沖縄不動産の家賃が落ちないのは本当だった!?相関係数で将来予測した結果

 

沖縄不動産投資の魅力は、沖縄県の人口が長期的に安定していることから、低リスクで収益を得られやすいことにあります。

最近では家賃が上昇を続けていますし、家賃の低下が起きにくいとも言われています。

そうはいっても、今後の家賃はどうなっていくのか、本当に低下しにくいのか、気になっている人もいることでしょう。

そこで本稿では、 相関係数による家賃の推移をシミュレーションし、沖縄不動産の長的な安定性を検証してみました。

 

沖縄県の家賃はあきらかに上昇傾向

 

日本では、すでに人口の減少が始まっており、これに伴う賃貸需要の減少によって、今後の不動産投資環境は悪化していくとされています。

そんな中、今後も長期的に人口が安定して推移する都道府県は、わずかに東京都と沖縄県だけだと言われています。

とりわけ沖縄県は、高い水準で経済成長を続けているおり、今後の経済成長も見込めるため、成熟しきった東京都よりも投資に適しています。

 

さらに、沖縄では家賃が上昇傾向にあります。これは、リゾート開発が盛んになっていること、商業的な発展が大きく進んでいること、不動産投資先として人気が高まっていることなどから、 新築・中古を問わず物件の取得単価が高まっているからです。

また、沖縄では人口増加が続いており、 賃貸物件の供給が足りていないエリアもあります。そのようなエリアでは売り手市場となるため、県全体での家賃上昇をけん引する結果となっています。

 

家賃の推移を、沖縄県と全国平均で比較してみると、以下のようになっています。

1R~1LDK 2DK~2LDK 3DK~3LDK 平均
沖縄県 全国 沖縄県 全国 沖縄県 全国 沖縄県 全国 乖離率
2009 41,962 50,377 50,672 61,345 60,105 71,170 50,417 56,812 -11.26%
2010 42,087 48,712 49,659 58,946 59,918 66,995 48,840 53,897 -9.38%
2011 40,082 51,044 50,668 60,871 58,887 69,477 50,345 56,731 -11.26%
2012 41,924 48,806 51,900 58,831 60,873 66,574 51,194 54,421 -5.93%
2013 40,856 48,339 51,886 59,023 60,456 67,606 51,062 54,401 -6.14%
2014 42,098 48,596 52,289 58,784 61,602 67,495 51,983 54,445 -4.52%
2015 41,921 48,718 51,727 59,102 59,366 66,774 51,006 54,480 -6.38%
2016 41,354 49,274 52,730 58,243 61,435 67,636 51,454 54,569 -5.71%
2017 42,606 49,385 53,244 58,912 59,546 67,140 51,366 54,561 -5.86%
2018 42,021 50,304 53,027 58,863 62,093 67,051 51,809 54,991 -5.79%
2019 43,173 50,235 54,465 58,639 61,428 67,141 52,265 54,791 -4.61%

 

表とグラフから、全国平均と沖縄平均での家賃の乖離率が、徐々に縮まっていることが分かります。これまで、沖縄では家賃設定が低くなるとされてきましたが、状況は変わりつつあります。

もちろん、物件取得単価も高くなっているため、家賃が上がっているからと言って、利回りもよくなるとは限りません。

しかし、家賃が低いとされてきた沖縄では、人口増加その他の理由から家賃が上昇しているのに対し、全国平均では横ばいを続けています。

全国の不動産市場が苦戦を強いられる状況でありながら、沖縄県内では好調が続いているのです。

 

 

家賃動向で沖縄が有利な理由

相続税対策強い

 

このような変化は、かなり好感を以て捉えることができます。

全国の人口は、今後大きく落ち込んでいきます。これによって賃貸需要は減少し、空室率は高まり、賃料の値下げが起きることは明白です。

しかし、沖縄県の人口は今後しばらく増加を続けます。 これが賃貸需要を生み出し、空室率は増加せず、賃料の値下げも起こりにくい状況が続くでしょう。

 

もちろん、不動産の供給状況によっても変わってくるため、空室率が低い状況が確実に続くとは言い切れません。

とはいえ、空室率とは別の原因、例えば経年などによっても家賃は下落していきます。全国的には、経年と人口減のダブルの影響を受け、家賃の下落に拍車がかかる可能性も高いです。

一方、 沖縄では経年による家賃下落と、人口増による家賃上昇が同時に起こるため、家賃の下落が食い止められる、あるいは家賃の上昇につながるとみることができます。

 

 

相関係数による長期の予測

 

沖縄県では家賃の上昇が続き、全国的には家賃の下落が続くと考えられることについて、もう少し詳しく検討していきたいと思います。

家賃の変動に影響を与える要素は、人口だけではありません。地価や新築物件の増加(新築着工件数)も影響すると考えられますし、経済的な要因も影響しているはずです。

しかし、それぞれの要素が家賃に与える影響は、地域の特性によっても異なるため、全国と沖縄での違いも踏まえて考える必要があります。

 

そこで、沖縄県と全国の双方について、

  • 家賃
  • 人口
  • 地価
  • 新築着工件数
  • 県民・国民雇用者所得
  • 県民・国民所得
  • 県内・国内総生産(経済成長率)
  • 外国人観光客数

などの要素を取り上げ、それぞれの要素がどのような相関性であるかを調べてみました。

なお、外国人観光客数を考慮しているのは、沖縄県の経済成長には観光産業が重要であり、経済成長によって県民所得が上昇すれば、家賃も上昇するのではないかという予測からです。

 

また、県民・国民雇用者所得と、県民・国民所得を分けているのは、 県民・国民所得には企業所得も含まれているためです。

もし、経済が成長していても、資本家階級だけが儲かって一個人レベルであまり恩恵が得られない、つまり県民・国民所得は増加しても県民・国民雇用者所得があまり増加せず、家賃などへの影響も乏しい可能性があります。

そのことを考慮して、あえて別々にデータを取っています。

 

沖縄県の相関係数

以上の要素について、2009~2018年までの収集可能な情報をまとめると、以下の表のようになります。

沖縄県
年間賃料 人口 地価 新築着工件数 県民雇用者所得 県民所得 県内総生産 外国人観光客数
2008 612,504 1,377,934 75,800 12300 1,857,023 2,687,093 3,603,260 237,000
2009 593,544 1,384,812 74,700 11747 1,898,464 2,711,945 3,610,585 246,200
2010 599,100 1,392,818 72,900 10709 1,919,122 2,759,838 3,631,259 282,800
2011 601,284 1,402,260 73,500 11828 1,947,101 2,822,306 3,751,533 301,400
2012 612,192 1,411,329 74,000 12713 1,937,777 2,783,542 3,723,329 382,500
2013 608,520 1,418,731 72,800 16618 2,015,486 2,935,736 3,900,835 627,200
2014 613,476 1,425,618 73,300 15426 2,088,695 2,966,879 3,903,328 986,000
2015 621,960 1,433,566 74,000 16136 2,165,282 3,104,409 4,030,839 1,670,300
2016 623,796 1,439,913 75,800 16201 2,129,100
2017 626,868 1,443,802 79,900 16591 2,692,000
2018 627,240 1,448,101 85,000 16803 2,903,800

 

この表の情報から、それぞれの要素の相関性を見ていきます。

相関性は相関係数によってみるもので、以下のように相関係数rの値によって相関性の強さを知ることができます。

相関係数r 相関性
-1 ≦r≦ -0.7 強い負の相関
-0.7 ≦r≦ -0.4 負の相関
-0.4 ≦r≦ -0.2 弱い負の相関
-0.2 ≦r≦ 0.2 ほぼ相関なし
0.2 ≦r≦ 0.4 弱い正の相関
0.4 ≦r≦ 0.7 正の相関
0.7 ≦r≦ 1 強い正の相関

 

正の相関とは、一方の数値と他方の数値が同じ方向に動く関係であり、負の相関とは、一方の数値と他方の数値が逆の方向に動く関係です。

このような見方で、沖縄不動産の家賃に影響を与える要素がなんであるか、相関係数によってみていきましょう。

年間賃料 人口 地価 新築着工件数 県民雇用者所得 県民所得 県内総生産 外国人観光客数
年間賃料 1.00
人口 0.84 1.00
地価 0.64 0.54 1.00
新築着工件数 0.82 0.89 0.46 1.00
県民雇用者所得 0.66 0.94 -0.43 0.82 1.00
県民所得 0.67 0.94 -0.46 0.85 0.99 1.00
県内総生産 0.69 0.96 -0.45 0.90 0.96 0.99 1.00
外国人観光客数 0.88 0.90 0.79 0.80 0.96 0.94 0.91 1.00

 

この表を見ると、沖縄県の経済には非常に多くの要素が絡んでおり、様々な強い相関が見られます。

気になる点をピックアップしてみると、以下のような特徴があることが分かります。

 

正の相関

沖縄不動産の家賃は、人口、新築着工件数、外国人観光客数に強い相関性があり、地価や県民雇用者所得、県民所得、県内総生産とも正の相関にあります。

  • 人口が増加すれば家賃も上がる。
  • 人口が増えれば賃貸需要は高まり、新築着工件数が増える。新築物件の家賃は高く、平均的な家賃も上昇する。
  • 外国人観光客が増えると、リゾート開発が進んで地価が上がる。地価が上がり、物件取得単価が高くなれば、採算をとるべく家賃を上げる必要がある。
  • 経済成長と個人所得の上昇が連動しており、個人の生活に余裕が出るため、高い家賃の物件に住めるようになる。

 

また、沖縄県内で地価が上昇を続けていることも、相関をひも解くことでよくわかります。

  • 人口が増えると、物件を供給するための新築需要により、地価が高くなる。
  • 新築着工件数が増えると(増えるから)地価が高くなる。
  • 外国人観光客数が増えると、リゾート開発の影響で地価が高くなる。

 

負の相関

気になるのが、地価と県民雇用者所得・県民所得・県内総生産が負の相関にあることです。

負の相関ということは、一方と他方が逆の動きをするということです。

地価が上がるとき、県民雇用者所得・県民所得・県内総生産は下がっていく可能性があるのです。

地価が上がっていくとき、経済もどんどん成長していきそうなものですが、そうとも言い切れません。

 

というのも、地価が高くなりすぎると、開発に伴う土地の取得に多額の費用が掛かるため、経済成長の足かせになる可能性があるのです。

特に、ここでは近年の沖縄の地価の上昇を考慮したデータで相関係数を出していますから、経済にとってマイナスになるほどの上昇であることが分かります。

 

県民雇用者所得・県民所得・県内総生産は、人口や家賃と正の相関にあり、経済成長が鈍化すれば県民の所得も伸びにくくなり、家賃上昇にもマイナスの影響を与えると考えられます。

近年、沖縄では地価の上昇がハイペースで進んでいます。いつまでも続くとは思えませんが、経済的にはマイナスになっている可能性があるため、沖縄不動産投資を進める上では地価の動向に気を配っておく必要がありそうです。

 

全国の相関係数

次に、全国の相関係数から、沖縄との違いを見ていきましょう。

全国
年間賃料 人口 地価 新築着工件数 国民雇用者所得 国民所得 国内総生産 外国人観光客数
2008 673,656 128,083,960 126,900 1093519 265,818,617 386,689,414 510,250,425 8,350,835
2009 653,880 128,031,514 120,200 788410 254,826,746 364,693,594 492,329,144 6,789,658
2010 652,308 128,057,352 113,700 813126 253,868,791 375,608,833 503,983,104 8,611,175
2011 679,896 127,834,233 112,100 834117 254,918,831 380,119,706 514,785,785 6,218,752
2012 645,024 127,592,657 110,700 882797 254,414,286 380,198,567 515,562,466 8,358,105
2013 649,152 127,413,888 106,300 980025 256,226,032 391,847,696 526,694,692 10,363,904
2014 649,332 127,237,150 101,700 892261 260,642,832 392,712,327 522,236,718 13,413,467
2015 651,420 127,094,745 102,600 909299 262,685,974 405,369,082 530,334,864 19,737,409
2016 645,840 126,965,568 109,800 967237 24,039,700
2017 649,692 126,756,698 112,100 964641 28,691,073
2018 651,204 126,533,736 114,100 942370

 

年間賃料 人口 地価 新築着工件数 国民雇用者所得 国民所得 国内総生産 外国人観光客数
年間賃料 1.00
人口 0.51 1.00
地価 0.51 0.50 1.00
新築着工件数 0.10 -0.29 0.21 1.00
国民雇用者所得 0.25 -0.25 0.10 0.76 1.00
国民所得 -0.13 -0.81 -0.62 0.52 0.65 1.00
国内総生産 -0.18 -0.87 -0.75 0.42 0.38 0.93 1.00
外国人観光客数 -0.46 -0.90 -0.36 0.34 0.53 0.86 0.71 1.00

 

上記の表を見ると、沖縄とはずいぶん様子が違うことが分かります。沖縄県内で見られた相関性があまり見られません。気になる点をまとめてみましょう。

 

正の相関

全国データでも、家賃は人口・地価と正の相関となっています。これは、

  • 人口が増加すれば賃貸需要が高まり、家賃が上昇する。
  • 家賃が高くなれば物件取得単価は高くなり、家賃を上げる必要がある。

という、ごく普通のことです。

このほか、人口が増えれば土地の必要性も高まって地価が上昇すること、国民の所得と国内総生産が正の相関にあることも、特に変わったものではありません。

 

相関がみられない

また、新築着工件数と家賃の相関がほぼないことには注目すべきでしょう。

これは、

  • すでに人口減少が始まっており、全国的には賃貸需要が飽和状態にある。そこへ新築物件をさらに供給したところで、家賃は上がらない

という状況が浮き彫りとなっています。

今後、 人口が減少する一方で新築物件の供給が続けば、おそらく家賃と新築着工件数の関係は負の相関に傾いてくるはずです。

 

また、家賃と所得との相関も見られません。

家賃と所得は、一般的には正の相関にあり、所得が上れば家賃も上がるという関係が普通です。

しかし、相関係数によればほぼ相関していないことが分かります。これは、

 

  • 賃貸物件は供給過剰であり、家賃は上向かないため、高い家賃を支払わずとも、よい物件を簡単に見つけられる。
    所得が上がったからといって、高い家賃を払って住む必要はない

ということです。

 

全国の不動産で家賃が上がるためには、人口増加が必要不可欠です。

しかし、すでに人口は減少しており、減少に歯止めがかかる気配もないため、今後全国的には家賃が下落し続ける可能性が高いと言えます。

 

将来的な家賃推移をシミュレーションしてみる

相関係数の素晴らしいところは、強い相関がみられる要素をきっかけとして、将来的な数値の変動を予測できる点にあります。

沖縄県では、人口と家賃に強い相関がみられました。

沖縄県の将来的な人口推計はデータが手に入るため、その推計データをきっかけとして、今後の賃料をシミュレーションすることができるのです。

 

沖縄県のシミュレーション

まず、沖縄県からシミュレーションしてみましょう。

2008~2018年の人口と家賃の強い正の相関を手掛かりに、2020~2045年までの5年刻みの将来人口推計から家賃を推測すると、以下のようになります。

月額賃料 年間賃料 人口 賃料の2008年比増減
2008 51,042 612,504 1,377,934 0%
2009 49,462 593,544 1,384,812 -3.10%
2010 49,925 599,100 1,392,818 -2.19%
2011 50,107 601,284 1,402,260 -1.83%
2012 51,016 612,192 1,411,329 -0.05%
2013 50,710 608,520 1,418,731 -0.65%
2014 51,123 613,476 1,425,618 0.16%
2015 51,830 621,960 1,433,566 1.54%
2016 51,983 623,796 1,439,913 1.84%
2017 52,239 626,868 1,443,802 2.35%
2018 52,270 627,240 1,448,101 2.41%
2020 52,497 629,969 1,459,570 2.85%
2025 52,784 633,411 1,468,236 3.41%
2030 52,838 634,050 1,469,847 3.52%
2035 52,702 632,428 1,465,761 3.25%
2040 52,258 627,091 1,452,321 2.38%
2045 51,463 617,554 1,428,305 0.82%

 

沖縄県の人口は、2030年頃にピークを迎えますが、それまで家賃は上昇を続けます。その後は緩やかに人口が減少していきますが、それに伴って家賃も緩やかに下落していきます。

とはいえ、2045年時点の1戸あたり平均で月額5万円以上、年間62万円弱の賃料収入を期待できるのです。

かなり長期的に、安定した収益が期待できると予想されます。

 

全国のシミュレーション

一方、全国でのシミュレーションは悲惨な結果となっています。以下の表を見てください。

年間賃料 人口 地価 新築着工件数 県民雇用者所得 県民所得 県内総生産 外国人観光客数
年間賃料 1.00
人口 0.84 1.00
地価 0.64 0.54 1.00
新築着工件数 0.82 0.89 0.46 1.00
県民雇用者所得 0.66 0.94 -0.43 0.82 1.00
県民所得 0.67 0.94 -0.46 0.85 0.99 1.00
県内総生産 0.69 0.96 -0.45 0.90 0.96 0.99 1.00
外国人観光客数 0.88 0.90 0.79 0.80 0.96 0.94 0.91 1.00

全国の平均家賃と人口には、強い正の相関はみられないものの、ごく普通に正の相関がみられます。し

たがって、沖縄県のシミュレーションよりもやや劣りますが、おおまかなシミュレーションとしては使えるでしょう。

それによれば、全国では人口が減少していくにつれて、家賃も着実に下がっていくことが分かります。

2045年には、1戸あたり平均で月額3.5万円、年間43万円程度の賃料収入しか得られなくなっており、 沖縄県よりもかなり落ち込むことが分かります。

2008年比では35%以上の下落となっていることからも、今後の危うさがよくわかると思います。

 

まとめ

本稿で書いた内容には、予測にすぎないことも含まれています。

今後、人口の増減が大きく変化することになれば予測は崩れますし、その他の要因によっても異なる結果になる可能性があります。

しかし、人口と家賃の相関性が強い沖縄において、「今後、沖縄では人口の安定が続く」というデータを以て、不動産投資に有利な環境であることは間違いありません。

少なくとも、全国的には人口が減少しており、苦戦を強いられる可能性が高いのです。

資産をうまく運用するために不動産投資に取り組むのですから、難しいエリアに投資するよりも、沖縄に投資したほうが賢明であることは間違いないでしょう。

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