沖縄で店舗・事務所物件への投資はアリ?ナシ?投資エリアの選び方は?

一口に賃貸物件に投資すると言っても、投資先は様々です。

居住用物件への投資、店舗・事務所物件への投資のほか、沖縄県では政府に土地を貸す軍用地投資などもあります。

不動産投資では居住用物件への投資が主流ですが、それ以外の形態も知っておくことで、投資を検討できる物件が増え、より条件の良い投資先を選びやすくなります。

では、沖縄不動産投資に取り組むにあたって、居住用物件以外の物件は投資対象になり得るのでしょうか。

本稿では、 店舗・事務所物件の特徴、沖縄における店舗・事務所物件の可能性 具体的な考え方などについて解説していきます。

商業地の地価が大幅に上昇

近年、観光業が盛り上がっている沖縄ではリゾート開発などに後押しされ、商業地の地価が大幅に上昇しています。

2019年3月19日の日経新聞でも、以下のように報じられています。

国土交通省が19日発表した2019年の公示地価(1月1日時点)で、沖縄県の商業地は10.3%、住宅地は8.5%のプラスだった。いずれも6年連続で上がり、住宅地の上昇率は3年連続で全国トップ、商業地も最も高かった。商業地はインバウンド(訪日外国人)の増加でホテルや店舗用不動産の需要が強く、マンション用地も好調だった。那覇市周辺も上昇しており、需要が県全体で高まっている。

上昇率は商業地で前年を4.7ポイント上回り、住宅地は3.0ポイント拡大した。商業地59地点のうち、下落したのはうるま市の1地点だけだった。

この報道の通り、商業地の地価が大幅に上昇していますが、その原因は言うまでもなく、 商業需要の高まりにあります。

ホテルの建設・開業に牽引される形ですが、そもそも多くの観光客が訪れる地域だからこそホテルの建設・開業が相次いでいるのであり、ホテル業に限らず商業全体の盛り上がりがうかがえます。

そこで気になるのが、「 沖縄不動産投資に取り組むにあたって、店舗・事務所物件への投資はどうか?」ということです。

店舗・事務所物件の需要の特徴

今後も長期にわたって人口増加が続く沖縄県では、賃貸需要も堅調に推移すると予想されており、居住用物件への投資環境は極めて良好です。

このため、「沖縄不動産投資=居住用物件への投資」と考えてしまいがちですが、上記のように商業的な盛り上がりが顕著であることを考えると、店舗・事務所物件への投資も十分に成り立ちそうです。

地価が大幅に上昇しているのであれば、 賃料収入だけではなく売却益も期待できます

居住用物件ではなく、あえて店舗・事務所物件に投資する理由はいくつか考えられます。

 

まず、沖縄県では、今後も経済成長が続くと考えられています。

言うまでもなく、経済成長は商業的な盛り上がり・成長を意味しており、今後も経済成長が続くならば、店舗・事務所物件の需要が堅調に推移すると考えられます。

また、店舗・事務所物件は居住用物件と異なり、 長期投資に向いている場合があります

普通、居住用物件の運用は築年数に大きく左右されます。

築年数が古くなるほど、外観や設備が陳腐化し、空室率が上昇していくものです。

時には、空室率を下げるために賃料を下げることも必要です。このため、経年とともに利回りが低下していきます。

 

一方、店舗・事務所物件は賃貸物件に比べて、築年数に左右されにくいです。

なぜならば、店舗・事務所物件の賃料は、 築年数よりも周辺環境の影響を受けるためです。

もちろん、居住用物件でも周辺環境は重要であり、賃料に影響を与えます。しかし、例えば、

  • 駅から近い居住用物件
  • 駅から近い店舗・事務所物件

を比較した場合、賃料への影響度の差は明らかです。

居住用物件の場合、賃料への影響は、単に入居者の利便性に起因するものです。

同じ「駅から徒歩5分」という条件であれば、「駅から徒歩5分、なおかつ駅前の大通り沿いの物件」と、「駅から徒歩5分、ただし駅前の大通り沿いではない物件」では、競争力に大きな差はありません。

 

しかし、店舗・事務所物件の場合、賃料への影響は、 経営における優位性に起因します。

同じ「駅から徒歩5分」という条件でも、 「駅から徒歩5分、なおかつ駅前の大通り沿いの物件(集客に有利な立地)」と、「 駅から徒歩5分、ただし駅前の大通り沿いではない物件(集客に不利な立地)」では、前者のほうが賃料は高くなります。

以上のように、店舗・事務所物件は居住用物件とは異なり、 周辺環境に大きな影響を受け、築年数がマイナス要素になりにくいことが特徴です。

 

不動産投資は基本的に長期投資となり、居住用物件では築年数が重要なポイントとなるのに対し、店舗・事務所物件ではあまり問題にならず、周辺環境次第ではかなり長期にわたって安定した利回りが期待できるのです。

居住用物件と店舗・事務所物件では判断材料が異なるため、同じ立地でも「 店舗・事務所物件には適しているが、居住用物件には適していない」といったことも起こり得ます。

このような判断ができれば、より広い対象から投資物件を選ぶことができ、沖縄不動産投資を有利に進めることができるのです。

沖縄の店舗・事務所物件の賃料は?

では、沖縄不動産投資では、店舗・事務所物件も投資対象になり得るのでしょうか。

それを知るために、まずは沖縄における、居住用物件と店舗・事務所物件の賃料の差を見てみましょう。

おきぎん経済研究所が2019年6月に公表したレポートによると、沖縄における居住用物件と店舗・事務所物件の賃料(坪単価)は以下のようになっています。

(単位:円)

居住用物件 店舗・事務所物件
1R~1LDK 2K~2LDK 3K~3LDK
中古物件 3500~8500 3200~5100 3100~5000 6300
新築物件 4000~9600 3900~6200 3800~6300

※居住用物件は、1R~1LDKの居住用物件を5.3~12.8坪、2K~2LDKの居住用物件を11.1~17.8坪、3K~3LDKの居住用物件を13.7~22.4坪とし、新築物件と中古物件の県内平均賃料から平均坪単価を算出。

※居住用物件、店舗・事務所物件ともに2018年の平均坪単価。

上記の表から、店舗・事務所物件の賃料の坪単価は6300円となっており、居住用物件の全ての間取りと比較して、おおむね高く推移していることが分かります。

近年の沖縄不動産市場では、単身者向け物件の賃料が高く推移しているため、 1R~1LKDの居住用物件と比較すると、店舗・事務所物件の賃料が低くなっています

しかし、 2K~2LDKあるいは3K~3LDKの居住用物件と比較すると、店舗・事務所物件のほうが高い賃料になるようです。

賃料の推移について

ここで考慮すべきは、店舗・事務所物件の賃料推移です。

すでに述べた通り、基本的に居住用物件では、築年数とともに賃料が下落していきます。

一方、店舗・事務所物件は築年数に左右されにくく、実際の賃料の平均坪単価の推移を見ても、

  • 2014年・・・6300円
  • 2015年・・・6320円
  • 2016年・・・6200円
  • 2017年・・・6300円
  • 2018年・・・6300円

となっており、ほぼ増減が見られません。

もっとも、沖縄の居住用物件では賃料の上昇が続いているため、賃料が伸びていないことは、店舗・事務所物件のデメリットと言えます。しかし、居住用物件の賃料は青天井で上がっていくものではありません。沖縄の居住用物件では、今後もしばらく賃料が上昇すると考えられていますが、いずれ賃料の上昇が止まり、下落傾向に転じた場合、賃料が変わりにくい店舗・事務所物件の優位性が高まってくるでしょう。投資するならどのエリア?ただし、沖縄の店舗・事務所物件に賃料が変わりにくいメリットがあるとはいえ、エリアの選定には慎重になるべきです。店舗・事務所物件の賃料は周辺環境に依存するのですから、物件の周辺が商業的に成長しているエリアでなければ、店舗・事務所物件の入居者獲得に苦労することになりますし、高い水準での安定した賃料収入は期待しづらくなります。そこで、 沖縄の店舗・事務所物件について、エリアごとの坪単価を調べるのが役に立ちます。おきぎん経済研究所の最新(2019年6月)のレポートによれば、沖縄県における店舗・事務所物件のエリアごとの賃料(平均坪単価)は以下のようになっています。

坪単価高低率 平均坪単価(円)
名護市 -30.2% 4397
うるま市 -28.6% 4498
沖縄市および近隣町村 -27.0% 4599
宜野湾市および西原町・中城村 -36.5% 4001
浦添市 -25.4% 4700
那覇新都心 63.5% 10301
那覇市西部 54.0% 9702
那覇市東部 22.2% 7699
那覇市南部 9.5% 6899
豊見城市および東南部 -20.6% 5002
宮古島市 4.8% 6602
石垣市 9.5% 6899

※「坪単価高低率」は、沖縄県の店舗・事務所物件の2018年の平均坪単価にあたる6300円を基準(100%)としたもの。

この表には、沖縄県の店舗・事務所物件の、エリアごとの優劣がはっきりと表れています。

表によれば、 「名護市」 「うるま市」 「沖縄市および近隣町村」 「宜野湾市および西原町・中城村」 「浦添市」、「 豊見城市および東南部」の6エリアの坪単価高低率がマイナス圏にあります。

 

一方、「那覇新都心」、「那覇市西部」、「那覇市東部」、「那覇市南部」、「宮古島市」、「石垣市」の6エリアは坪単価高低率がプラス圏にあります。

特に、 那覇新都心と那覇市西部は、平均よりかなり高い賃料が見込めます

とはいえ、平均坪単価の高さ・低さにだけで投資先を検討すべきではありません。

平均坪単価が低いエリアであっても、物件の取得価格が低いために高い利回りが期待できたり、今後商業的な成長が見込めるエリアであれば、投資対象になり得ます。逆の場合も同様です。

また、店舗・事務所物件への投資に適していると思われるエリアであっても、 居住用物件の期待値の方が高ければ、店舗・事務所物件より居住用物件への投資を優先すべきでしょう。

居住用物件と比べると・・・

まず、居住用物件と店舗・事務所物件の期待値を、エリアごとに比較してみます。

おきぎん経済研究所のレポートから、2018年の各エリアの居住用物件の賃料について、新築・中古別、間取り別に、沖縄県全体の平均坪単価との高低率をまとめると、以下のようになっています。

1R~1LDK 2K~2LDK 3K~3LDK
新築 中古 新築 中古 新築 中古
名護市 -18.5% -17.8% -24.0% -15.3% -28.0% -19.9%
うるま市 -10.4% -9.4% -23.0% -14.8% -15.5% -19.9%
沖縄市および近隣町村 -6.3% -13.4% -11.8% -13.5% -3.2% -16.3%
宜野湾市および西原町・中城村 -3.9% -1.3% -6.4% -1.2% -14.8% -7.1%
浦添市 0.4% 2.7% 6.8% -2.1% 6.0% -2.5%
那覇新都心 14.6% 24.7% 27.4% 34.6% 28.4% 48.8%
那覇市西部 7.3% 0.2% 7.7% 7.9% 22.6% 22.0%
那覇市東部 -0.8% -2.2% 6.0% 0.0% 24.4% 2.2%
那覇市南部 -5.5% 3.8% 7.1% 2.6% 1.2% 2.3%
豊見城市および東南部 -3.5% 0.2% -6.4% -1.1% -1.5% -8.4%
宮古島市 12.4% 4.0% 7.6% 0.5% 7.8% -8.9%
石垣市 13.4% 7.6% 8.4% 1.9% -12.4% 8.0%

エリアごとに、店舗・事務所物件の坪単価高低率と、居住用物件の坪単価高低率を比較してみると、それぞれの優劣が見えてきます。

例えば、名護市では、店舗・事務所物件の平均坪単価高低率は-30.2%であるのに対し、居住用物件の平均坪単価高低率は1R~1LDKの新築では-18.5%、中古では-17.8%、2K~2LDKの新築では-24.0%、中古では-15.3%、3K~3LDKの新築では-28.0%、中古では-19.9%となっています。

この結果によって比較すれば、名護市では店舗・事務所物件よりも、 居住用物件のほうが県全体の平均坪単価に近い賃料収入が期待できるといえます。

 

同様に比較してみると、


【平均坪単価高低率が店舗・事務所物件>居住用物件のエリア】

那覇新都心、那覇市西部、那覇市東部(新築3K~3LDK以外)、那覇市南部、宮古島市(新築1R~1LDK、新築2K~2LDK以外)、石垣市(新築1R~1LDK以外)

【平均坪単価高低率が店舗・事務所物件<居住用物件のエリア】

名護市、うるま市、沖縄市および近隣町村、宜野湾市および西原町・中城村、浦添市、那覇市東部(新築3K~3LDK)、豊見城市および東南部、宮古島市(新築1R~1LDK、新築2K~2LDK)、石垣市(新築1R~1LDK)

となります。

 

このような結果を踏まえておくと、例えば那覇新都心で居住用物件と店舗・事務所物件の両方を検討している場合に、

  • 居住用物件よりも、店舗・事務所物件のほうが坪単価高低率が低いエリアでは、居住用物件のほうが平均坪単価により近い賃料が期待できるため、優先的に検討すべきである
  • 居住用物件よりも、店舗・事務所物件のほうが坪単価高低率が高いエリアでは、店舗・事務所物件のほうが平均坪単価に比べてより高い賃料が期待できるため、優先的に検討すべきである

といった考え方も可能です。

変化率も考慮する

さらに、各エリアの平均坪単価高低率だけではなく、各エリアの平均坪単価の変化率も参考になります。

各エリアの店舗・事務所物件の平均坪単価について、2017年と2018年を比較してみると、以下のようになります。

平均坪単価(円) 変化率
2017年 2018年
名護市 4500 4400 -2.2%
うるま市 5100 4500 -11.8%
沖縄市および近隣町村 6100 4600 -24.6%
宜野湾市および西原町・中城村 5300 4000 -24.5%
浦添市 5300 4700 -11.3%
那覇新都心 9400 10300 9.6%
那覇市西部 8900 9700 9.0%
那覇市東部 6600 7700 16.7%
那覇市南部 6700 6900 3.0%
豊見城市および東南部 5000 5000 0.0%
宮古島市 4700 6600 40.4%
石垣市 7600 6900 -9.2%

この表によれば、2018年の平均坪単価高低率がマイナス圏にある「名護市」、「うるま市」、「沖縄市および近隣町村」、「宜野湾市および西原町・中城村」、「浦添市」、「豊見城市および東南部」のうち、 「豊見城市および東南部」以外の全てのエリアで、平均坪単価が下落しています。

したがって、これらのエリアは商業的な成長に乏しく、店舗・事務所物件の賃料が下落しており、「投資に向いていない可能性が高い」と考えられます。

特に、本稿の冒頭で紹介した日経新聞の記事にある通り、 うるま市は全エリアで唯一商業地の地価上昇率が下落しているため、特に投資不適エリアと言えるでしょう。

 

一方、2018年の平均坪単価高低率がプラス圏にある「那覇新都心」、「那覇市西部」、「那覇市東部」、「那覇市南部」、「宮古島市」、「石垣市」のうち、「石垣市」以外の全てのエリアで平均坪単価が上昇しています。

この結果を少し詳しく見てみると、

  • 石垣市の平均坪単価高低率がプラス圏にあるものの、平均坪単価が下落しており、商業的な成長がやや鈍っていると考えられる
  • 宮古島市は平均坪単価高低率がプラス圏にあり、なおかつ平均坪単価が大幅に上昇しており、商業的な成長率が高いと考えられる
  • 同じ那覇市でも、那覇市東部は新都心・西部・南部に比べて平均坪単価上昇率が高く、商業的な成長率も高いと考えられる

といった分析が可能です。

このように、店舗・事務所物件への投資を検討する際には、平均坪単価高低率だけではなく、平均坪単価の推移も観察し、商業的な成長が持続しているエリアを選ぶことも大切です。

まとめ

本稿で示した様々なデータを総合的に考えていくと、沖縄で店舗・事務所物件に適しているエリア、適さないエリア、適している中でもより優れているエリアを区別できると思います。

また、店舗・事務所物件の坪単価高低率や賃料の推移は、エリアごとの経済成長を知ることができ、居住用物件への投資を考える際にも役立ちます。

なお、本稿では投資先の適・不適の考え方を解説したものであり、実際の判断は最新のデータや開発の計画に基づいて判断すべきです。常に情報収集を心掛け、期待値の高い投資先を選んでいきましょう。

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