成されていると考えられています。麻生財務大臣が「一つの民族」と表現したのも、大和民族を指しています。
しかし、日本は大和民族だけではなく、複数の少数民族によって構成されています。
北海道のアイヌ民族が有名であるほか、日本に帰化した外国人や出稼ぎにきている外国人も多いです。
沖縄の人々についても、琉球民族と捉える考え方があります。
民族の問題はデリケートですから、民族の括りや呼称については様々な見解がありますが、一般的にはこのように考えます。
そして、それぞれの民族は、民族としての歴史や文化を持っており、そこから起因するタブーも様々です。
沖縄でビジネスするにあたっても、沖縄のタブーを犯すことだけは絶対に避けねばなりません。
立地のタブーを考える
ビジネスには立地の問題がつきものです。
通常のビジネスでは、賃料の問題や集客の問題など、ビジネスの効率的側面から立地を選びます。
沖縄ビジネスでも、ビジネス効率が良いに越したことはありません。
海や山などの自然を活用した観光ビジネスでは、それが国立公園や私有地でなければ、法律的な問題は起こらず、基本的にはどこで商売しても問題ありません。
しかし、沖縄ビジネスでは法律的な問題だけではなく、 民族的・歴史的なタブーの問題があります。
分かりやすいのが、沖縄戦の激戦地になったエリアです。
第二次世界大戦で、沖縄では壮絶な戦闘が行なわれました。
民間人の死者も多く、沖縄の人々は激戦地エリアを慰霊の地と考えます。
このほかにも、沖縄の人々は祖先崇拝を重んじるため、戦争と無関係なエリアにもタブーが存在します。
沖縄の人が、これらの土地でビジネスを手掛けることはありません。
このため、タブーを知らない人にとっては、タブーエリアがかなりの好立地に見えることもあります。
土地の価格や賃料がかなり安いこともありますし、そのエリアでビジネスを手掛ける業者がいないため、競争率の低さも魅力的に映るのです。
しかし、そのエリアでビジネスを手掛ければ、現地の人々から「けしからん」と思われることは必至です。
同業者からも「非常識だ」と思われるでしょうし、広告会社が「あそこには手を出すな」と考える、観光業の生命線である「広告戦略」に支障をきたす可能性も高いです。
実際に、沖縄戦の激戦地に観光客向けのゲストハウスを開業した業者が、地元とのトラブルにより、一年以内に廃業したケースがあります。
事前の調査を念入りに
とはいえ、沖縄と全く無縁の人が沖縄ビジネスを始めるならば、このようなタブーを知らないのが普通でしょう。
そのエリアの人だけが知っているマイナーなタブーもあるため、ネネット上の知識などによって、メジャーなタブーを避けるだけでは不十分です。
そこで、タブーを確実に避けるためには、 そのエリアで暮らす人々に直接聞いてみるのが確実です。
すなわち、そのエリアでどのようなビジネスをしたいのかを説明し、 「自分は沖縄県民ではなく、事情を良く知らないため、現地の皆さんにご迷惑をおかけしないためにも、問題があればぜひお聞きしたい」と 率直に聞くのです。
もし、何らかのタブーがあれば、地元の人々はビジネスなどしてほしくないのですから、しっかりと教えてくれます。
また、特にタブーがない場合にも、地元の人だけが知っていることを話してくれることもあります。
思いがけず、ビジネスに役立つ情報を得られるかもしれません。
このほか、事前に聞き込みをしておくことで、地元の人から「地元のことをしっかり考えてくれている」という印象を持たれ、その後の人脈づくりが加速することも期待できます。
事業に重大な支障を起こす前に
本稿の冒頭で解説した通り、沖縄の人は内向的であるため、強くクレームを言うことも少ないです。
ビジネスに取り組む人の考えが至らず、「客は好き勝手に駐車しているけど、あまり迷惑にはなっていないんだな」などと思い込んでしまえば、やがて大きなトラブルに発展しかねません。
最悪の場合、内向的ゆえに事業者に直接クレームをつけるのではなく、 行政や関連団体などに苦情が持ち込まれ、行政的な規制に至ることもあります。
そのような事態に陥れば、現地の人との関係を修復することは困難となり、その後も些細なことでトラブルになってしまいます。
同業者間での評判も落ち、取引先から敬遠されることも想像に難くありません。事業の継続が不可能になる可能性も十分に考えられます。
そうならないためにも、自分のビジネスが周囲に与える影響をよく考えるべきです。
特に、沖縄が自動車社会であることや、民族的・歴史的なタブーを抱えていることを知ることが重要です。
まとめ
ビジネスを円滑に進めていくには、現地との融和が欠かせません。
それが、起業後に起こり得る様々なトラブルの予防になり、延いては良好な人間関係を作ることにつながります。
そのためには、沖縄ならではの交通事情を考慮するほか、歴史的・文化的・民族的タブーを確実に避ける必要があります。
取り返しのつかない失敗をしないためにも、本稿の内容を参考にしながら、現地との融和を目指してほしいと思います。